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アルヴァロ・シザの建築作品にみる「土地の変形」
B4関根です。遅ればせながら、2017年度春学期に取り組んだ研究内容について発表させていただきます。 1,研究の背景 アルヴァロ・シザ(以下シザ)はポルトガルを代表する国際的建築家である。また、1992年に、プリツカー賞を受賞している。 代表作として、ポルト大学建築学部(1986-93/99、ポルト、ポルトガル)やEXPO`98リスボン万博ポルトガル館(1995-98、リスボン、ポルトガル)などが挙げられる。 シザの建築は、土地に馴染みつつも、現代的な「白亜の塊」が浮いているような建築と称される。また、空間の移り変わり、つまり、シークエンスが魅力的でもある。以上のことからシザの建築は、「詩的建築」と謳われることがしばしばあり、このように謳われるシザの設計手法は、数多くの人の興味の対象となり、多くの研究がなされている。 また、シザの「建築家は何も創造しない。ただ現実を変形させるのみである。...
ラルフ・アースキンの住宅作品における パッシブデザインの手法とその変遷について
B4小峰です。春学期の研究内容について報告いたします。 序章 序論 0_1 研究の背景と目的 日本では近年、環境問題への取り組みが求められており、建築分野でもサステナブル建築の発展に注目が集まっている。しかしながら日本には四季があり、年間を通して気候の変動が激しいため、日本でのパッシブデザインの設計は難度が高く、現状では十分に実現されていないように感じる。 ラルフ・アースキン(Ralph Erskine、図1)は1914年にイギリスで生まれ、スウェーデンを中心に活躍した建築家である。数あるアースキンの作品の中でも住宅作品に注目すると、その分布はスウェーデンの首都であるストックホルムの周辺に集中している。この地域は暖流であるメキシコ湾流の影響により、同緯度帯にあるロシアやカナダ等の他国に比べると温暖な気候となっており、日本と同様に四季がある。冬には氷点下まで気温が下がり、降雪も...
オランダの教会から住居へのコンバージョンに関する基礎的研究
学部4年島田里沙です。2017年度、春学期の研究結果を掲載します。 私は、オランダの教会から住居へのコンバージョンに関する基礎的研究を行いました。以下研究概要を掲載いたします。 序章 研究の背景と目的 近年、オランダではキリスト教のコミュニティが縮小 して使われなくなった教会が増えていること、またオランダでは住宅不足が社会問題となっていることから、オランダは教会から住居へとコンバー ジョンされる事例が見られる。 この論文では、1オランダのコンバージョンや保存に 関する制度や法律を明らかにする。2教会を住居へコ ンバージョンする際の設計手法、設計の際の問題点や 障害などを明らかにする。 研究の対象と方法 オランダの教会から住居へのコンバージョンがされた事例、7件を対象とし、平面、断面、住戸配置などから分析を行う。 1,chapel of living...
上海新天地における石庫門型里弄住宅の保存と再生に関する研究
B4の丁佳蓉です。春学期の研究内容を発表させていただきす。 序章 1−1.研究の背景と目的 特殊な地理的・歴史的要因によって、上海には西洋の文化と中国の伝統文化が混在し、共生している。1843年開港以来、租界時代に欧米各国の様々な建築様式の建物が建てられ、西洋建築と中国伝統建築が融和した「中洋折衷の建築」の景観が形成した。社会状況の元に上海における都市の主要な構成要素となる「里弄」が発生していった。2010年に「石庫門“里弄”建築の建造技術」は中国政府から国の無形文化遺産に認定された。 1990年代に入り、都市基盤の整備や都心部不良住宅の更新が新しい段階に入り、里弄住宅が一時大量に取り壊され、面積は下降傾向にある。しかし、里弄住宅は旧市街地の各行政区においてその比率が依然高く、如何に里弄住宅のストックを合理的に再生するかがますます重要な課題になっている。 旧市街地再生一つの事例として、新天...
素材から見たアルヴァ・アアルト ~夏の家のレンガに着目して~
B4の布施です。春期の研究内容を発表させていただきます。 序章 0-1 研究の背景、目的 Alvar Aalto(1898-1976)はフィンランドのモダニズム建築家である。アアルトの作品では戦前は白スタッコ、1950年代はレンガ、1960年代以降は大理石が多く用いられている。 1953年に建てられた夏の家はレンガ時代の始まりの作品である。また、フィンランドではこの時期セメントや鋼材の資源に乏しかったためレンガを主体構造に用いなければならなかった背景もあるが、MITベーカーハウスの設計の際に工業化された均質なレンガではなくあえて手作業でレンガを焼く工場からレンガを仕入れていたという話からもアアルトが素材にこだわりを持っていたことがわかる。アアルトの夏の家からレンガに着目し、素材と建築の関係について分析、考察を深めたい。 研究目的は大きく二つに分けられる。 第1にアアルトの用いる素材から建築...
