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幼保一体型施設における空間形態に関する研究 —都市型認定こども園の提案

1. 研究の背景と目的

近年、都市部では多くの待機児童の存在が問題となっている。需要にともない保育所数は増加している。東京都独自の制度である認証保育所は、都市部の保育所不足の対策として設置されている。アクセスの良さや開所時間へのニーズには応えられている一方、従来の認可保育所の施設基準では設置場所の確保が困難なため基準を緩和している。したがって、施設面積の縮小や設備の質が低下するといった、子どもの成育環境として疑わしいものが増加している。

認証保育所だけでなく、保育施設の運営形態は様々である。その結果、質や環境について格差が発生しており、地域や施設ごとに異なる保育環境となっている。子どもの数が減少している地域では、子ども施設(注)における集団規模が小さく、社会性の獲得について都市部とは差が生じてしまう。

このような状況において、現在、保育施設の制度が変革の時期を迎えている。すべての子どもに標準的な学校教育と保育を保障すること及び保護者への子育て支援の提供のために、幼稚園と保育所の一元化を促し、幼保一体型施設である認定こども園の拡充が促されている。

幼保一体型施設の特徴として、就園時間が異なる子どもの混在が挙げられる。一日を通して子どもの数の増減が生じ、それに伴い移動も起こるので、保育集団の規模の変化が頻繁に起こる。集団規模が変化するなかで、異年齢児の身体寸法や活動の違いを同時に受け入れる空間をいかに作るか、変化に対してどのような保育施設を作ったらよいのかを明らかにする必要がある。新たな子ども施設の運営形態への変化のなかで、どのように保育環境としての建築を作るべきか現在模索段階である。

以上より、都市部において保護者のニーズと子どもにとって良い成育環境を実現できる子ども施設のあり方について今一度考えるべきである。さらに、保育施設のあり方が新たな制度の枠組みに移行したとしても、空間の作られ方を決定付けるのは、施設を利用する子どもの活動によると考える。そこで、幼保一体型施設における活動から、建築を作ることの考察を行う。そして、幼保一体型施設の計画に有用な設計手法を得ることを本研究の目的とする。

2. 研究の位置付け

幼保一体型施設での活動についての既往研究として、山田らによる”幼保一体型施設における運営様態、混合保育、活動場所の変遷に関する研究(1)”、”幼保一体型施設における活動の分布と規模変化に関する研究(2)”などがある。こうした研究によって、一日のなかでの園児数の変動、室における分布などの保育形態について明らかになっている。しかし、保育形態の変化における空間の設計手法については言及されていない。そこで、本研究では、幼保一体型施設の設計手法を明らかにすることを目的とした調査・分析を行い、自己の考察を付加する。

3. 研究対象と方法

事例分析と調査の2つの方法から考察を行う。事例分析は保育施設の現状を把握し課題を見いだすことを目的とする。調査では幼保一体型施設を訪れ、設えや空間と集団規模の変化について記録を行い、各園の図面の収集・作成を行う。建物の構成や規模において異なる複数の施設を調査対象とする。

1. 子ども施設

1-1. 多様なあり方

幼稚園や認可保育所だけでなく、東京都独自の制度である認証保育所、認可外保育施設、幼稚園と保育所を一元化させた幼保一体型施設など多様な運営形態と規模の子ども施設がある。さらに、保育や就学前教育としてだけでなく、子ども施設以外の機能と複合化した形態もある。子どもにとって、異なる年代の人々に会う機会が日常的に多いことは豊かな経験となるので、このような複合施設の可能性としての力は幼保一体型施設と同様に大きいと思われる。

1-2. 認定こども園

認定こども園とは、小学校就学前の子どもに学校教育と保育を一体的に提供する施設であり、幼稚園と保育所の利点を併せ持つ。都道府県の条例により認定基準を定めているので、地域により格差が生じることが問題視されている。

認定こども園の数は、20123月の時点で約760施設と少ない。待機児童の大部分を占める3歳未満児の受け入れを義務付けていないことなどが施設利用者の増加を阻む原因である。

現在、幼稚園や保育所、その他の認可外施設は認定こども園への移行が進められており、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型の4種に分類することができる。

1-3. 子ども施設の今後

20126月現在、認定こども園の拡充法案が衆議院本会議で可決された。幼稚園と保育所を一体化させた「総合こども園」の創設を見送り、「認定こども園」の拡充を行うことになった。子ども施設の先行きは不安定ではあるが、幼稚園と保育所の差異は今後薄れていく流れにある。

1-4. 環境の差異

運営形態によって異なる施設基準を持つことから、それにより施設環境は変化する。例えば、認可/非認可保育施設の施設基準の差異は、成育環境の格差を生む。さらに、立地による環境の差異もまた大きい。都市部では敷地が狭小の場合が多く、施設基準通りの計画であっても、豊かな環境というには疑問が残る。

1-5. 考察

子ども施設は環境や制度によって多様な形態を持つ。質の高い子ども施設のニーズといった社会背景や成育環境としてのあり方を考慮し、双方の要望を実現できる施設へ転換させるべきである。

 

2. 事例分析

2-1. 予備分析としての事例観察

事例観察により現在の子ども施設における傾向について、構成と施設開放の2項目を抽出した。

2-2. 分析方法

事例観察にて得られた、構成と開放という要素に着目する。分析対象事例を増やし、構成と開放について、それぞれ機能との関係を分析する。子ども施設特有の形態と機能の関係について考察を行う。次章の調査により得る実際の活動や集団の状態と、本章での形態的考察を併せることにより、子ども施設の計画に対して多角的な視点を得ることをねらう。

3. 調査

3-1. 調査方法(仮)

2-1.の事例観察により、施設の理念や設計者の意図にて選択される構成や地域への開放性が異なることが明らかとなった。それぞれの型による、遊び・行事等の活動や運営の変化について調査を行う。幼保一体型施設にて集団規模の変化について、特定の活動を行う面積についての観察調査を行い、ネットワーク図を作成する。

4. 結論

5. 設計提案

5-1. 提案に関する要素

 以上から、設計提案に関わる項目を抽出し以下に示す。

・都市部における保護者のニーズを満たす立地と受け入れ年齢・時間の拡張が必要である。

・認定こども園を拡充させる流れにある。

・子どもの豊かな成育環境を実現するためには施設基準を見直す必要があるのではないか。

・施設を利用する子どもの活動から空間を作ることを設計手法として確立できないだろうか。

・他の機能と子ども施設の複合化についての可能性がある。

 

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