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間伐材ブロックを用いた住空間の間仕切り壁の設計

B4の柏木です。前期研究について投稿します。

 

1.1研究の背景
技術の進歩と共に建築の分野で用いられる材料は多様化してきた。環境問題が叫ばれる現代において自然資源の利用は重要だが、木材に関して目を向けてみると安価に入手できる輸入材が市場の多くを占めており、国産材の流通は減り日本の林業は衰退している。人工林において間伐は樹木の育成や土砂災害防止のために必要不可欠な作業であるが間伐材の値段に対して間伐にかかる費用が大きいため間伐をすると赤字になることから間伐を行わず放置された人工林が増え、日本の森林の荒廃が問題となっている。さらに従事者の高齢化・減少により過疎化される山村も増えてきている。しかし、日本の人工林は高度経済成長期におきた造林ブーム時に植えた人工林の伐採期を迎えており、平成22年には「公共建築物等における木材利用促進法」が施行され、平成20年に施行された「間伐等特措法」は今年平成25年5月に一部が改正され以前よりも強化されるなど国産木材の消費拡大に向けた動きが多くみられる。

1.2研究の目的
間伐材を用いた建築の事例について調べ、間伐材がどのように用いられているのか調査・分析する。
最終的に間伐材を用いた設計提案をコンペに出す。
間伐材の建材への利用可能性を示す。

1.3研究の対象と方法
間伐材が用いられている建築事例を探し、使われ方や工法、空間的な特性などを考察し、比較・分析して傾向や共通点をまとめる。
最終的に分析結果から導き出された傾向や分類する。

2.2間伐材について
現在、間伐材の建築分野での利用は集成材や構造用合板、パーティクルボードとしての利用が多く主に家具や内装材としての利用が多い。
しかし,最近では間伐材を構造部材として利用する取り組みも考えられるようになった。

2.3間伐材を用いた建築事例
2.3.3唐津・積み木の家
スギ小径木間伐材の集成材を垂直方向に積んでいく工法。バラバラに配置した壁が全方向の水平力を負担できる壁構造になっている。

2.3.4挟み梁工法
工務店宮内建築4代目棟梁の宮内寿和が考えた工法で4寸角の柱を4寸角の梁2本で挟み込むという工法。多くの木造建築と違い壁量計算ではなく限界耐力計算で建築確認を行っているため全面に窓を入れることも可能な工法。

2.3.5くうかん実験棟
スギの間伐材を小ブロック化し生み上げていく工法。狭小地への搬入や施工を容易にしている。

2.3.6ECOサイトハウス
小径木の間伐材を構造利用したシステム工法による木造仮設建築で75㎜角の柱と75×37.5㎜の梁で構成されている。1200mm毎に柱を設ける多柱空間になる。

2.3.7工学院大学弓道場・ボクシング場
小径木の間伐材を用いて7.2×10.8mの無柱空間を小断面部材で架構した2種類の手法。弓道場は12×50㎜と24×50㎜の貫を36㎜角の束で十字型に挟み込んだ格子フレームで、ボクシング場は120㎜角の柱材をずらしながら積み上げた天秤フレームで同時期に同じ規格の空間を2種類の手法で実現した。

2.3.8茂木町立茂木中学校
地元町有林の間伐材を大量に使用した大規模木造校舎。鉄筋コンクリート構造の上に木造架構を採用した混構造となっていて通し柱に最大12mの丸太と井桁組による架構を組み合わせた工法を用いている。

2.4まとめ
以上の事例を比較すると、小径木の間伐材を構造用部材として利用する場合の共通点は水平部材の使い方が従来の工法とは別の工法を用いていることがわかる。水平部材の使い方は大きく分けて2種類あり水平部材を積み上げていくものと水平部材で垂直部材を挟んでいるものに分けられる。水平部材を積み上げていく手法はさらに縦方向、横方向交互に積み重ねるものと平行に積み上げていくものの2種類に分けられる。前者は大空間を形成するうえで有効であるが長い部材が必要とし、後者は施工しやすく短い部材からでも空間を形成できるが大空間を形成する場合には不向きである。水平部材に小径木を用いたものに共通しているのは部材数を多く用いて集積させる傾向にあるが間伐材消費量を増やすことができる点では有効である。

3.設計提案
3.1設計方針
「住空間ecoデザインコンペティション2013」に提出することにより暮らしの在り方にテーマを絞った提案にする。
具体的には月日の経過による家族構成、世帯構成の変化に対応する仕組みとして住居の間取りを自由に変更できる仕掛けとして小径木の間伐材から量産した無垢の木製ブロックを積み立てて居住者のセルフビルドが可能な間仕切り壁を提案する。

3.2木製ブロックについて
基本的に600㎜+接合部50㎜の材でできたブロックで壁を組み立てていくが150㎜と300㎜の材も用いることにより150㎜単位で間取りの調節・変更をすることができるようにする。

斜視図

3.3構成
一般的なコンクリート構造の片側居室のマンションを想定する。コンクリート構造でできた大空間に水廻りを隅に寄せたワンルーム型の住居を設定し居住者がライフスタイルに合わせた間仕切り壁をセルフビルドできる仕組みにする。

構成図

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4.結論・展望
小径木間伐材は内装や集成材加工しての利用が主流だが構造体に用いた事例はかなり少なく発展途上であるが、本研究において少ないながらも取り上げた事例において水平部材の扱い方に着目し、その傾向から工法を分類しできたことは大きな収穫であった。水平部材を積み上げる工法と垂直部材を挟む工法事例が増え、さらに体系化できるようになれば小径木間伐材を構造利用できることが一般化することが展望として挙げられる。また、工法だけではなく国産材の地産池消の流通システムについても言及している事例も多く国産材消費という根本的な目的を達成するためには小径木から構造体を生成する手法や開発に意味がある。
設計提案に関しては、施工のしやすさと小部材の結合についてのスタディが主だったため構造的な実証や実現可能性についての検証ができていないため多くの課題が残った。

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