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建築空間における柱の機能と意味 篠原一男の住宅作品を対象として

B4の五味です。春期の研究内容を発表させていただきます。

キーワード:篠原一男 柱 機能 意味

序章

11研究の動機と背景

 近年の建築技術の発展に伴い、建築の空間や部材の表現は飛躍的に増加している。柱を例とすると、本来は構造材として用いられていたが、今日では装飾としてや構造材とは感じさせない表現など多岐にわたる。戦後以降の住宅作品において、柱を空間の要として設計を行った建築家として篠原一男が挙げられる。篠原の建築は4つの様式に分類され、それに伴って柱の形状が変化することが知られている。篠原は生前に多くの空間言説を発表し、様式の既往研究も広く行われている。一方で柱の形状や配置による「間」の作り方や、柱に込められた意味の研究は行われていない。篠原の柱を研究することは、現代の多様化する柱空間を改めて考察する上で大きな意味を持つと考えられる。

12研究の目的

 本研究では前述した4つの様式に沿ってではなく、柱に注目しながら分類化と分析を行う。以下に主な3つの目的を挙げる。

1) 柱の配置や形状、構造によって形成される空間領域の考察。                                     2) 柱に暗示された意味性・言説の考察。                                               3) 上記の2つをもとに柱の様式の再定義を行う。

13研究の位置づけ

 篠原は住宅論などの建築理論を多数発表していることから、理論や言説、構造の研究が多方面から行われている。しかし柱に焦点を絞ったものは見られず、本研究では柱独自の様式の解明を研究の位置付けとする

14研究の調査対象・方法

・対象とする柱の定義を決め、図面や写真をもとに一覧表を作成する。                                 ・一覧表より時期による形状の特徴や、柱の分類を行う。                                      ・配置関係による領域構成の考察を行う。                                                ・「住宅論」や作品集から時期による思想の変遷や各建築の設計コンセプトを調査し、柱に暗示された意味を考察する。

第2章

21 4つの様式の概要

 篠原の建築作品は「住宅論」「続住宅論」などの論文などから4つの時代様式に区分されている。建築の意匠は勿論だが、柱にも様式との連動が見られる部分が存在する。そこで柱の分析を進めるうえで篠原の時代ごとの様式の概要を以下に挙げる。

1の様式:19541969年 日本建築の伝統との対応のなかで創作を行った時期。

JA00017293_91067_web[1]白の家

2の様式:19701974年 空間の「亀裂」をテーマにコンクリートによるキューブの構成を用いた時期。

a492875f[1]篠原_成城[1]

3の様式:19751983年 二等辺三角形などの幾何学形態を用いた時期。

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4の様式:19842006年 都市におけるカオスに美を見いだし、多様な形態を組み合わせた時期。

038ハウスインヨコハマ040テンメイ ハウス

22 柱の定義

 研究対象として扱う柱は領域性などを考慮することから視認できるものとし、構造を担保するものとする

第3

31 柱の形状・配置による領域の分類化と分析

 柱は形状や配置のしかたによって空間領域の構成に大きな関係性をもつ。そこで篠原作品の柱による領域構成の特徴を分析した。分析の結果として以下の4つの領域構成が見られた。

領域 ダイアグラム2

32 柱の構造的機能による分類化と分析

 篠原作品における柱は構造的な観点でも様々な使い分けがなされている。柱が屋根の架構を直接支える場合や、から傘の家のように間接的に支える場合、大屋根の家の意図的にずらす場合などがある。そこで本章では柱の平面や架構(屋根)との関連性を分析する。

 平面と架構の関係性の分析結果として期間による傾向が見られた。1つ目は久我山の家から狛江の家にかけて平面=柱の傾向が見られる。2つ目は直角3角柱から高圧線下の住宅にかけて平面=柱=架構の傾向が見られた。

33 柱の意味(言説)の分類化と分析

 篠原は柱に関する言説をいくつか残している。「新建築」や「篠原一男 住宅図面」から柱に関する言説や解説を抽出し、柱の意味を分析する。

 分析の結果としていくつかの傾向が見て取れた。1つ目は初期の久我山の家から狛江の家にかけて室内に独立柱を配置しないという傾向が見られた。2つ目は大屋根の家や白の家など、日本建築の象徴として丸太を用いている傾向がある。これは第1の様式の思想がそのまま反映されていることがうかがえる。3つ目は直角3角柱から花山第3の住宅に見られる幾何学形態を用いる傾向だ。これもまた第3の様式の思想が反映されている。また第34の様式は篠原が「都市」に関心が移行する時期である。花山第3の住宅では柱に都市の造形を暗示する言説があり、柱に意図が反映されている。4つ目は高圧線下の住宅に見られる色彩の使用である。形状はI型に落ち着くものの、色彩によって空間にメリハリを持たせる新しい試みが行われている。

結章

41 結論

 11つの建築における柱の表現は、図面から構造と大きく関係することが読み取れるが、一方で柱の露出や被覆など見え方を意識した工夫も見てとれる。柱の様々な視点からの分析を横断的に見ると、従来の4期に分類された様式とは異なった、6つの様式に分類されることがわかった。

・「囲み型の様式」   久我山の家から茅ケ崎の家までの期間である。この期間は柱を外周部に配置し、空間を囲む空間構成がとられている。

 ・「分割型の様式」   から傘の家から山城さんの家までの期間である。この期間は「日本建築の象徴性」を丸太柱に暗示させるという傾向が見られた。また柱によって空間を分割する傾向も見られた。

 ・「無柱の様式」       鈴庄さんの家から成城の住宅までの期間である。継続的に柱を用いなかった時期で、意図的に無柱空間を表現していたと考えられる。

 ・「求心型の様式」   直角3角柱から花山第4の住宅までの期間である。この期間は幾何学形態の柱を室中央に配置し、形態の強烈な象徴性によって空間に求心性を与えている。

 ・「色彩の様式」       高圧線下の住宅からハウスインヨコハマまでの期間である。この期間は他の期間には見られない様々な色彩を帯びる傾向が見られた。

 ・「金属柱の様式」     ハネギコンプレックスからテンメイハウスまでの期間である。この期間は他の時期には見られないH型鋼をそのまま柱として用い、金属という素材への興味が示されている。

結論3

4-2 展望

 本論文では篠原一男の柱分析を行ってきた。柱の表現はこれまで様々な建築家が行い、これからも多様な表現が増えるだろう。この研究をもとに、今回対象とならなかった建築家の柱の分析へとつなげていくことを展望としたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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