You are here: Home // サステナブル・デザイン // 集合住宅におけるSIの調査・研究 -日本とオランダの事例において-

集合住宅におけるSIの調査・研究 -日本とオランダの事例において-

B4久木元です。春学期研究発表の内容を投稿します。

キーワード:サポート スケルトン インフィル オープンビルディング

第1章 序論

1-1 研究の背景

 現在、日本では建築がスクラップアンドビルドによる消費型からストック型への転換が求められており、特に集合住宅においては長寿命化を求められている。ヨーロッパでは、1960年代からオープンビルディングの提唱によってオランダ等で居住者参加型、長寿命化に向けられた集合住宅が進められている。日本ではSI住宅が住宅の長寿命化に対して考えられているものであり、常に変わりうる時の流れやライフスタイルに対応できる手法である。現代の縮小社会に応答できうる建築だと思われる。その原点であり、事例も多く残すオランダの集合住宅も対象に含むことでより深い知識を得られると感じた。

1-2 研究の目的

本研究ではオランダで提唱されたオープンビルディングに基づく集合住宅と日本のSI住宅を設備面、構造面、運営面から研究し、オープンビルディングとSIの使われ方と適応手法を研究する。

1-3 既往研究と位置付け

集合住宅でのリノベーション、海外、日本におけるSIの既往研究はあるが、海外の事例と相対化されたものはない。

1-4 研究の方法

日本のSI事例とヨーロッパ(オランダ)の事例の平面図からスケルトンの形式、インフィルの配置・変更、運営方法などを調査する。

 

第2章 SI・オープンビルディングの形式

2-1 オープンビルディングとは

オープンビルディングとは住空間が街並みを構成する都市空間のレベルを3つに区分し、それぞれのレベルでデザインすることを可能にする原理である。空間の構成要素を街区(ティッシュ)→構造躯体(サポート)→内装・設備(インフィル)と計画主体に応じて区分することにより、各レベル間のコミュニケーションが行いやすくなる。オープンビルディングは「開かれた建築」の意味でもあり、居住者参加型のハウジングや都市計画における空間構成の手法のことである。

画像1

2-2 SIとは

スケルトンインフィル(SI)とは、建物のスケルトン(柱・梁・床等の構造躯体)とインフィル(住戸内の内装・設備等)とを分離した工法のことである。オープンビルディングでは躯体部分をサポートと呼ぶが、日本ではサポートよりがっしりした構造躯体のイメージを出すためにスケルトンという造語を当てはめている。また、日本ではスクラップアンドビルドを避けることを課題としていたことで、住空間をレベルに分けて考えるという考えは薄いように思える。

画像2

2-3  オープンビルディングにおけるティッシュ

 アーバンティッシュ(街区)は、都市計画の領域で、自治体がコミュニティの意向を受けて計画されるもので、都市を形づける道路や公園は、何100年にわたりその構成が保たれる性格のものである。SI住宅ではこのティッシュにおける考えはなく、都市計画までに範囲が広がっていない。

2-4 オープンビルディングにおけるサポート(スケルトン)

サポート(構造躯体)は建築設計の領域で、街並みの構成に従い、また居住者の意見を取り入れて設計されるものである。その構造は100年以上の寿命を必要とする。日本ではスクラップアンドビルドを避けることを課題としていたことで、SI住宅にはティッシュ(街区)に関する考えがあまりないと考えられる。

2-5 オープンビルディングにおけるインフィル

インフィル(内装・設備)は、サポート(構造躯体)の枠の中で、居住者が自由にデザインすることができるものであり、住戸の内装や設備は比較的寿命が短く生活の変化に対応して容易に改修できる必要がある。

2-6 集合住宅の運営方式

従来の集合住宅の建築プロセスとして、ファイナンス・デザイン・法制・生産過程において「その場限り」で建築主、建設会社、工法、資材が事前にわからない、閉じられたプロセスになっているのに対して、オープンビルディングでは・明確なコミュニケーション・生産マネージメントとプロセスの改革・質のマネージメントと改革・市場に即した独創的な使用方法とマネージメントを基本方針としている。

 

第3章 事例の分析・図化

3-1 分析方法

 分析方法として、構造面設備面運営方法ほかの3項目から行う。日本とオランダにおいて、1960年代から2000年代にかけて計画された、オランダのオープンビルディングの思想を取り入れている集合住宅、日本のSI住宅を比較する。

