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現代建築レビュー10月号

B4の丸山です。2024年12月5日に実施しました、新建築2024年10月の現代建築レビューを投稿いたします。

丸山:10月号で気になった建築は何ですか。

吉原:私は、AQ Group本社屋が気になりました。格子状の部材がファサードだけでなく構造にも効いており、ハウスメーカーということもあり、実際に住宅で用いられる規格で構成されている点が特徴的だなと感じました。しかし、オフィスビルということと内部の無柱空間をつくったことにより、ただの積層型の形式となり、近年のオフィスの在り方的なところで無柱空間をフレキシビリティ面と繋げることはできなかったのかという点が特に気になりました。

児玉:私は霧島神宮駅前プロジェクト 光来JR日豊本線霧島神宮駅改修という作品が気になりました。構造と意匠の両面で現地材木を活用していることが特徴的でした。狭苦しい空間になるのではないか、と疑問に思ったが、写真を見てみると逆に寄り添えるような空間が木の周りにできており、図面での印象と実際の印象にはやはりギャップがあることと、現地木材の新たな使い方に関して学びを得ることができました。

美和:私は日本大学工学部ロハス工学センター棟ロハスの森「ホール」が気になりました。パッシブデザインを推し進めた空間で構成されており,遮熱のための緑化屋根や人間以外の生物への環境配慮が為されていることが特徴です。自然の中で生かされている人間にとってはやはり建築というのは外環境との完全な遮断を目指すのではなく、あくまで共生するなのだという主張が垣間見られ、そのような部分に共感することができました。

吉田:私はさくらんぼ子供キャンパスCLAAPIN SAGAEが気になりました。フェリックス・キャンデラが得意とするHPシェル構造をそのまま「鉄骨と木材」で実現したような屋根が特徴的であり、鉄骨で屋根荷重を支えつつロングスパンをとることを可能にし、これにより、分断されない一体的な空間づくりに繋がっていることが興味深かったです。個人的には、屋根で用いられている木材を、そのまま露出させるわけにはいかないながらも、垂木のように軒先に見えてくるようなデザインにしても良かったのではないかとも思えました。

石本:私もさくらんぼ子供キャンパスCLAAPIN SAGAEが気になりました。さくらんぼの花びらをイメージした屋根は鉄骨だけでなく木も使った複合シェルで、このような湾曲の多い大きな面にも木造を活かせる可能性があるのは参考になりました。内部は屋根を吊っている中心のチューブ状の柱の中が螺旋階段になっていたり、波打った屋根とそれを支える外周のU字型の壁により多様なポケット的空間が生まれていたりと、遊び空間と構造が密接に繋がっている関係が面白いと思いました。このプロジェクト自体が設計、施行、運営や維持管理まで1つのチームとして取り組まれているためこのような一体感の強い空間が生まれたのではないでしょうか。

丸山:私はエバーフィールド木材加工場という作品が気になりました。レシプロカル構造によって空間のほぼ全てを覆うような構成でできている木材加工場であり、個人的には、このような所謂うるさい建築はあまり好きではないし、建築は中身こそ重きを置くべきだと思っているが、構造や材料が用途とマッチしている点、郊外に置くことでより一層目を引き、交流拠点になりうるポテンシャルをもっているという点で非常に合理的な建築なのだと関心を受けました。また地域産材を利用している点も理にかなっているなと感じました。

丸山:話してもらった事例の中で気になるところや、他に気になった事例はありますか。

末吉:主な10月号のテーマとして地域産材の利活用や解体材の再利用と改修というものがあるように思えました。木材の利活用では、かつて技術開発競争があったが普及には至らず、現在では地域の現地材を現地の工務店で捌いて地域内で利益が循環するようなスキームを作れないかという試みがあるが、後者のような特徴を持つ作品比較的多く見られます。

しかしながら、やはり細かいところを見ていくと、今回の作品において、材料は海外産の木材のものもいくつか見られ、国内産材の運用や解体材の運用など、まだまだ具体的な運用路が見えていないことが懸念点として挙げられるように思えます。また、そこには技術的、材料的な限界があるため、構造的・配置的に共通したデザインに落ち着いてしまっているという現状もあるのも今回の事例の特徴ではないでしょうか。

丸山:一方で、カンボジアの学校はおよそ10日間で施工がなされていて、木造の強みが大きく出ているようにも見えます。

児玉呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)大型旋盤展示施設もモジュール化された部材を用いて5日間という非常に短期間の施工で建てられています。今回は、木材の利活用の課題を提示しながら、利点をうまく活用して魅力を発信している作品が多いようにも感じました。

総括

10月号では、木造の様々な試みが見ることができました。モジュール化による短期間施工の様子や立体的な局面を持つ屋根もいくつかみられ、これまでRC造の分野だったものも木造で実現できるようになってきていることを認識できました。一方で、課題点を挙げるならば、比較的小規模もしくは郊外であれば国産材や地域産材の活用は進んでいるが、都心や中大規模になるとやはり国外産材に頼ってしまう現状ということがあるようでした。私たちもkoyartで木材を扱い、使われた後の解体を考えた経験もあることから、非常に親近感があり、学びの多い回となりました。

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