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東京の都市空間における新旧共存景観の基礎的研究

B4川上です。2019年度春学期に取り組んだ研究内容について発表いたします。

 

序章

1-1.研究背景

新旧景観は世界の様々な国で生まれている。ヨーロッパでは街並みを意識したゾーニングが行われており尚且つ建物自体が長いスパンを保持する歴史的建造物群と再開発群という明快な対比が生まれている。また、中国では都市を一掃して開発することが珍しくなく、大きなエリアの開発群と既存バラックといった対比の風景が現れている。それに対し東京は雑多で奇妙な風景が錯綜するカオスと言われ、距離は関係なく平然と時代・素材・タイプの異なる建物が建ち振る舞うことで他国よりも対比関係が複雑に絡み合った新旧の景色が生まれていると感じる。こうした新旧景観にこそ東京という都市の特徴がより現れているのではないだろうか。

近年ではますます開発が進み、東京ではこれからもたくさんの新旧景観が生まれてくることが予想される。本研究は、学術的な視点から調査が行われていない東京の新旧景観構造の分析であると共に、現在の東京という都市の記録である。

 

1-2.研究の目的

①東京における新旧景観を分析し、言語化を行う。

②対比関係を引き起こす構成要素を明らかにすることで、東京の都市更新方法を探る。

 

1-3.研究の位置付け

ジェインジェイコブズは『アメリカ大都市の死と生』において、都市が発展するための4条件のひとつとして、「新旧の建物の混在」を挙げている。そして4条件は、多様性を確保しイノベーションの苗床機能につながると同時に安全で人間らしい暮らしを保証すると述べているように、都市にとって新旧混在は重要であり、新旧景観は必然的に生み出される副産物であると考えられる。本研究では、この新旧景観を都市構造の現象として捉え、対比の関係性を探ることで都市構造を明らかにしていく研究と位置付ける。

 

1-4.研究の調査対象・方法

ケーススタディとして、東京の新旧の景観をランダムに写真を撮りサンプリングしていき、建設年や部材・モノの振る舞いの観点から要素を抽出しタイプ分けを試みる。

 

第1章 都市の新旧景観

1-1 世界の都市における新旧景観

ヨーロッパは基本的にモントリオールのように、ゾーニングの意識が強い都市を持ち、歴史的建造物群と近年の高層ビル群は決して混在しないことによる美しい新旧の同居の風景が生まれている。また、中国では古くから都市を一掃して全く新しい都市を形成することが珍しくなく、ヨ—ロッパのように街並みを意識したゾーニングによるものではないが、エリアごとという点では共通しており、結果として明確な新旧の対比構造が生まれている。

 

1-2 東京における新旧景観

東京における新旧景観はどうだろうか。街を歩いていると新旧が同居する風景が溢れていることに気付く。ヨーロッパのような景観のゾーニングという考え方はほとんどなく、様々な時代の建物が遠慮なく建っていることで、他国よりも複雑に絡み合った新旧同居の景色が生まれているのではないだろうか。ヨーロッパとは都市の更新方法に大きな差があると推測する。

 

第2章 研究対象サンプル

2-1 サンプル一覧

今回研究の対象として取り上げる15のサンプルの撮影場所と撮影日を示す。

2-2 時代調査

サンプルごとに撮影された建物の建設年の調査を行う。

 

第3章 東京における新旧景観の時代分析

3-1 順序

第2章の時代調査を踏まえ、サンプルの一部に、実際の年代順と視覚的なギャップがあるのではないかと感じ、時代の順序に着目し分析を行った。

まず視覚的な印象と実際の年代をサンプルごとに比較し、それを元にサンプルを分類、第1のラベリングを行った。

神社は日本古来の伝統工法により、歴史は古くとも形態を変えず部材の読み替えを繰り返すことで更新を行ってきたために近代的な建物や現代的な建物よりも古く見えるという新旧の視覚構造を生んでいると考えられる。また、古来の日本様式をモチーフにすることで視覚的新旧の対比を生む場合や建築の中身の更新や老朽化に対する一部の更新によって視覚構造との差異が発生する場合がある。

都市の更新方法には再開発のような平準化による更新だけではなく様々な更新方法があると推測する。

3-2 密度・幅

サンプルごとに時代の混在度の評価を試みる。

時代ごとにグループ分けを行い、写真に含まれる年代の密度と幅を数値化しそれぞれ表にする。

また、その表を元に縦軸を混在数、横軸に建物数をとりグラフ化し、建物数と混在数の関係から時代の多様度を導き時代幅の観点でも分析することで分類・第2ラベリングを試みた。

 

第4章 ラベリング分布分析

これまでに分析を行ったサンプルの撮影位置を地図にプロットしていき、第3章で得たラベリングを元に地域ごとの関係性を探った。それぞれのラベリングが広がりを持っているとわかったが、明確な地域性を導くことはできなかった。

 

結章

5-1 総括

①神社やお寺など木造の多い都市である東京は、新しい建築物を次々と生産しながらも、古い建物は部材やモノを読み替え、置き換えを行うことで形態を保ちながら更新を繰り返し価値あるものを残していく。こうした読み替えによる更新と平準化による更新が入り混じっている都市構造を東京は持っていると考える。

②東京における新旧の同居の風景は、類型化ができる可能性があるとわかった。

③東京という都市はヨーロッパの都市とは違い、多様なラベリングが折り重なり、カオスを形成していると推測できる。

5-2 課題と展望

15のサンプルを元に時代に着目した研究を行ったが、サンプル数を増やし、距離や空間の重なりなどの視点を加えることで、ある地域性が見えるとともに、さらに東京の都市の更新について議論を深めることができるのではないかと考える。

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