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フェルディナン・バック著「魅惑の庭」のスケッチから読み取る庭の構想に関する研究

1.序章
建築家ルイス・バラガンの作品を見ると、特徴的な庭を含んだ建築が多く見られる。その庭は木、花、水など様々な自然の要素や、壁の色、それらの配置のされ方などあらゆる点が考えつくされており、バラガンの庭への強いこだわりが感じられる。バラガンはなぜここまで庭にこだわったのだろうか。バラガンは自身の庭の作品に画家であり造園家であるフェルディナン・バックのスケッチからの影響を強く受けていると言われており、これが庭へのこだわりが生まれたきっかけではないかと考えられる。そこで本研究ではバック著の「魅惑の庭」に掲載される全36枚のスケッチを深く分析することにより、バック独自の庭の構想を読み取ることを目的とする。
2. フェルディナン・バック(1859-1952)とは
作家、風刺漫画化、アーティスト、社会批評家、造園家など多くの分野に着手している。地中海様式の庭のスケッチも多数作成しており、その庭の構想は構図を練られた小場面の集合として、物語的なランドスケープを生み出している。
3.スケッチの分析
バックの「魅惑の庭」に含まれるスケッチを見ると、すべて4から5枚の層によって構成されていることがわかる。よって、36枚のスケッチすべてを何枚かの層に分解し、それを元に構成要素、陰影、色彩、図法と各分野ごとに分析し考察する。
3-1.構成要素
構成要素の数をすべてのスケッチから数え、合計を出す。ほぼすべてのスケッチに建築物、植裁が描かれ、また植栽は蔦のようなものが多く描かれていることがわかった。また階段や石畳、池、噴水なども多く見られる。さらにこれらの構成要素をレイヤーごとに見ると、レイヤー1に石畳、レイヤー2に階段、レイヤー3に建築物、レイヤー4に植栽が最も多く配置されていることがわかった。また、噴水、池、川などの水の要素はほとんどがレイヤー1,2に置かれ、手前に見せる傾向がある。

3-2.図法
バックのスケッチがどういった図法で構成されているか調査。スケッチはすべて一点透視図法か二点透視図法で構成され、一点透視図法は全体の約2/3を占めていることがわかった。また、アーチで風景を切りとるようなスケッチでは、アーチの内部に一点透視図の消失点が置かれ、奥行きを持たせているという傾向がみられる。
3-3.明暗
バックのスケッチでは光と影が明確に表されており、ここでは原画を白黒に変換し光の当たる箇所を調査する。
光はレイヤー3に光が当たっているものが最も多く見られた。これは、より強調したい構成要素に光を当てていると推測される。
3-4.色彩
スケッチに使われる暖色と寒色の割合を調査。バックのスケッチでは暖色と寒色が一枚に混合して使用されているというよりは、暖色または寒色のみが一枚に使用されているものが多く見られる。主に暖色で構成されたスケッチが21枚、寒色で構成されたスケッチが15枚となった。また、植栽には橙や赤色が意識的に使用されているものが多く見られた。
4.まとめ
本研究から、フェルディナン・バックのスケッチは構成要素、色彩、陰影と様々な要素から構成され、またそれらにはいくつかのパターンが見られることがわかった。そしてすべてのスケッチは複数のレイヤーによる構成が軸となっていると言えるだろう。
一方バラガンの作品では初期の庭園にバックのスケッチと似た構成要素が配置されていたり、また庭の様相が変化した構成にわたってもバックのスケッチに見られるようなレイヤーによる構成がなされていると考える。そこで本研究の結果から、バラガンの庭とバックのスケッチの相互関係を分析し、バラガンの庭の構想を解明するという研究にも展開できることを展望する。

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