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建築の曲面表現に関する基礎的研究

先日の中間発表のまとめです。全体の構成と各章から出てくる結論について、見通しを立てました。

 

 

0 序

曲面表現には多くの困難が伴うのに対して、曲面表現は依然として用いられています。曲面表現への強い欲求に対して記述していくことがこの論文のきっかけです。そこで、設計意図、素材、設計過程、実現、歴史の5つの視点から章立てをして、以下の点について明らかにし記述することを目的としています。

・曲面による空間表現の意図

・素材による曲面構成の違い

・曲面の設計過程の変化

・曲面を実現する技術

・曲面形態の変遷

 

1 曲面の空間表現

曲面の設計意図として、構造的手法、空間的手法、造形的手法、環境的手法の4つの傾向が見られます。

これらの傾向は近代以降から強く根付いているものですが、環境的手法というのが情報技術による解析結果の反映など、新しい傾向として読み取れます。

 

2 曲面と素材

曲面には、連続する滑らかな曲面である真正曲面と、直線や平面で近似して構成する擬似曲面があります。また、曲面を成すことで素材の異なる使い方を実現できるものについても触れます。この章では素材から曲面に焦点を当て、技術的側面から論考していきます。

下の図は、RC造であるE・トロハのアルヘシラスの市場(1933)と積石造であるパンテオンの断面です。初めてパンテオンと同じ規模のスパンを飛ばしたのがこのトロハの作品です。同じ規模の作品ですが、高さを抑えられないドーム構造に対して、技術的解決によって高さを抑えています。

結論として、素材の選択や曲面の構成には構造的側面が大きく関わっていることなどが考えられます。上述のような可塑性のあるコンクリートと1960年ごろからあらわれるシェル構造の関係について現在執筆中です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3 曲面の生成と記述

本章では曲面の設計プロセスについて記述します。従来の図面、模型といったツールに、コンピュータの技術が加わることで与える影響が曲面として現れているのではないかということについて論じていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでは設計過程の変化、つまり2D→3Dから3D→2Dという変化を明確にします。はじめに3Dから考え始めると、従来の図面を垂直方向に立ち上げるのと異なり、3次元的な形態をはじめに構想できます。するとうねりやねじれといった操作に足しても可能性が広がり、結果曲面という形態があらわれるのだと考えられます。

また、設計過程において意匠・構造・設備などの分野を超えて形態を生成する場合にも曲面が用いられる傾向があります。連続した空間、シェル構造、音響、空調、雨樋など、部分と全体が密接な関わりの中で均衡を保つ結果として、複雑な自由曲面を形成するということがいえるでしょう。

 

 

 

4 曲面の実現

この章では、曲面を実際に施工する際のメリット・デメリットについて記述しながら論考していく予定です。

曲面は平面に比べて、自立的な形態であるので施工性でのメリットがあります。しかしRC造の場合、曲面の型枠など、複雑な形態になるほどコスト面での負担が大きくなる問題点もあります。

施工性、生産性という枠組みの中で、セルフビルドの川合健二の自邸やシドニーオペラハウス、大桟橋などの例をもとに執筆していく予定です。

 

5 曲面の歴史的変遷

ここでははじめに曲面の形態、幾何学と自由曲面の変遷を述べます。

そして1~4章までの内容を時間軸を元に横断的に扱います。

 

 

 

 

 

曲面表現の相対的な関係を視覚化して、曲面形態の変遷と時代関係を明らかにする予定です。

各章を執筆しながらこの図を埋めていき、論文を全体的に肉付けしていこうと思います。

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