はじめに
現代のように人工照明が発達する以前、人間は基本的に太陽の変化のリズムにそって生活していた。暗くなるとろうそくを灯すなど、行動の様々な部分に光の変化が作用していたと考えられる。
人工照明が発達した現代では昼間から夜間に至るまで調整され安定した光の中で生活をしている。そういった環境は変化に乏しく、そこで生活をする人々の時間の感覚は、時計やテレビ・ラジオなどの周期性を持つ光以外のものによって補われている部分が少なからずあると考えられる。人工照明による採光が主流になった現在では、自然光による様相の時間的変動はあってないようなものとして扱われる場合さえある。
一方で、自然光の価値や、時間的変化が見直される動きがあるのも事実である。太陽光の変動をシミュレートした人工照明が開発され、オフィス建築などに導入される例もみられる。
時間によって変化する自然光は、建築の形態や空間に大きな影響を与える要素の一つであると考えられる。人間が建築空間において時間を知覚する要因として、光、特に自然光が大きな役割を担っていることからも、今後改めて建築の自然採光へ意識が高まるであろうことは想像に難くない。その中でも、自然光が常に変化し続けるという時間的な特性は、建築に対して変化を与える数少ない要素の内の一つである。省エネルギーや快適性などの観点から照明計画に自然光利用が見直されつつある今、自然光と時間の変化について考える事は、今後の建築設計において有用な事であると考えた。
研究目的
人工的につくられる建造物である建築は、それ自体では主立った変化をするわけではない。自然環境や人間の営みとともにあることで空間が変容し、時間という概念が付加される。特に光は、ある程度規則的な変化の周期をもち、予測が可能な要素であるといえる。本研究では光の時間的変化を設計に取り入れている作品を分析することで、自然光を用いて建築空間に時間を表現する設計手法を明らかにすることを目的とする。設計編においては論文編にて得られた知見をもとに、光と時間が空間とより密接に関係する設計を目的とする。
研究編総括
自然光によって時間を建築によって表現する事に関して、分析により以下の知見を得る事が出来た。
・ 自然光を採光するためには、開口部と受光面を一体的に操作し設計する必要がある。
・ 開口部は自然光にとって通過する対象でありいわば型枠のようであり、受光面はその像を投影するために必要な面である。自然光の変化は太陽方位の変化であるため受光面の角度の操作が空間の変化に大きな影響を及ぼすものである。
また自然光を用いて「建築的」に時間を表現する手法としては
・自然光と開口部の関係によって発生する光・影を、映像的にとらえデザインする事
・自然光の変化によって、空間内の領域など、物理的側面が変化をしていくこと
の2点が見出された。この知見をもとに、設計編においてデザインを行う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
設計編
研究編において得られた知見をもとに、設計手法を確立するとともに以下に示す提案を行う。
1.プログラム:滞在型美術館
本研究における趣旨である、自然光の変化によって引き起こされる時間の感覚は、短時間の滞在に比べ、長時間滞在する事で認知の可能性がより大きくなると考えられる。上記の理由から、本計画におけるプログラムは「滞在型美術館」とする。
2.敷地
敷地は瀬戸内海に位置する香川県小豆島池田湾フェリーターミナルから西500m程の場所に設定した。小豆島は瀬戸内海では淡路島に次ぐ2番目におおきなしまであり、その豊かな自然、様々な生物がいる島としても有名で、観光地としても人気の島である。近年開催されている瀬戸内国際芸術祭の拠点のひとつとして存在しているため、島内には芸術作品が点在している事もあげられる。
敷地は東経134.22北緯34.47の地点とした。
設計手法
設計を進めるにあたり、論文編で得られた知見を下にプロセス化し手法を組み立てる。
はじめに
現代のように人工照明が発達する以前、人間は基本的に太陽の変化のリズムにそって生活していた。暗くなるとろうそくを灯すなど、行動の様々な部分に光の変化が作用していたと考えられる。
人工照明が発達した現代では昼間から夜間に至るまで調整され安定した光の中で生活をしている。そういった環境は変化に乏しく、そこで生活をする人々の時間 の感覚は、時計やテレビ・ラジオなどの周期性を持つ光以外のものによって補われている部分が少なからずあると考えられる。人工照明による採光が主流になっ た現在では、自然光による様相の時間的変動はあってないようなものとして扱われる場合さえある。