利用者の分布調査に基づく神奈川工科大学KAIT工房の空間特性に関する研究
B4の山田です。春学期の研究を発表させていただきます。 「利用者の分布調査に基づく神奈川工科大学KAIT工房の空間特性に関する研究」 序章 1−1 研究の背景 建築を設計する際に、設計者はその建築がどのように利用されるのか考えなければならない。特に商業施設や美術館、公共施設などでは、利用者の動線や分布というものを意識する必要がある。しかし、実際に設計者の意図通りに建築が利用されるかは分からない。 近年、壁などの仕切りで空間を明確に分節しない平面構成をした建築が多く見られる。代表的な事例として、神奈川工科大学KAIT工房があげられる。この建築内における利用者のアクティビティーは家具や内装、柱の位置などにより大きく影響され、個人が自ら場所を探求することにより確立される。そのような空間の境界があいまいな建築内で、設計者の意図する人々の分布は実現されているのだろうか。 図1 神奈川...
江ノ島電鉄沿線地域における線路敷きに隣接する住宅とその成り立ちに関する研究―和田塚駅、由比ヶ浜駅、長谷駅、腰越駅界隈を対象として―
B4氏家です。春季研究発表の内容を投稿致します。 序章 研究の概要 0-1 研究の背景と目的 一般的に、建築物が線路に対して表側のファサードを見せることはほとんどない。人や車が行きかう道路が都市の表側であると考えられているからだろう。一方で、人が見る側が建築物のファサードであると考えられるならば、多くの人々が乗り、その車窓から建築物を見る、鉄道側に対しても建築物の表側を見せるべきだと言えるだろう。 江ノ島電鉄沿線地域では、一般的な街並みでは見られない、私的横断場、線路敷きに玄関を向ける住宅、線路わきの狭隘な歩行者通路、線路敷きに溢れ出す植栽など特有の風景が見られる。江ノ島電鉄は開業当時、路面電車であった。つまり、開業当時は線路も道路とみなされ、線路にのみ接道する敷地も当時は接道義務を果たしていたと考えられる。しかし、戦後江ノ島電鉄は鉄道として認可されることになった。それにより、路面電車であ...
建築家ルイス・バラガンにおける庭と建築の空間構成手法に関する研究
研究の途中経過を報告します。 1.序章 1.1-3.研究の背景・目的・位置付け 建築家ルイス・バラガンは水面や光を大胆に取り入れた明るい色の壁面が特徴的な住宅を多く設計したことで知られる。バラガンは初期に画家であり造園家であるフェルディナン・バックから強い影響を受けたと言われおり、この点からもバラガンが庭を強く意識していたことがわかる。しかしバラガンはバックの作品のどういった点から影響を受け、自身の作品にどう展開させていったかは明らかにされていない。また、これまで木村の論文ではバラガンの絵画的な空間を、写真をもとに理論的に分析し、矢田の論文では空間が複数の層により構成されていることを明らかにしたが、これらは対象を建築に絞っており、庭を含めた空間構成について分析を行うには至っていない。これらの背景から本研究の目的を ①バラガンがバックから受けた具体的な影響とバラガンによる作品への展開を...
マーク・フィッシャーのステージ・デザインに関する研究
修士2年の野田です。研究の途中経過を報告します。 序章 0-1. 研究の背景 ステージ・デザインの歴史は、様々なエンターテインメントとともにその空間が創り出されてきた。 現代を代表するステージ・デザインの一つに、大規模なスタジアムコンサートが挙げられる。スタジアムでのコンサートが事業として生まれたのが、1965年のニューヨーク、シェア・スタジアムで行われたビートルズのコンサート。スタジアムでコンサートをすることのメリットは、一度に何万人のも観客とともに、音楽やパフォーマンスを共有することが出来るということ。人々の音楽の楽しみ方が多様化したことで、音だけでなく、視覚にも訴えるような演出が必要となった。 大規模なスタジアムにおけるステージ・デザインの先駆者である、マーク・フィッシャー(1947-2013)は、英国を代表する舞台美術家・建築家。ザ・ローリングストーンズ、ピンク・フロ...
ポルトガルにおける改修デザインにおける歴史的共作と作家性の相克 ―新旧区分の接合部に発生するディテールに着目して―
研究の途中経過を報告します。本研究のフレームワークは壮大に「辺境からみたモダニズムの受容と展開」、「建築の時間論」、「デザインとテクトニクス」と考えています。これまで建築の時間に関して深く関心を持ってきました。そこで私が今回着目したのはポルトガルのリノベーション、リノベーションにおけるディテールです。この夏に大河内先生と布施さんとポルトガルで現地調査を行い、興味深い事例に多く恵まれたので研究を通して面白さを伝えられればと思います。 序章 1-1.研究の背景、目的、対象、方法 1. 近年、保存対象となる建造物は多種多様なものへと拡大している。一方で未だに保存か解体かの二者択一的な解決、改修段階においての設計手法は画一的なものが多い。そもそも文化財や保存という概念は19世紀、近代化の過程で再開発に反発して生まれたと言われている。現在ではヴェニス憲章という国際的文化財保存の基本ルールが半世紀もの...