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柱による空間生成に関する研究

B4の齋藤です。投稿に苦戦しました。

自分は前期に柱によって生成される空間の質に関して研究してきました。

この研究テーマを選択した理由として、

・建築の成り立ちを考えるために主要構造部に焦点を当てることが必要であること

・古代建築から近代建築までの建築技術の進化に伴い、柱の必要性、空間での在り方、構造デザインなどあらゆる領域で思考することが可能になったこと

が挙げられます。

本研究では空間生成に焦点をあてたため、柱の意味論や象徴性といった主観的な見方は必要最低限に絞っています。

研究の概要としては、

1、柱(単独)のキャラクター

2、柱(群)の配置(場の生成)

3、柱にまつわる思想

と章立てて、1では「形状・プロポーション」、「様式・意匠」に分け、2では「領域性」、「方向性」、「中心性」と分類し特性を研究しました。

3ではコルビュジエに代表される「ピロティ柱」、建築全体に影響を及ぼす「1本の柱」の2つを本研究において必要な論点とし扱うことで研究全体の質を高めることが可能となります。

各項目ごとさらに細分化し柱を空間構成の主軸としている建築を挙げていくと数多くの分類が可能となりました。次に挙げるのは主な分類結果と事例です。

1、柱(単独)のキャラクター

・「形状・プロポーション」

<十字柱>・・・バルセロナ・パヴィリオン、トゥ―ゲンハット邸、ベルリン国立美術館、MAISON E

*十字柱は構造の概念を転換させる媒体としての役割だけでなく、空間生成を多様化させるアイテムとしても利用されるといえます。

<マッシュルーム・コラム>・・・ジョンソン・ワックス本社、長沢浄水場、瞑想の森、八代ギャラリー、台湾大学図書館棟(計画)

*マッシュルーム・コラムはメタファーとしての役割、屋根と柱の一体化による上下の設備フローを流動化する役割を担うことがわかります。

<壁柱>・・・KAIT工房、ガララテーゼの集合住宅、スカイハウス、サン・カタルド墓地

*壁柱は見る角度により柱の見え方の微妙な変化が期待でき、柱の形状の中で配置方法に最も左右される形状といえます。

・「様式・意匠」

<フルーティング>・・・トニー・ガルニエ作品、オーギュスト・ペレ作品

*フルーティングは柱の表面に溝を与えることで分節化し、複数の影の集まりと重なりを付加することで自身に魅力を持たせる意匠です。

<組柱>・・・せんだいメディアテーク、タラヴァ邸、アルミニウム・フォレスト

*組柱は柱の根源的に持つ「支える」という空間的イメージを排除し、集合して単体となる柱を指します。また樹状のメタファーとしても扱われることがあります。

2、柱(群)の配置(場の生成)

・「領域性」

<部分>・・・エール大学アートギャラリー、アドラー邸、シーランチ・コンドミディアム

*部分というのは空間の輪郭と構造の単位を一致させ、ひとつの空間単位を規定する配置のこととしています。建築の部分的な見方からこのように称しています。

<全体>・・・KAIT工房、大分県立図書館

*柱によって領域分けされている空間をもつ建築を考察しています。ここではさらに「柱による空間の規定→機能の挿入」という均質空間と「機能による空間の規定→柱の配置」という不均質空間との二つに大別されます。

・「方向性」

ガララテーゼの集合住宅、リンカーンセンター、ソーク研究所

*柱廊のような2本の柱が互いに呼応し、それらが延長線上に増えていくことで得られる方向性を指します。これは「列柱と反対側が壁」の場合と、「両側の同じ位置で等間隔に列柱が続く場合」とが挙げられます。これらは建築に付属するものや建築同士をつなぐものなど外部からの視点では囲柱と深く関連付けられます。

・「中心性」

アムステルダム市立孤児院、せんだいメディアテーク

*場におかれた1本の柱が領域を作るという観点からの中心性は、中心に置くものとしての柱は強力な力をもち、人々を誘引し、滞留させ、周囲で活動させることを喚起します。

このように柱によって生まれる空間の様々なタイプを提示しました。これらのタイプを見てみると、柱を単独でみた場合と複数でみた場合との間に関係性が深い建築もあれば、どちらか一方で空間の質を決定づけている建築もあることがわかりました。

こうした柱のキャラクターと配置の関係の相互作用によってつくられていくことを考慮しながら設計をすると、新しい建築の可能性が広がることが期待できると思います。

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