B4 櫻井です。
以下前期論文成果物になります。
1.研究の背景と目的
2003年問題以後、ビルは供給過多に陥りる一方で、ネットワーク普及に伴う働き方の多様化、ワークスタイルの変更により在宅ワーカーなどが拍車をかける結果となり、都心部ではオフィスビルの空室が問題とされている。都心部の大規模ビル供給による中小ビルからテナントを奪うような空室連鎖の影響力は大きい。また、持続可能な社会を実現するためにはスクラップアンドビルドによる考え方ではなく、コンバージョン(用途変更)などによる既存ストックをいかに活用するのかが今後の社会活動において大変重要なことと考えられる。
本研究では空室発生の要因をその地域規模でのビル郡の建築的視点から調査、分析し、他地域との比較から検討する。それによりビル郡の空室の実態を明らかにし、地域規模での問題点を理解した上で既存ストックを活用出来るような知見を得ることを目的とする。
2.調査概要
調査エリアは空室率が高い東京都千代田区神田地区と港区新橋地区を対象にする。ともにオフィスビルが多い地域となっている。
調査方法はフィールドワークをメインに行う。ビル前の看板やテナント募集等の広告を目視確認して調査する。また、建築面積、ビル形状についてはゼンリン、グーグルマップ等のデジタルマップ地図からおおよをの面積、寸法を算出する。今回共用部、コアは面積減少に含めないものとする。
主な調査内容は階数、空き室階、テナント数、建築面積とする。
3.調査結果•分析
3−1. 調査エリアのオフィス特性
調査の結果、新橋エリア約16660㎡の内、62棟がテナント貸ししているビルであった。階数として3〜7の中規模のものが多くを占めていたが、数棟8〜10の大型のビルが見受けられた。
3−2. 調査エリアの空室状況(図1、図2)
調査エリアの空室率(空フロア/テナントフロア数)は62棟を調査して結果、12.6%であった。港区の平均空室率が9.61%(12年5月現在)と比べるとやや高いエリアといえる。空室なしのビルは全体の60%を占めていた。今回調査したエリアでは空室率0以上20%以下のビルよりも20以上40%以下のビルの方が全体のビル数の8%も多いことが分かった。また、1棟だけだが全て空室となっているビルが見られた。
<図1>新橋空室率別分布 <図2>神田空室率別分布
3−3.建築的視点から見る空室率との関係
次に様々な視点から見たビル群と空室率の関係を分析する。
3−3−1.採光面数と空室率の関係
テナントにとって、採光条件は重要な要因であり、労働環境に大きく影響をもたらすものである。採光面と空室の関係を分析した結果、採光面が少ないビルの方が空室率が高い結果となった。調査の絶対数が少ないことも考えられるが、2面と3面では大きな開きは見られなかった。
<図3> 新橋採光面数別空室率グラフ
4.まとめ
新橋での空きビル群の調査を行い分析を行った結果、この地域の空きビル群と建築的視点による関係が明らかになった。また採光面での観点から推測するに、採光面の数と空室率の関係が正常であるうちは、まだこの地区のでのテナント運営が破綻していないと考えられるのではないか。これらを認識した上での既存ストックの再活用は現存する問題を解決するための指標となると考えられる。
以上になります。