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戦後自由が丘における闇市の変容過程に関する研究(仮)

修士2年の田中です。修士研究の途中経過を報告します。

1.研究の背景
1-1.戦後の痕跡を残す場所の行方

 戦後日本の都市風景は、再開発事業が盛んに行われ、急激に変化を遂げた。これは現代においても継続され、私たちの生活する都市空間は常に変化を繰り返している。一方でその裏側には、闇市やマーケットなどの戦後復興期の痕跡を遺した空間が、都市の至る場所に存在している。そのような場所には、人間の身体にあったスケール感や、人々の営力を感じることができる雑多性など、従来のトップダウン的な建築空間とは異なる魅力がある。
 近年では、そのような場所にも老朽化や経済効率化などの理由から、再開発事業が介入し、空間が画一化されてしまうことで、長い時間をかけて培われてきた「場所性」は失われてしまっているように思える。しかし、このような「場所性」は未来に継承されていくべきではないだろうか。
1-2.自由が丘における再開発
 現在、東京都目黒区自由が丘の街は、時代の大きな転換点を迎えようとしている。自由が丘という街は、鉄道や道路といったインフラが整備されないまま発展してきたという理由からターミナル駅を保有していながらも、再開発事業が行われておらず、ヒューマンスケールな街並みを戦後から保ち、発展を遂げてきた。しかし、現在近隣地区の再開発の進行によって住み手が他地区に流れたり、建物の老朽化や交通整備などの理由から、自由が丘一丁目29番地区で再開発事業が行われており、2026年には60mの高層タワーが建つ予定である。また、自由が丘東地区にも90mの高層タワーが建つ計画が進行中であり、自由が丘の街並みは大きく変わることが考えられるだろう。
1-3.自由が丘における戦後の痕跡
 再開発が進む一方で、自由が丘の駅正面口前東横線沿いには、「自由が丘デパート、ひかり街、サンリキ会」という3つの細長いビルが存在している。この3つのビルは、全国でも少なくなっている戦後の闇市を発祥とする集合商店街で、日本で一番初めに「デパート」という名称を採用したビルであり、現在その珍しさから注目を浴びてきている。しかし、このようなビルも老朽化などの理由から、2017年には街で建替えの勉強会が開かれており、次の時代に向けて、建物の更新が必要になると考えられるだろう。では、街の更新期を迎えようとしている「自由が丘」において、最も歴史が深く、戦後の痕跡を残す自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会という場所は、今後、都市の中でどのようにあるべきなのだろうか。

2.研究の目的
 本研究では、自由ヶ丘デパート・ひかり街・サンリキ会を対象として研究を行い、以下の3点について明らかにし、修士設計の手掛かりとすることを狙いとしている。

1)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の歴史的変遷を、文献調査をもとに調査・分析し、空間及び機能の変遷について明らかにする。
2)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会と都市の関係性の変化を、文献調査をもとに明らかにする。
3)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の現状を、実測調査・フィールドワーク・アンケート調査をもとに明らかにする。

3.研究の位置づけ
 特に初田は、書籍「盛り場はヤミ市から生まれた」における「郊外のヤミ市」の章で、自由が丘デパート・ひかり街に関して言及しており、マーケット開設の経緯という観点から分析・考察を行っている。しかし、3つのビルにおける現在までの歴史的変遷を、建築的また都市的な観点から分析し、体系的に記述した研究は、管見の限りでは見当たらない。


4.研究の方法
研究の方法としては、以下の5点である。
1)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の歴史的変遷を、文献調査をもとに分析し、建物年表を作成する。
2)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会と都市の関係性の変遷を、文献調査をもとに分析し、都市年表を作成する。
3)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会と都市の関係性をフィールドワークをもとに、調査・分析する。
4)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の図面化・モデル化を、実測調査をもとに作成し、建物の現状を分析する。
5)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の当時の様子を知る方に、聞き取り調査を行う。





5.研究の進捗
第二章 自由が丘における闇市・マーケットの発展と都市の関係性
 書籍や文献情報から、都市の発展と闇市の発展の社会的な関係性を考察・分析し、明らかにする。また街路やファサードといった物理的関係性にも着目し、分析を進めています。

第三章 自由が丘デパートにおける歴史的変遷について
第四章 ひかり街・サンリキ会における歴史的変遷について

 各々のビルの歴史的変遷について、文献調査や古写真を分析・考察を行っております。

6.予想される結論
本研究を行うことによって以下の3点が明らかになると考えられる。
1)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の空間及び機能の変遷が明らかになる。
2)自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会と都市の関係性の変遷が明らかになる。
3)調査・分析で得られた知見を応用し、自由が丘デパート・ひかり街・サンリキ会の今後の在り方を示すことができる。

7.最後に
最終的には修士設計として成果をまとめる想定なので、設計を早急に進めていきたいと考えています。

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