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都心の市街地再開発地区におけるペリフェリィの調査研究

0.序 

0.1 研究の背景と目的

 現在、東京の都心では市街地再開発(以下、再開発)が頻繁に行われ、2011年から2014年までにも約80もの再開発プロジェクトが予定されている。その中でもヒューマンスケールをはるかに超越した高層棟が周囲の景観に与える影響の大きさは明白であるが、一方既存の街との接線である再開発地区の周縁部分(以下、ペリフェリィ)においても、既存の街並みとの不調和や不整合が問題として指摘されている。再開発のペリフェリィにおいて、既存の街並みと調和して賑わう場所がある一方(図1)、再開発により発生した敷地の高低差の悪影響を受けている既存の周辺住宅などもみられる(図2)。こうした再開発地区と周辺の既存市街地との不調和を解決するための糸口として、現状を正確に把握して記述することや、異なる地区を相互に比較したり、評価するための分析手法の確立が必要である。

 本研究ではこうした問題意識に立脚し、広範な現状調査をもとに、再開発地区のペリフェリィの現状の可視化を試みる。さらに、適切な分析方法を考案し、これに従って問題点や成功しているポイントをわかりやすく整理し、最終的にはそれらの評価を試みることを目的とする。

0.2 研究の対象と用語の定義

 本研究では、東京都23区内の都心部における11ヶ所の市街地再開発地区のペリフェリィを対象とする。 

市街地再開発エリアとその周辺の調和・不調和を問題とするとき、再開発エリア内部の計画のみを観察することでは物足りない。そこで、市街地再開発地区における敷地の周縁部分において、敷地内のみならず敷地内外の環境のまとまりを同時に把握する概念を「ペリフェリィ」と名付けた(図3)。

0.3 既往研究および本研究の位置づけ

 本研究は、大きくは都市のエッジを扱った研究として位置づけられる。都市や街のエッジを研究したもので、土岐文乃らの研究「郊外ショッピングセンターにおける駐車場の構成と周辺環境」では、郊外型ショッピングセンターの駐車場について、周辺環境の要素を分類、記号化、パタン分けすることで、その構成や駐車場の周辺環境についての特徴を見出している。また、磯真之介の「街路沿いのオープンスペースに関する形態学的研究」、大川友規の「街路沿いのオープンスペースに関する研究」では、『オープンスペース』の平面形状や断面形状を分類し、その規模や分布をまとめている。これらの都市のエッジや境界部分を扱う研究の一部として、本研究は再開発地区のペリフェリィに焦点を当て、それらを構成する要素を分析することで、新たな視点から都市環境を考察するものである。

0.4 研究の方法

 本研究では対象敷地に見られる全てのペリフェリィのパターンを記録することにより、空間構成の考察を見いだすこととする。現地フィールドワークにより作成したデータと敷地の図面を用いて分析する。 

 対象となる再開発地区の境界線上から、対象敷地の内外が同時に写るようにカメラで撮影する。撮影した画像をもとにペリフェリィの物理的構造を模式化し、配置図と対応した一覧を作成する。ここで作成した一覧から、対象敷地のもつペリフェリィのパターンの数や、敷地外の環境との呼応の仕方などを考察する。

1. 現地調査

1.1調査概要

1 ) 調査地区の選定

 周辺環境や規模、竣工年代にばらつきを持たせ、よりバリエーションに富んだペリフェリィのパターンを抽出できる様に11敷地を選定した。比較的敷地面積が小さく超高層建築一棟からなる再開発区域には住宅棟であるアトラスタワー六本木他、比較的敷地面積が大きく敷地内に複数棟を有する大規模再開発区域には、複合用途である六本木ヒルズ他を選定した。(表1)

2 ) 基本分析図の作成

 対象地区と既存周辺地区との関係を平面的に考察することを目的とする。現地調査のデータや地図、航空写真を元に、敷地境界線から一定の範囲において、その面に存在するペリフェリィの用途を地図上に色分けして記入する。ここでの用途は、車道、歩道、緑地、建物とする。対象とする範囲は、敷地境界線から敷地内、敷地外に10mという任意の値を設定した(図4)。

3 ) ペリフェリィの断面ダイアグラムの作成

 ある地点における対象地区と既存周辺地区との接続を断面的に考察することを目的とする。現地調査においてペリフェリィの構成要素に変化がみられる地点を写真撮影し、各地点でのダイアグラムを作成する。(図5)基本分析図上に写真の撮影地点を記入し、断面模式図の番号と対応させる。

2.ペリフェリィの分類

2.1 分類の目的

 調査事例にみられた地形や用途、植栽などの景観要素を抽出し、図式化する(図6)。この図を用いることで、局所および敷地全体のペリフェリィの構成が記号により明確に表現されるようになる。