一方で、自然光の価値や、時間的変化が見直される動きがあるのも事実である。太陽光の変動をシミュレートした人工照明が開発され、オフィス建築などに導入される例もみられる。
時間によって変化する自然光は、建築の形態や空間に大きな影響を与える要素の一つであると考えられる。人間が建築空間において時間を知覚する要因として、 光、特に自然光が大きな役割を担っていることからも、今後改めて建築の自然採光へ意識が高まるであろうことは想像に難くない。その中でも、自然光が常に変 化し続けるという時間的な特性は、建築に対して変化を与える数少ない要素の内の一つである。省エネルギーや快適性などの観点から照明計画に自然光利用が見 直されつつある今、自然光と時間の変化について考える事は、今後の建築設計において有用な事であると考えた。
研究目的
人工的につくられる建造物である建築は、それ自体では主立った変化をするわけではない。自然環境や人間の営みとともにあることで空間が変容し、時間という 概念が付加される。特に光は、ある程度規則的な変化の周期をもち、予測が可能な要素であるといえる。本研究では光の時間的変化を設計に取り入れている作品 を分析することで、自然光を用いて建築空間に時間を表現する設計手法を明らかにすることを目的とする。設計編においては論文編にて得られた知見をもとに、 光と時間が空間とより密接に関係する設計を目的とする。
研究編総括
自然光によって時間を建築によって表現する事に関して、分析により以下の知見を得る事が出来た。
・ 自然光を採光するためには、開口部と受光面を一体的に操作し設計する必要がある。
・ 開口部は自然光にとって通過する対象でありいわば型枠のようであり、受光面はその像を投影するために必要な面である。自然光の変化は太陽方位の変化であるため受光面の角度の操作が空間の変化に大きな影響を及ぼすものである。
また自然光を用いて「建築的」に時間を表現する手法としては
・自然光と開口部の関係によって発生する光・影を、映像的にとらえデザインする事
・自然光の変化によって、空間内の領域など、物理的側面が変化をしていくこと
の2点が見出された。この知見をもとに、設計編においてデザインを行う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
設計編
研究編において得られた知見をもとに、設計手法を確立するとともに以下に示す提案を行う。
・プログラム:滞在型美術館
本研究における趣旨である、自然光の変化によって引き起こされる時間の感覚は、短時間の滞在に比べ、長時間滞在する事で認知の可能性がより大きくなると考えられる。上記の理由から、本計画におけるプログラムは「滞在型美術館」とする。
・敷地
敷地は瀬戸内海に位置する香川県小豆島池田湾フェリーターミナルから西500m程の場所に設定した。小豆島は瀬戸内海では淡路島に次ぐ2番目におおきなし まであり、その豊かな自然、様々な生物がいる島としても有名で、観光地としても人気の島である。近年開催されている瀬戸内国際芸術祭の拠点のひとつとして 存在しているため、島内には芸術作品が点在している事もあげられる。
敷地は東経134.22北緯34.47の地点とした。
設計手法
設計を進めるにあたり、論文編で得られた知見を下にプロセス化し手法を組み立てる。
プレゼンテーション
結論・展望
・結論
研究・設計を通して漠然ととらえられがちである自然光と時間の関係を、太陽位置・開口面・受光面といった要素に分解し分析した事でそれらの間に相互に発生する関係性が明らかになったと考えられる。
現代において、自然環境の問題は第一にテクノロジーによって解決される問題となってきているのが現状であるがアナログな形態操作によってコントロールする事は、建築の本質的な存在意義と密接に関連していると考えられる。
時間という概念は様々な角度からの思考が可能であるため非常に奥が深い理念であると考えられるが、自然光が太陽の動きと連動して変化するものとし、それが要 因となって建築に時間を発生させると定義し研究を行った事で、時間の一つの側面が自然光によっても構築されているという事が明らかになったことは成果であ るといえる。
・展望
今回はより一般的な知見を得るため季節を限定せずに通年使用を念頭に設計を行ったため、時間と光の状態を完全に制御しきることは出来なかった。この点については、恣意的に季節を限定するかプールなどの特定の時期にしか使用されないプログラムに当てはめる事でより精度 をもった自然光と時間の関係を明らかにする事が期待出来る。