M2の山田です。
秋葉原(東京都千代田区・台東区)(写真1)は、映画の街ハリウッドやITの街シリコンバレーなどと同じように、グローバルな視点で見てもアニメやゲームの街としての世界的地位を獲得しています。ですが、公共よりも民間が圧倒的な力をもち、しかも財閥系の巨大資本ではなく、知恵とスピードで時代の波を先取りする中小の商業資本が相互に激しい競争をしながら共存してきたことや、アジアの都市に特有の新陳代謝の激しいアナーキーな様相を目の前にして、“混沌”という形容詞付きでしか語られていないのが現状であり、その成功のエッセンスを抽出することが困難な対象であるといえます。
(1)秋葉原
研究者たちはこのように、とかく“混沌”の一言で表されがちな秋葉原の様相をある側面から記述し、解読しようと試みてきました。歴史的側面からは、秋葉原の戦後史(特に企業の栄枯盛衰)を描いた「秋葉原は今」(三宅理一著、芸術新聞社)に、文化的側面からは、オタク人格の集中という観点から秋葉原を捉えようとした「趣都の誕生」(森川嘉一郎著、幻冬社)に、経済的側面からは、小野由理らの「秋葉原地域における産業集積の特徴と集積持続のメカニズムに関する研究」に明るいのでご参照ください。しかし、都市の体験者としての視点、つまり物理的な距離や配列、奥行き等を伴った「空間」として秋葉原を捉えたものはみられません。
また、実際に秋葉原に足を向けてみると、同じ看板を掲げた店舗がわずか800m四方のエリアに10店舗以上もあったり(写真2)、商業的なポテンシャルが無いに等しいとも思える立地であるにも関わらず一定の賑わいを見せていたり(写真3)と、異常とも言える空間利用の例が散見されます。
リバティー秋葉原(ホビー、ゲームソフト、CD、DVD)の立地・・・秋葉原に11店舗展開。
(2)同業種分散立地型店舗
(3)悪条件立地型店舗
そこで本研究では、秋葉原地域における空間利用形態、またその変様過程を正確に記述し、その特異性が世界都市「アキハバラ」を形成する一端を担っていることを明らかにすることによって、建築学的・都市計画学的な新たな視座を見出すことを目指します。
秋葉原のおおよその空間構成は以下の図(図4)でお分かりいただけるかと思います。暖色で示した部分が商業系のテナントです。
(4)階層別・業種別構成比(2009)
現在、2010年度の実地調査を進めています。データの整理と分析が終わり次第また記事を書きたいと思います。