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利用者の分布調査に基づく神奈川工科大学KAIT工房の空間特性に関する研究

B4の山田です。春学期の研究を発表させていただきます。

 

「利用者の分布調査に基づく神奈川工科大学KAIT工房の空間特性に関する研究」

序章

1−1 研究の背景

建築を設計する際に、設計者はその建築がどのように利用されるのか考えなければならない。特に商業施設や美術館、公共施設などでは、利用者の動線や分布というものを意識する必要がある。しかし、実際に設計者の意図通りに建築が利用されるかは分からない。

近年、壁などの仕切りで空間を明確に分節しない平面構成をした建築が多く見られる。代表的な事例として、神奈川工科大学KAIT工房があげられる。この建築内における利用者のアクティビティーは家具や内装、柱の位置などにより大きく影響され、個人が自ら場所を探求することにより確立される。そのような空間の境界があいまいな建築内で、設計者の意図する人々の分布は実現されているのだろうか。

KAIT工房 のコピー

図1 神奈川工科大学KAIT工房

1−2 既往研究との位置付けと本研究の目的

「人の動き分布図を用いた場の記述に関する研究:せんだいメディアテークにおける分布調査」という、空間内で人々の単位時間における移動速度の変化量を調査した研究がある。この研究では人々の動きや滞留から空間と関連付けて記述している。

「テナント型商業空間における人の歩行経路に関する研究:表参道ヒルズにおける追跡調査」は、人の動線を調査し、パターン化することで設計者の意図が成功しているか言及している。

これら二つの既往研究では、利用者の動きに関する調査をすることで、空間がどのように利用されているのか理解するとともに、設計者の意図する内容が実現されているかどうか検証している。本研究においては、神奈川工科大学KAIT工房施設内での利用者の分布を調査する。人々の分布はどの要素に起因するのか、その影響度はどれほどなのかを調査する。また、分布からみられる空間特性や設計コンセプトについて分析する。

 

第2章

2−1 調査対象と石上純也の設計意図

平面図ー用途

図2 用途プラン

神奈川工科大学KAIT工房は約2000㎡の少し正方形が変形したようなひし形のプランである。設計者である石上純也は、この建築が森の中のような空間となることを目指した。様々な要素があってもそれらの境界は柔らかくあいまいで、フレキシビリティが生じるという。空間をつくるわけではなく、広さを持った場所をつくるように柱の位置を調整している。建築家の意志で意図的につくった空間ではあるが、その境界が構造なのか、機能なのか、意匠なのか、その根拠でさえもあいまいになることを期待している。壁はなく、305本の柱で空間は構成され、そこへ家具や植物、道具が介在しても境界の抽象性は壊れないという意図があり、それらの要素も石上純也が計画し配置している。

2−2 調査方法

工房の利用時間は平日が10:30〜20:30、土曜日が10:30〜18:30である。学生の活動をサポートする施設であり、5名の職員が在勤する。30分ごとに工房内の人々の分布を撮影し、平面図にそれぞれをプロットして分布を投影する。空間の全領域をカバーするために360°カメラを使用し、工房中心からの撮影をする。

調査風景 のコピー

図3 調査の様子

 

第3章

3−1 調査結果の分析

調査から得られた人々の分布図をレイヤー化してまとめることで、分布の密度や散在の様子が明らかになる。また、それらが区分できるかどうかで境界の抽象性が伺える。調査日ごとの曜日や利用目的の違いで、その特性にも差異が生まれるのか検証する。

空間を構成する要素として比重の一番大きい柱を、グリッドで分割した領域ごとの本数を調べ、そのデータから柱の面密度を求める。また、同様にして集積した人々の分布図から、人々の面密度も作成する。両者を比較することで、柱と人の関係性を明らかにする。

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図4 利用者の分布−全調査結果の統合図

面密度2

図5 利用者と柱の面密度

 

第4章

4−1 総括

利用者の分布は13時30分を境に、前半は施設内東側の分布が多かったが、後半では西側の分布も増え、次第に均等な分布状況になる。利用者の分布は日照と連動して変化すると考えられる。

三つの作業スペースにはそれぞれ特色があり、単数もしくは少人数の利用、多人数の利用、滞在時間の短い利用の三者三様であることが分かった。

柱の面密度分布図から、利用者を誘導する意図がみられた。エントランスから中央スペースへ、その次にそれぞれの作業スペースへと行動を促す柱の配置が計画されている。また、利用者と柱の面密度分布は基本的に反比例する。

柱の配置により空間を空間として認知させ、家具により用途を定義し、柱の密度や角度と植栽の配置により視線と動線を制御する。これらの操作により、それぞれの空間を全体として一室空間の内に統一させている。したがって、あいまいな空間は実現されている。

上記のように、様々な空間特性を確認するとともに、石上純也の設計コンセプトが実現されていると分かり、人間の選択行動の本質に迫ることができた。

4−2 展望

今回は利用者の分布から調査を進めたが、他にも、動線やアンケート調査の研究をすることで、建築の空間特性の全容により近づける。また、短期間の研究であったため、十分な精度を獲得できていない。同様な一室空間を持つ他の建築を研究することで、人間の選択行動の本質をより深く追求したい。

 

以上になります。閲覧ありがとうございした。

 

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