研究の背景と目的
近年コンピューターの普及により、様々な解析シミュレーションを行うことができるようになってきた。解析シミュレーションを用いることにより、風や熱や光などの複雑で予想し難い挙動を可視化し把握することができる。このことにより、実際に設計された空間が環境的に意図されたものになっているか検証し、その結果をもとに改善することによってより適切な環境を実現することができる。
現在の建物の環境は、主に機械制御でコントロールされている。そんな中、設備に依存するのではなく建物の形状を直接的に変化させ、パッシヴな建築を形成することは設備の負荷を抑えることができ、環境的課題が多く取り上げられている今日において極めて有効である。また、環境的合理性を考慮し設計することによって、計画学的合理性を考慮し設計されたものとは違う造形が生まれる可能性がある。
近年学校建築は、学校形態や理念の変化などから、開放的で連続的な空間が求められている。それを可能にする形態としてオープンプラン・スクールが注目されている。オープンプラン・スクールは、開放性を求める一方、授業の効率などからある程度の閉鎖性が必要である。このことから、オープンプラン・スクールにおける壁は微妙なバランスで成り立っており、少し変化させることも難しい。一方オープンプラン・スクールでは様々な諸室の空気が一体となっており、環境的にお互いに影響を与えやすい。しかし、計画学的には様々な取組がなされているが、環境的取り組みはまだ乏しく、機械制御に依存しがちである。
本研究ではCFD解析シミュレーションを用いる。CFD解析シミュレーションを用いて風の挙動を可視化させることで、計画学的合理性に風の合理性を両方満たしうるような壁のあり方を実現することと、それによって生じる独特な造形の可能を活かして設計することを目的にする。
研究の方法
論文編では学校建築における事例を収集し、分析を行い、設計に反映させる。主に学校建築において計画学的側面、環境的側面から分析を行う。
設計編では設計を行ったものを解析シミュレーションし、検証し次の提案へフィードバックする。最終提案までの過程を記述し、案の変化や解析シミュレーションの状態を記述する。
設計提案
設計の流れ
本研究では、事例分析をもとに提案をし、提案したものに対して解析シミュレーションを行い検証する。検証したものを次の設計へフィードバックする。これを数回繰り返し、意図した状態へ近づけていき、最終成果物とする。
対象敷地
東京都江東区豊洲5丁目2-1
敷地面積:10000㎡
用途地域:準工業地域
建蔽率:60%
容積率:300%
高度地区:第3種高度地区
豊洲は人口増加に伴って小学校の建設が課題となっている。
また、海からの風を利用し設計を行う
平面ダイヤグラム
風の通り道から風を取り入れ、風の強さが多様な場を作る。
1階平面図