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東京都中央区月島三丁目再開発計画 -路地空間の継承と発展-
修士2年の小林です。遅くなりましたが修士設計の成果を報告致します。 【研究編】 0.序 0-1.研究の背景と目的 日本には数多くの木造住宅密集地域(以下、木密地域)が存在する。木密地域の特徴として、狭い路地が挙げられる。路地は私道であるが、周辺住民達の交流の場であった。しかし、近年、建物の老朽化や火災等の災害時に緊急車両が通れないといった安全面においての問題が浮き彫りとなった。その際に路地の狭い幅員が問題視され、建て替えの際に、道路が拡幅されたり、高層マンションが建設されたりと路地空間は徐々に消滅している。以上を踏まえ本研究では、研究編において、1)月島の路地の成り立ち及び現在の利用実態を明らかにすること、2)集合住宅の「路地的空間」を対象にコミュニティを醸成させる工夫やそれを実現するための設計手法を明確にすることの2点を目的とする。さらに、研究編で得られた知見をもとに、設計...
イギリスの教会から集合住宅へのコンバージョンに見るスケルトンとの融和・対立・乖離
修士2年の山本です。修士論文の成果を報告します。 背景と目的 イギリスでは、教会を住宅にコンバージョンした教会転用物件が不動産市場で扱われている。 教会から住宅へのコンバージョンが起こる背景 ①歴史的な建造物を保護する景観規制により古い建物が解体できない。 ②住宅の供給戸数の限定・住宅価格の高騰による慢性的な住宅不足。 ③1900 年代の都市部への人口流入により建設された教会が、脱宗教等で未使用になったが、簡単に壊せない。 ④教会のコンバージョン後の用途は、採算をとるために集合住宅や事務所が一般的である。 ⑤使用材料、構造、デザイン等が質が高いため、教会のコンバージョンへの投資が盛んである。 コンバージョンには主に以下の図の2つの手法がある。 図 主なコンバージョン手法 教会のコンバージョンはこれらの延長なのか。他のコンバージョンと何が違うのか。 ⇨これを明らかにすることが、...
geography of the scene
1.背景-漂白されていく都市に対するアンチテーゼ 現在都市は様々な人口物により埋め尽くされている。道路はきれいに舗装され、都市の中の植栽は整備され、元々は大きな力を持っていた地形でさえ隠蔽され人の手により飼いならされている。純粋な意味での原っぱなど東京という都市にはもう存在しないのではないか。また、“2020年”というスローガンを掲げ、現在都内では多くの再開発が進んでいる。新宿区四ツ谷はその名の通り4つの谷が存在する場所である。しかし、ここも例外ではなく再開発という名の都市の漂白が場所の個性を消そうとしている。 2.分析-スリバチ地形の時代的推移 かつては豊富な緑と大きな池があり景勝地として知られていた。時代推移と共に花街、住宅街へと変化していった。そのことにより、土地は造成され地形は密集する建物により隠蔽されている。 図2-1 時代的推移 3.提案-大都市...
継 往 開 来 -物流倉庫から小学校へのコンバージョン-
1.背景 -物流倉庫の空き家化- かつて、経済成長期の日本。都市は肥大化しその需要に応えるべく供給の拠点として都心部湾岸には埋立地が造成され物流倉庫が数多建設された。しかし今日、物流施設はオートメーション化に伴う施設の集約等、様々な理由により物資を保管する大空間という形態的特徴をのこしたまま、空き家倉庫が増加している。しかしそのような湾岸埋立地には近年住宅地に転用され、それに伴う短期間での人口流入が見受けられる為、公共サービスの不足が見られる。 2.対象地域及び敷地分析 -新興開発都市千若町- 本案では、そのような要因で増加している空き家物流倉庫が目立つ神奈川県千若町を対象敷地とする。この地域は2002年に都市再生特別措置法により緊急整備地区に定められた以後、短期間での過度な人口流入が目立つ。住民は一部稼働している工場と今後開発されるであろう工場跡地に囲まれながら生活してい...
