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『竹を活用した仮設建築の設計-千葉県南房総市における里山プロジェクト-』

M2齋藤和也です。

『竹を活用した仮設建築の設計-千葉県南房総市における里山プロジェクト-』

1.序論

1-1.研究の背景
 環境共生の意識が高まる中で、地場産の建材を代表する竹材は特有の靭性を持ち、繊維方向が木材と同等の強度を持つため、建築材として利用拡大の可能性をもつ循環型資材であるといえる。実際に海外では竹材を利用した建築が多く存在しているが、日本では伐採された後に放置されたまま荒廃していくことが未だに多いのが現状である。また現在全国の竹林は生活用品の変化、安価な輸入タケノコの台頭、市場価格
の低下などにより、竹の使用率は低下しており、中でも里山では次世代の林業への担い手が減少を続け、伐採や間伐が行われず荒廃が続くという深刻な問題を抱えている。そこで建築資材として竹材を有効活用することが竹林問題の解決につながると考えた。
1-2.研究の目的
 竹材を用いた建築事例は数が少なく、構造的解決の実証実験あるいは仕上げとしての使用がほとんどである。本研究では、日本でも良質な竹林が存在する千葉県南房総市の里山において、季節ごとの年間プログラム(水路清掃、さなぶり、草刈り、夏祭り、竹林整備、収穫祭)に応じて用途を設定する事と、竹材を現地で入手し、リユースするまで包括した地産地消により竹材を利用することで仮設物を設計し、竹構造による可変性、独自性をもつ建築デザインを提案する事を目的とする。
1-3.研究の位置付け
  実際に竹材を利用し、実施設計まで行った研究として、竹材の靭性を活かし、中心から放射状に並べることで大空間を実現した「竹の会所 / 滋賀県立大学陶器宏一研究室」や竹材による構造物の積層の可能性を追求した「BBP-バングラディッシュにおける竹構造の農村住宅開発研究のモックアップ- / 長岡造形大学ケ・エム・イフテカル・タンヴィル」 などがあるが、それらと違う竹の線材であるという観点からのデザインを試みる。また本研究は「千葉南房総市里山デザインワークショップ」から吸収したプログラムや敷地を活かし、竹材による建築デザインの有用性の提案を試みるものとする。
1-4.研究の対象・方法
 研究の対象として、①竹材を利用した建築事例及び既往研究から独自性を見出し、本研究の独自性、提案性を決める。②「千葉南房総市里山デザインワークショップ」の主催者であるNPO法人「南房総リパブリック」  代表・馬場美織氏の所有地であり、本計画を行う対象敷地の千葉県南房総市里山を調査する。そして方法としては、基礎研究として竹材の性能を研究し、並行して「千葉県南房総市里山ワークショップ」から実施設計に至るまで、一貫したプロジェクト型の研究として問題提起から実施設計までを分析・考察する。

 2.竹について
 

2-1.竹の種類・特徴
 竹は強度が強く木材の1.3~1.5倍といわれ、約2年で材料として利用できるほど成長することから、伐採による地球環境破壊につながる事もなく、むしろ資源活用に有効で、貴重な木材の代替品といえる。また材料実験から建築材料としての強度も実証されているためこれから利用拡大の可能性も高い。全国の里山の竹林の多くは孟宗竹で全長6~7mが一般的である。
2-2.竹の循環方法
 竹の循環方法として「中越パルプ工業株式会社」による『竹紙』がある。竹を伐採し活用して仮設物を建て、それを解体する際に、自らチップ工場まで運搬する事でコストを抑え、それらを竹紙にすることでリユースされる。こうすることで材料の循環だけでなく、里山整備から紙へのリユースという整備サイクルも形成され相互に有益な循環方法であると考えられる。

2-3.竹の活用事例
 実際に竹を使った建築作品事例から竹の利用方法の独自性を考察し、並行してプロジェクト型の既往研究から研究の一連の手法を考察する。
 

3.実施設計
 

3-1. 南房総デザインワークショップ
 平成24年3~6月の間、数回に分け千葉県南房総市上滝田地区の海から内陸に入った山間の里山で、既存のLVL(単板積層材)でつくられた1辺4m、高さ3.2mの三角柱のオブジェを2体移設・リノベーションし、里山に農を学び楽しむ場をつくる連続デザインワークショップが開催された。参加者を3つのグループに分け、里山の抱える問題や、里山での活動などを実際に現地で体験しながらLVL活用のデザインを考え、提案した。ここでの提案は実施設計を行う建築家の下で再考され、8月から9月の間実施される。
 本研究とワークショップとの境界としては、放置された竹林が多い里山に建てる仮設物のプログラム案を今回のワークショップで学んだ里山の年間の暮らしを参考にし、新たにプログラムを設定したうえで、竹材をどのように活用するのかというデザインを自ら行うこととする。

 

 

3-2. 計画概要
3-2-1. 計画敷地
竹材収集場所及び設計施工場所:千葉県南房総市上滝田地区里山(ワークショップ主催者馬場美織氏の所有地)
3-2-2. プログラム
 季節ごとの年間プログラム(水路清掃、さなぶり、草刈り、夏祭り、竹林整備、収穫祭)に応じて用途を設定するが、本研究ではその内の一つである秋の収穫祭を抽出し、仮設物の主要用途として、収穫した農作物の展示・販売、そしてそれらを用いた料理による食事等が行える空間とする。
3-2-3. 運営形態 
1. 学生を中心に事務局を設置し、友人等に呼びかけ参加者を募る。
2. 集まりが拡大していく度にスポンサー企業を探したり、南房総市のサポートの協力を依頼する。
3. 運営主体が後輩に伝え、事業は緩やかに継続していく。

3-3. 設計プロセス
3-3-1. 竹の収集
敷地側に広がる竹林から必要な本数の竹を鋸を使用し、切り出す。
3-3-2. デザイン・構法 (図2)
・天井の中心を周囲より低くし、屋根にはさかけをかけることで日射を防ぐ
・周囲の天井を高くすることで、人々と自然に対して開き、開放感を与える
・X方向とY方向で部材を個々に架構し、それらつなぎ合わせ全体を形成する

 

4. 予想される結論
・建材としての竹を用いることの有用性と竹材による独自性、提案性をもつ建築デザインの提示
・里山運営における問題解決、及び里山の保全・再生活動の活性化に活用される仮設物の提案

 

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