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工場併用住宅における増改築と空間・社会に関する研究

修士2年の三橋です。修士研究の途中経過を報告します。

1.研究の背景
工場併用住宅は自宅と工場を兼ねた併用住宅の総称である。大田区大森南地区は、東京都の南部に位置し、工業地域の住宅地が共存する地域特性を持ち、生産の場(工業)と生活の場(住居)を共存しながらが変化してきた。住宅部分では、家族の構成やライフスタイルの変化に応じて住居スペースの拡張が求められることが多くあり、階段を利用した上階の増築や、バルコニーの新設などが挙げられ、これらは住居の快適性を向上させる要因となっている。一方で、工場部分でも増改築が行われることが多く、作業効率を高めるためのスペースの再配置や、新しい設備の導入を目的とした増築が行われている。

以上の背景から
増改築により、住工の生産性を向上させることが可能となっており、限られた敷地内の効率的な土地利用が重要な手段となっている。これら増改築には周囲の環境や建物属性が影響して行われており、現在の町並みをつくりだしているのではないか。
という仮説をたてて研究を進めています。

2.研究の目的
研究の目的は以下の三点とし、工場併用住宅の増改築がどのような背景を元に行われ、現在の街並みを形成してきたかについて、その発展と変容を明らかにすることを目的とする。
1)社会情勢の変化にともなう工場併用住宅の増改築の介入状況を明らかにすること。
2)増改築が法規制・敷地状況・周囲環境の中でどのように行われてきたか明らかにすること。
3)工場併用住宅の増改築と建物属性(建築年、機能配列、家族構成・従業員、取扱商品)の間にある相関関係を明らかにすること。

3.研究の位置付け
工場併用住宅に関する研究としてはのファサード面の類型化に関するものや、大森南地区の街並みの変遷に関する研究がされている。また、本研究は同研究室の先行研究の池上による大田区大森南地区を対象とした『工場併用住宅における住工の共存形態とその形成過程』を継続・発展させる位置付けとする。先行研究や池上の研究では工場併用住宅の機能配列の類型化が主な内容となっており、建物単体がどのような増改築を遂げてきたかについては記述不足であった。そのため本研究では工場併用住宅の増改築がどのうような意図で行われ、空間と社会背景と関係してきたかについて論じる。

4.研究の方法
研究対象は現在でも多くの工場が集積する東京都大田区を選定し、その中でも多くの工場数を確認できる大森南地区に存在する工場併用住宅191棟のうち増築28棟、改築33棟の合計61棟を対象とする。

5.研究の進捗

分析の進捗としては増改築が行われた工場併用住宅の竣工年、増改築年を元に年表の作成を行い、当時の社会背景や大田区の政策との関係性についてのまとめを行っている。増築が行われるまでの平均スパンは様々で工場者の意向が反映されやすいのに対して、改築は平均スパンが約30年程度と建物寿命に関係して行われる例や、オリンピックや東日本大震災などの震災、コロナ以降など社会情勢が反映されるタイミングで改築が行われやすい傾向が確認できた。

また、工場併用住宅の増築は28棟で確認することができたが、大きく工場部分の増築とそれ以外に分類することができる。特に工場部分以外の増築は階段・バルコニー部分を増築する事例、同一敷地の残余スペースに住宅部分を増築する事例、隣接している建物が何かしらの理由で取り壊された後の敷地に住宅部分を接続する形で増築する事例、事務所部分を増築する事例と大きく4つ分類することが可能である。増築の意図としては敷地、空間の有効活用をするためや居住環境を向上させるためといったものが確認でき、工場部分の作業効率を向上させる増築はそれほど多くなく、住環境を向上させるためのバルコニーや外部階段、小屋の増設などが多く見られた。

6.予想される結論
・大田区大森南地区内の工場併用住宅の増改築が行われるタイミングには時代背景や当時の社会情勢などが関係している。
・工場併用住宅の増改築には工場部分の作業効率を向上させる増築はそれほど多くなく、住環境を向上させるための増築が多くみられること。
・工場併用住宅の増改築の内容は竣工年や取り扱い商品、従業員の規模によって内容が異なること。

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