直径1kmの空白 ー科学と自然が共存する都市公園ー
1.敷地 敷地は神奈川県横浜市泉区、深谷通信隊跡地、面積約770000 平方メートル、直径約1kmの円形空地。この土地はかつて、日本海軍が電波基地を建設するため、用地買収したものだった。終戦後、アメリカ軍によって接収されたが、衛星通信機器の進歩により電波基地は集約され、ほとんど活用されることなく、平成26年に返還された。 特徴的な円形の敷地は電波干渉を防ぐ目的で形作られた。その為、直径1km内部にあった高さのあるもの、豊かな広葉樹林と桑畑は伐採され、その後も長きに渡って放置された結果、土地は荒れ果て、未だに低未利用地となっている。 図1ー敷地航空写真 2.プログラム この敷地に挿入されるべきプログラムには、直径1kmの巨大な円形という特徴を最大限活用すること、そして破壊されゆく自然環境を保全し、市民に対して開いていくことが求められていると感じる...
re:渋谷アンダーグラウンド〜地下空間における”場所”の獲得〜
1.背景 ー没場所としての地下空間 サインに支配される人々ー 現在私たちが日常的に利用している地下とは、交通インフラの地下進出によってそれらに付随するように生まれた、通路としての機能空間である。ここには”場所”というものは存在せず、空間的経験は存在しない。交通インフラの開発により大量生産されたこのような”没場所”は、サイン計画によりその行動を補完しているが、それにより地下空間での行動は支配的な、受動的な行動となっいる。 図1視覚情報の乏しい没場所としての地下空間 2.提案 ー 場所の獲得 能動的空間行動へー 既存の地下空間に対し、通路としての機能を担保させつつ、そこに”場所”を生むことで、空間的経験を生みだし、地下での行動をサインに支配された受動的なものから、より能動的なものに変えていくことはできないか。 図2サインに支配される人々 3.対象敷地 ー渋谷地下ー 本提案では、その複雑な...
御柱転生
1.背景 御柱の街 諏訪 長野県中部・諏訪地域には御柱(おんばしら)と呼ばれる独自の文化がある。御柱とは神社の四隅に立てられたモミの巨木のことで、ご神木としての役割を持っている。御柱は6年に1度開催される御柱祭という祭りを経てご神木となり、御柱は古いものから新しいものへ更新される。御柱祭とは御柱となる樹齢150年以上のモミの木を八ヶ岳山麓から切り出し、人力で神社の境内に運ぶ諏訪大社の神事である。御柱は諏訪大社をはじめ、諏訪地域の神社や街中の小さな祠に至るまで様々な場所に見られる。 2.問題提起 御柱は御柱祭が開催されるたびに古い御柱が発生している。現在、諏訪大社の古い御柱はお守り・輪切りのオブジェクト・広場のモニュメントに加工されている。しかし諏訪地域全体で見れば御柱の有効利用はまだ進んでいない。役目を終えた御柱の新しい利用法があるのではないかと考える。 3.提案 上記の問題より御柱...
雑司が谷・鬼子母神界隈の再編―参道を軸とした新しいコミュニティ―
参道を軸とした二対の建築を媒体に、地域の新しいコミュニティ空間を作る提案。 1.背景—雑司が谷という街— ―古い街並み、生い茂る緑、モノで溢れた路地空間、子育の神・鬼子母神。― 都心にありながらも閑静な住宅街が広がる雑司が谷。歴史あるこの街のコミュニティは、伝統行事の御会式や手創り市などの地域イベントや路地空間を介した近隣住民との日常的な挨拶・会話など多方面にわたり築き上げられてきた。 特に街の中央に位置する鬼子母神堂では、御会式などのお祭時には多くの人で賑わい、日常では観光客や散歩する高齢者、学校へと向かう小学生の姿などが見られ、この街の人にとって親しみのある場所であり、地域コミュニティの象徴的存在とも言える。 そんな雑司が谷ではいま、再開発やグローバル化の影響で、子育て世代や外国人留学生などの新しい移住者が増えている。この街のコミュニティに新たな要素が加わろうとしている...
坂出人工土地再生計画―人工地盤の再定義―
0.はじめに “かたち”はいかにして残り続けていくのか。都市において病的要素になりつつある強い“かたち”を残しながらその意味を書き換えることができたら、その“かたち”は都市にとって新たな価値を与えることができるのではないか。今回の卒業設計では、日本のモダニズム建築の傑作であり失敗作でもある大高正人設計の坂出人工土地、その根幹である人工地盤という強烈なストラクチャーのみを保存対象としたうえで、都市公園とアート施設へのコンバージョンを提案する。 1.背景 坂出人工土地は大高正人が設計し、1966~86年に4期に分け建設された住居、商店街、市民ホールなどが一体となった複合施設である。2階ほどの高さに約1万平方メートルの人工地盤を造り、その上に1~4階建ての市営住宅を建てた。人工地盤の下は商店街や駐車場となっており、人口増の時代、土地不足と...