2.2 分類

 図6を元にしたペリフェリィの断面ダイアグラムの分類を図7に示す。図6は歩道、緑地などのペリフェリィの用途と、別の用途へ変化する地点の境界線上に現れる要素を組み合わせ、境界線から次の境界線までに見られる要素を記号化したものである。

3.ペリフェリィ・デザインの評価

 ミクロ(局所)とマクロ(敷地全体)、この二つの視点により評価を行う。

3.1 マクロな評価

 ここでは基本分析図を元に、マクロな視点での敷地全体にわたるペリフェリィのデザインについて評価を行う。敷地全体を通したデザインの一貫性や既存周辺地区の用途との呼応の仕方などが評価基準である。

3.1.1 事例ごとの評価

1 )ゲートシティ大崎

 図4からは、敷地内の用途に関わらず、敷地境界線に沿って植栽の帯が全体に廻っている事が分かる。敷地全体をみるとペリフェリィの計画のれ方は地点毎に違うが、この緑の帯が敷地境界線にあることによって、全体が一つにまとめられているような印象を受ける。

2 )恵比寿ガーデンプレイス

 この再開発は商業施設、娯楽施設、住宅、オフィスなどからなっており、それぞれのエリアによってペリフェリィの作られ方が全く違う。周辺が住宅街である側は、住宅街に沿うように公園や幅の広い緑地が設けられており、大通り側は広場が多く設けられている事から周辺の街に対する配慮が読み取れる。

 3.1のまとめとして、基本分析図を元に①再開発地区と隣地との接続の仕方、②再開発地区内の構成要素の分布の仕方を分類した。①の内訳は1:完全分離型、2:部分接続型、3:接続要素介入型である。また、②再開発地区内の構成要素の分布の仕方の内訳は、1:統一型、2:モザイク型、3:分節型である。図8に分類のアイコンと凡例、本調査で見られた事例数を示す。

3.2 ミクロな評価

 ここでは基本分析図上に細かな要素を加えた詳細分析図を作成し(図9)断面ダイアグラムと併せて面的、線的に広がるペリフェリィの一断面を取り出し評価する。

1 )既存周辺地区への好ましい配慮

 本論ではペリフェリィの計画が既存周辺地区に呼応計しているものや、その土地に新しい価値を与える事ができる計画を好ましいものとしている。六本木ヒルズの一地点ではあえてタイルの色のみで敷地境界を示し、駅前広場を狭めないような配慮がみられる(図10)。

2 ) 既存周辺地区への配慮の欠如

 再開発が行われたことにより、既存の周辺環境が悪化している地点を挙げる。赤坂サカスでは敷地内の景観を重視した地盤調整により、敷地境界線に沿って建つ既存の住宅の前に高い壁が出来てしまっていた(図11)。壁面に植樹をしてはいるが、既存周辺環境や住民に配慮してるとは言い難い。これらの既存周辺地区への配慮の欠如は再開発計画自体の評価を下げる重大な問題と言える。

4. 景観調停を行う特殊な要素

調査事例に見られた、好ましいペリフェリィの計画をする上で効果的である要素を抽出し、それらが持つ役割毎にまとめた。
1)コネクタ(接続)要素・ブリッジ
 六本木ヒルズは敷地が一部公道をまたいでおり、人工地盤となったブリッジが2つの街区を繋いでいる(図12)。さらにその人工地盤を一般車道、施設利用者専用歩車道、歩行者専用広場という用途にわけることで、交通の整理も行っていた。規模の大きな再開発をする
上で、人の動きの操作や賑わいの創出に有効な手法である。
2)カラーリング(彩り)要素
 ・アート作品
 代官山アドレス他の事例において、ペリフェリィにアート作品を効果的に配置しているものがみられた(図13)。広場や緑地の間に突如現れる作品は、それ自体には用途はないものの、単調な風景や裏通りの淋しい雰囲気を解消する事に一役かっており、ペリフェリィのデザインへの配慮を感じる事ができた。 

5 総括

 本研究の成果は以下のとおりである。

1.基本分析図・断面ダイアグラムを作成しペリフェリィの構成要素を図式化することで、再開発地区におけるペリフェリィの現状を可視化した。

2.ペリフェリィの構成を用途の分布や周辺環境の違いごとに分類することで、ペリフェリィはいくつかのパターンに分けることができ、それらの組み合わせで構成されていることを明らかにした。

3.ペリフェリィを地点ごとに観察することで、既存周辺地区への配慮の有無を見つけ、今後の計画の際に有効であると思われる要素を抽出してまとめた。

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