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東京都大田区におけるコミュニティー創出型 次世代集合工場の設計手法に関する研究

M2の丸山です。夏合宿までの研究の報告を投稿します。

0.はじめに

0-1 研究の背景と目的

東京都大田区は従業員9人以下の企業(町工場)が約82%を占める”中小零細企業の町”として知られているが、不況などの影響を受けて9千あった工場数が6千に減少し、衰退の一途を辿っている。それに対し大田区は集合化をはじめとする様々な産業支援の取り組みを行っているが、発展途上であり、特に建築空間の提案としては未 成熟の段階にある。  そのような産業支援の取り組みの一環としてコーポラティブファクトリー(コミュニティー創出型工場集合化)事業というものが挙げられる。これはコーポラティブ方式で小規模集合工場を創ることを目指しており、従来の長屋型の町工場のを新しい形で集合させ次世代の工場集積を維持・発展するための方法として注目されている。(現在は登録企業を募り、様々な可能性を調査・検討段階に ある。)  本研究ではこのようなコミュニティ創出型の次世代集合工場(コーポラティブファクトリー)のモデルの提案を目指す。特に、住工が近接していることなどから生じる大田区が抱える様々な問題を明確化し調停しつつ、環境などにも配慮した統合的で持続可能なモデルの提案を 目指す。

0-2 研究の方法及び調査対象

第一章では集合型工場の基礎研究として国内の事例を取り上げ、資料収集やヒアリングなどを通して調査・分析し、記述する(調査1-1工場の集合化に関する事例:1章に対応)。さらに対象敷地である大田区においては、工場の集合化に関する事例に加えてその他の産業支援に関する事例を資料収集やヒアリングなどを通じ調査・分析し、記述する(調査1-2 その他産業支援に関する事例: 1章に対応)。  第二章では、計画敷地である東京都大田区における町工場の現状や特性について考察し、それに基づいたコーポラティブ方式によるコミュニティー創出型集合工場のデザインの方法について記述する。(2章に対応)  第三章では、第一章・第二章の分析に基づいた実際の 計画・提案を記述する。

1. 工場集合化の理念と方法

1-1 工場集合化の意義

(1) 協働:関連業種の同居で新しい創造性を創出する。

(2)充実した共用施設:集合型ならではの充実した共用施設を得られる。

(3)コストパフォーマンス:ある程度の事業規模を確保することによる区の補助や融資、インフラ共有による操業 コスト削減が見込める。

1-2 工場集合化の課題

(1) 住工混在による周辺環境の摩擦:工場の過疎化が進み、住宅産業の介入が進行する中での集合型工場の参入 は周辺環境との摩擦が生じやすい。

(2)将来的な工場の維持に対する懸念:後継者不足などによって将来的な工場の維持に対する懸念から、(分譲の場 合は特に)移転に対して非積極的である。

2.東京都大田区における町工場の現状と特性

2-1 東京都大田区について

大田区は、首都圏でも早くから都市化が進んだ東京都心から川崎・横浜に至る連担した都市軸上に位置する。この都市軸上の地域は、首都圏の中でも交通の利便性に優れるなど都市化の条件に恵まれていたため、広域的な交通や物流などの都市機能や文化・レクリエーション機能等の多様な機能が立地し、これまでの首都圏の発展の一翼を担ってきた。この都市軸上にある大田区の臨海部埋立地には、羽田空港や物流機能等が立地し、広域的な 交通と物流の拠点性を持った地区を形成している。  また、大田区は工業のまちとして発展してきた歴史を持ち、現在でも機械金属工業の分野にあっては、日本のハイテク産業を支える国内でも有数の技術を持った工場の集まる地域であり、住宅と工場の混在した地域が広がっている。その一方では、台地部を中心に緑豊かで良好な 住宅地が形成されている。

大田区は、このように広域的な拠点都市、工業都市、住宅都市として多くの顔を持ち、昼夜間人口の比率もほ ぼ等しい、バランスのとれた都市といえる。

2-2 東京都大田区における町工場の分布 大田区の町工場は主に南側の多摩川沿い、東側の東京湾沿いの準工業地域を中心として分布しているが、近年町工場の減少が深刻に進み、特に工業専用地域に隣接した萩中・羽田地域や大森東・大森中地域を除き、住居地域に囲まれた仲池上・池上地域や中央・大森西・山王地域、さらには工業地域に隣接する矢口・下丸子地域、六郷地 域までも住宅化が進んでいる。

2-3 対象敷地について

対象敷地としてはこの4つのエリアの中から選定する。大田区の町工場は集積し、ちゃりんこネットワーク(仲間まわし)をはじめとした横の繋がりを通じて発展してきたが、町工場の減少が著しいエリアにおいてはそれらを維持することは困難になってきている。そこで、コーポラティブファクトリーという自身で協働コミュニティーを保有する集合体を転入させることで、それらのエリアの衰退の危機にさらされている町工場を補強することを期待する。なおかつ、住宅化が進むエリアにおける集合型工場の在り方を検討することで、今後ますます新規住宅産業の介入が進むであろう大田区の住工調和の 未来像を示すことを目指す。

4.予想される結論

大田区を中心とした集合型工場やその他産業支援施設、そして大田区の町工場の特性や現状を調査・分析することによってそれらが抱える問題を明確化し、その分析結果を元に設計提案を行うことで未来へと持続可能である大田区ならではのコミュニティ創出型次世代集合工場の モデルを提示する。

 

 

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