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都市のイベントにおける人の集合・離散 —ジオタグ付きtweetの時空間特性に基づく記述・類型化—

修士2年の相川です。2018年度の修士論文の概要を掲載します。

 

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背景:都市内の人の動きを把握する代表的な手段に、パーソントリップ調査があります。このような調査を通して、マクロかつ周期的な人の動きが把握できます。これまで、都市内のダイナミックな人の動きを、定量的に把握する事は困難でした。一方で近年、都市活動を営む人々は SNS を介して、様々な出来事を共有しており、このようなデータは、人の動きをミクロに把握する上で有用な情報源であると考えられます。 本研究は、SNS に発信されたデータを用いて、都市内のミクロな人の動きを可視化します。

目的:本研究の目的を以下の2点とします。

①祝祭性を帯びたイベントによる、局所的な人の「集合と離散」の動きを明らかにする。また、イベントの種別が人の動きの様態にどのような影響を及ぼすのかを整理し、類型を示す。

②都市のアクシデントによる、人の局所的な「迂回と回避」の動きを明らかにする。

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方法:2018/07/01~9/30の間、東京都庁を中心とする 半径20km圏内で に発信された929,949件のジオタグ付きtweetを分析対象とします。

空間特性:東京23区におけるtweetのプロット図を上図の左に示します。主に、東京駅、新宿駅、渋谷駅周辺にtweetが多く、東京都心部でも皇居には少ない事が分かります。さらに、中央線に着目すると鉄道路線に沿ってtweetが発信されていることが分かり、ジオタグ付きtweetを通した都市内の人の動きは、鉄道路線と密接に関係していることが確認できます。

時間特性:取得した tweet を平日と休日に分け、一時間毎の集計結果を上図の右に示します。図中から tweet 数は平日よりも休日の方が多いこと。平日は日中、職場や学校にいると思われる時間帯に少なく、昼休みと出退勤時に増加する事が確認できます。

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ユーザー特性 :Twitter のユーザーは上図の円グラフに示すように若年層に多く、取得したデータに関しても、 このようなの年齢層の偏りがあると考えられます。

ジオタグの種類/記述方法:tweet にジオタグを付帯させる方法には、2つの種類があり、特に近くの施設の名称をジオタグとして tweet に付帯させる方法を用いると、同じ地点に、1 件の tweet が重なります。そこで本研究は、tweet の密度を 1 時間毎のヒートマップで表現するこ とで都市内の人動きを可視化します。

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集合と離散(記述):都内で開催された、4 つのイベントに着目し、人の集合と離散の動きを考察します。 イベント会場から半径 1 キロ圏の tweet 数の推移を上に、下に各イベントの、開催前、 tweet 数の最大時、閉会後の 3 つの時間帯のヒートマップを抜粋して示しています。以下、各イベントに焦点を当てた考察を行います。

東京ドームで開催された屋内ライブの tweet 数の推移に着目すると、イベント中 に tweet 数が激減し、その後増加することがわかります。イベント中、観客はライブを 鑑賞しているため、この期間、会場に人がいなくなった訳ではなく、会場に滞留していると考えら れます。この仮説に基づいてヒートマップに着目すると、人の滞留時の密度は、室内空間であることが要因となり他のイベントと比較して、局所的です。また閉会後の散開の圏域は近傍に複数の駅があるため、広域的です。

次にコミックマーケットに着目すると、先程のイベントとは異なり、イベント中も持続的に tweet が発信されていることが分かります。 ヒートマップに着目すると、会場と駅を行き交う人の滞留が見られました。この滞留の密度は、イベントの閉会にかけて、徐々に小さくなる傾向にありました。

同様に、明治神宮球場と秩父宮ラグビー場で同時に開催された野外ライブに着目します。 このイベントは、演者がイベント中、両会場で、同時にパフォーマンスを行う特徴があります。よって、tweet 数の最大時には両会場を覆う、楕円形の滞留が読み取れました。

