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東京の高密度居住地に関する研究-フットプリントと分布による分析-

B4浜本です。春期研究発表の内容を投稿致します。

1.序章

1-1.研究の背景・目的

世界中には様々な高密度都市が存在している。都市において人間は一つの要素であり、大なり小なり都市の固有性を生み出す存在である。そこで人がより高密度で居住する空間は、よりその性質が色濃く表れ、その都市の形態や空間構成に強い影響を与えているものだと考えた。また、都市圏における人口の集中は続くものだと考えられ、その中で今後来たるべき社会状況を考慮し、コンパクトシティを考える必要があるのではないか。これらの背景を踏まえ、東京における高密度居住を数値により類型し、現況を記述し、その方法論を定位することを本研究の目的とする。

1-2.研究の対象

総務省統計局が提供する平成22年度国勢調査―世界測地系250mメッシュデータから求められた東京における人口の集中している場所、具体的には500人/ha以上の人口密度を有する地域を対象とする。また、その対象地域を1辺200m四方の正方形でトリミングし、その対象に対して地図的な情報と人口密度や建築の面積などの数的な情報を元に研究を進めていく。

表1-1 対象地域一覧

ID 地域名 人口密度(人/ha)
A1 中央区勝どき6丁目 976.5
A2 港区芝浦4丁目2 641.5
A3 江東区東雲1丁目 629.8
A4 江東区大島6丁目 624.5
A5 品川区南大井3丁目 562.3
A6 江東区豊洲4丁目北 551.4
A7 江東区豊洲4丁目 543.4
A8 中央区佃2丁目北 540.8
A9 江東区大島8丁目 511.1
A10 江東区北砂5丁目 508.7
A11 港区港南3丁目 507.3

 

2.海外における高密度居住

2-1.海外における高密度居住の概要

東京における高密度居住の固有性を記述するため海外における高密度居住地と比較を行う。この中でも先進国であり超高層などが多く存在しているアメリカ合衆国のニューヨークは東京との類似点が多い。

2-2.東京における高密度居住の概要

ニューヨーク州のマンハッタンを例にあげ東京と比較すると東京の高密度居住地域は分散して配置している事がわかる。今回の対象地域の配置は東京湾沿いと江東区の河川の周辺に多くあることが確認でき、東京における高密度居住地の配置の傾向がある程度、把握することができる。

配置

図2-1 研究対象の地点

 

3.東京における高密度居住

3-1.分析方法

選定した各地域に対して空隙率と総建築面積を総建築数で割った値である総建築面積の平均(以下、平均面積)を算出し、空隙率をx軸、平均面積をy軸に設定した分布図を作成し、その分布により対象地域の類型化を行い、考察を行う。また、類型されたものごとにトリミングされた形態的な地図の情報も付加して考察を行う。

3-2.空隙と総建築面積の平均による分析

A4・A7・A8・A11は中規模の建築が集合してできた居住地であり、戸建て住宅はほとんど確認することができない。A5・A9・A10は中規模な集合住宅と小規模な集合住宅や戸建て住宅が混在していることが確認できる。A1・A2・A3は図2においても同様の位置に分布していないが、どれも大規模な建築により構成されておりそれ以外の小・中規模な建築は確認できないということ、また他の対象地よりも人口密度が高い地域であるという共通点がある。A6は、どの分布からも少し離れた位置にあったが、中規模な建築の集合により形成されており形態的には1番目のA4・A7・A8・A11のグループと近い性質が確認できる。最初のグループを中規模型、次のグループを混在型、最後のグループを大規模型と定義する。

 

日本建築学会大会(東北)学術講演会

 

図3-1 分布図

3-3.考察

中規模型は団地のようなものから最近の中層のマンションまでが存在しており、比較的築年数にはばらつきがあった。また、対象地域の場所も共通点は見受けられなかった。混在型では、今回類型化した3種類のなかでも小さいフットプリントを持つ建築の大小は地域による差が見られた。どの箇所も土地更新など異なる年代の建築の積層により生まれた東京らしい風景だということができる。また、図4は混在型においてx軸に建築面積、y軸に建築の個数を設定した建築の分布図である。この分布図からもわかるように若干の違いが現れる。大規模型は、おもに東京湾に面しており比較的土地の歴史も浅かった。また、大規模建築は計画的に設計されており高密度でありながらも高層や超高層などの新しい都市居住の理想像を体現したような様相が多く比較的大きな床面積を確保しているものであると考えられる。小論トリミングまとめ

図3-2 対象地域のトリミング一覧

 

4.結章

4-1.総括

この空隙率と平均面積による類型化によって、東京における高密度居住の建築物の大小関係とその分布の様子をある程度把握することができるのではないかと考えることができる。また、その異なる類型ごとに異なる成立過程が存在していると考えられる。

4-2.展望と課題

本研究では現在の東京における高密度居住の現状を数的情報から形態的に分類することができた。しかし、前述した類型ごとに異なる生活サイクルや形成過程があると考えることができ、時間的な推移や生活様式を調査することでより細やかに高密居住を解明することができると考えられる。また、今回は超高層などの床面積の大小は考慮せず純粋な2次元的な平面での人口密度により比較を行ったが、床面積や居住領域の面積を考慮することで今回の研究では対象から除かれた地域でも成立している高密度居住を考えることもできると考える。

 

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