3-2 日本の事例

日本の事例として

・NEXT21(1994~)

・ふれっくすこーと吉田(1999)

・つくば・さくら団地(1985)

・経堂の杜(2000)

・FLEXSUS HOUSE(2000)

3-3 オランダの事例

オランダの事例として

・モーレンフリート(1977)

・ゲスプレテン・ヘンドリック(1996)

・キーエンブルグ(1984)

・ペルグロムホフ(1998)

・フォーブルグ(改修)(1990)

を取り上げる

分析例として2作品を取り上げる

3-2-1 NEXT21 (1994~) 設計‐大阪ガスNEXT21建設委員会

画像3-1                                                                        画像3-3

画像3-4                                                                         画像3-2

・概要、運営方法

・NEXT21は、大阪ガスの実験集合住宅。近未来の都市居住において、環境・エネルギーの研究をするため、社員とその家族が実際に住んで実験する。

「第1フェーズ居住実験」(1994年4月~1999年3月の5年間)、「第3フェーズ居住実験」(2007年4月~2012年3月の5年間)と3回の実験を経て、第4フェーズに入っている。

・インフィル

・水回り配置の自由化

・天井に空調換気設備が組み込まれている

・スケルトン

・主体構造 1~2階鉄骨鉄筋コンクリート造 3~6階PCa+RC複合構法

・梁型の二重天井内への格納

・クラディングシステムの採用

 

3-3-1 モーレンフリート(1977) 事業者:Housing Association of Papendrecht,設計:Frans van der Werf+Werkgroep KOKON

画像5-1                                                                         画像5-2

 

画像5-3                                                                         画像5-4

・概要、運営方法

・SARが開発したサポート理論・手法を適用したオランダにおける実験住宅の第1号の事例。

・コンペ当初は、2800戸(30戸/1ヘクタール)の住宅建設が求められていた。

・実際に完成したのは124住戸(人口約300人)及び事務所4室であり、32戸)/エーカーの密度である。

・所有者は地域住宅協会。

・インフィル

・電気配線、給排水衛生配管 等がインフィルとして扱われる。スラブに共用縦配管のために開口が開けられる。

・一定のルールに基づき住戸内部の改修を入居者によって行われる

・スケルトン

・RC造 4階

・サポートとなるコンクリート躯体は厚さ8インチであり、トンネル型枠工法による。

・壁は15フィート間隔で均等に配置されているので施工効率が高いが、 住戸形態の多様性は損なっていない。

・サポートの位置は、住戸設計の多様性や模様替えの容易さを確保するように決められた。

3-4 事例の図化

a4 表

第4章 結論と展望

4-1 結論

図面やコンセプトを分析していくと、SI住宅はオープンビルディングのサポート・インフィル・ティッシュのうちのサポート(スケルトン)・インフィルのみを取り出して考えられているので、街区に対しての考えは薄いように思える。また、日本の最近のSIでは柱梁構造にすることで外壁も変更の対象としている。また、SI住宅では実験的に内装の変更が行われているが、オランダでは容易に変更がなされている。

現在の日本でオープンビルディングによるSI住宅は十分普及するにいたっていないことは確かであるが、理由として2つあるように感じる。1つはSI住宅の肝であるインフィル生産のマーケットを持たないことと、法制度によるものであり、またこの2点がオランダのオープンビルディングとの主な違いであると感じた。具体的なデザインの問題より、建築を作っていくプロセスの違いから、居住者参加の度合いに変化が表れていると感じた。また、構造は壁式か柱梁構造の違いが見受けられるが、設備に対しては国別での手法に大きな違いは見受けられなかった。

 

4-2 展望

研究を通して主に運営方法に違いを得ることができたが、日本ではヨーロッパとは異なる独自の住宅供給方式が存在するので、より運営方法については研究を重ねるべきだと感じた。また、躯体のみでなくティッシュ(街区) も意思決定の元設計されることで、より居住者参加型の集合住宅のタイプが考えられるのではないかと思った。

また、今回は構法的な観点からオープンビルディング、スケルトンインフィルの基礎研究を行ったが、今後は空間論的な観点から縮小社会に対応しうる建築を考えていくべきだと感じた。

 

 

Copyright © 2017 OKOLAB.net. All rights reserved.