最後に台場で開催された野外ライブは、会場内で複数の演者が同時にパフォーマンスを 行い、来場者は会場内を自由に移動して鑑賞する特徴があります。 開催前では近傍の駅を中心とした広い圏域に、人の集合が見られます。tweet 数の最大時 では、会場内の複数のステージを中心とした広い圏域に人の滞留が見られます。閉会後 では、再度、イベント会場から近傍の駅へと中心が移動し、人々が離散する様子が読み取れました。

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集合と離散(類型化):前述の、イベントにおける人の動きを整理します。

まず上部に示した時間特性について、屋内ライブは 1 日限定で開催されたことが要因となり、開催直前の tweet 数が他のイベ ントの中で最も多いことがわかります。対して、コミックマーケットは、3 日間にかけて開催されるますが、日を追う毎に tweet 数が増加する特徴がありました。神宮球場の 野外ライブと、台場の野外ライブは 3 日間にかけて開催される事が要因となり、相対的 に tweet 数が少なく、連日同程度の推移が繰り返し見られます。

次にヒートマップで可視化した人の密度をについて。まず人の滞留の様態については、 東京ドームの屋内ライブは会場が限定された室内空間であることが要因となり、人の滞 留は局所的でした。 次にコミックマーケットは、イベント会場と駅の往来により、リニアな領域に人の滞留 が見られました。さらに神宮球場と秩父宮ラグビー場の野外ライブでは、両会場を包含する楕円形の滞留 が見られました。最後に台場の野外ライブは、近傍の駅と複数のステージを中心とする、 複数の滞留が見られました。これらの滞留の様態はそれぞれ「極型」「線形型」「二極型」「多極型」の 4 つに整理できると考えられます。

人の離散の様態については、屋内ライブ ( 東京ドーム ) と、野外ライブ ( 明治神宮 球場 + 秩父宮ラグビー場 ) は閉会後、会場付近の複数の駅に向かって離散します。コミッ クマーケット ( 東京ビックサイト ) では、人の滞留の密度は閉会とともに徐々に小さくな ります。また、野外ライブ ( 台場 ) では、滞留の中心がイベントの開催前後で移動する様 子が見られました。以上より、人の離散の様態は、「多極分化型」「平衡減衰型」「偏心型」 の 3 つに整理できると考えられます。

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迂回と回避:首都圏在来線の計画運休に着目して、人の迂回と回避の動きの記述を試みます。 特に鉄道路線が集中する東京・新宿・渋谷・池袋駅に着目し、計画運休時を「異常時」 と捉える一方で、一週間前の 9/23( 日 ) を「平常時」として比較します。

tweet 数の推移を平常時をブルー、異常時をオレンジで示します。全ての駅において、計 画運休が実施された 20:00 以降、tweet 数は異常時の方が少ないことがわかります。さらにヒー トマップから、平常時は都内の多くの箇所で人の集合が見られるのに対し、異常時では 人の集合する箇所は明らかに少ないことがわかります。

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結論:4 つのイベントにおける人の集合と離散を視覚的に把握することで上に示す 3 点の事がわかりました。さらに都市のアクシデントに着目し、平常時と異常時の比較することで、都市内に人が いない状態を可視化することができました。しかし、異常時に特定の場所で人の集合が 発生している要因を特定することはできませんでした。

課題と展望:この要因については、本研究が対象としなかった、tweet のテキストデータを分析に組み 込むことで、詳細に特定できる可能性があると考えられます。本研究が扱っているジオタグ付き tweet のように、我々の身の回りの膨大な情報が、バー チャル空間に蓄積されており、近年「ビッグデータ」と呼ばれています。今後これらの 相互の重ね合わせにより、定量的かつミクロな人の動きを把握することが可能になると考えられます。

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修士論文執筆に際し、多くの方々にご指導・ご協力を頂きました。ここに感謝申し上げます。

 

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