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境界のかたち -麻布米軍ヘリ基地地下返還計画-
01.背景・目的 戦後70年を迎える今年、戦争体験者の高齢化により失われてはならない記憶が失われようとしている。このような世代の転換期において、私たちのような戦争を知らない世代が戦争について考え、記憶を継承することが求められる。 本設計では、私たちが戦争を自らの問題としてとらえ、考えを巡らせるため、米軍基地の地下に平和祈念館を提案する。 02.敷地 敷地は、六本木の麻布米軍ヘリ基地とする。日本の旧陸軍兵舎からは始まり、現在は米軍基地として軍用地の歴史を辿ってきた。基地返還の過程で、現在アメリカが使用している基地はハーディーバラックス、不法占拠地、代替返還予定地の3つの領域が存在する。ハーディーバラックスは正規の米軍基地であり、新聞社やヘリポートなどの重要機関から成る。不法占拠地は、六本木トンネル開通の工事のために一時的に日本の土地と貸与したものであるが、工事終了後も返還されずに不法占拠さ...
ル・コルビュジエのサン・ピエール教会の研究 ―構想案の変遷と再建案におけるオーセンティシティの検討―
B4小林直美です。2014年前期の論文を掲載します。 1章 序論 1.1 研究の背景と目的 近代建築の三大巨匠であるル・コルビュジエは、フランスに多くの建築を残したが、その一つにフェルミニの建築群がある。1953年から始まったこの計画のうちル・コルビュジエはスタジアム、青年文化会館、集合住宅、そして教会の設計を手掛けたが、教会は幾度と重なる難題によって計画が大幅に遅れ、建設が実施される前にル・コルビュジエは死去した。その後、弟子であるジョゼ・ウブルリーらやル・コルビュジエ財団、フェルミニ市議会議員等の協力により、2006年にこのサン・ピエール教会はようやく竣工に至ったが、完成までには工期の遅れや資金難によってさまざまな変更が加えられたため、出来上がった建築は生前のル・コルビュジエ自身の建築と言えるかどうかは疑問である。 本研究では主に参考資料と文面から計画背景や空間構成の変遷を分析し、生...