この計画では東京湾沿岸部(日の出埠頭)において老朽化した倉庫・港湾施設の建替を行い、海上を中心とした水上交通ターミナルと物流施設を計画します。水上交通ターミナルでは一般、観光客、ドライバー、ビジネスマン、周辺住人のための複合ターミナルを計画し、リサイクル物流施設においては静脈物流リサイクルを行う機能を主に新設します。
背景としては、リサイクル・リユースといった循環型経済社会への転換が急務となっている現状。物流においても、原材料を工場へ、また工場で造られた製品を消費地へといった従来の物流に対し、消費地において使用され廃棄物として取り扱われていたものを循環資源としてリサイクル関連施設へ輸送し、またリサイクル製品を再度消費地へ輸送するといった新たな物流(静脈物流)が今後増加することがあげられます。 港湾を核としたリサイクル処理施設の拠点化・効率化は再生コストの削減を計ると共に、CO2排出量が低く、低コストの海上輸送にモーダルシフトすることで輸送コストの削減が可能となりなす。
扱う静脈物流資源についてですが、現在、日本では年間約230万トンの繊維製品が廃棄物として排出されており、工業用の布としての再生利用や中古品としてのリユースは15%程度、それ以外は廃棄処理され繊維製品のリサイクルが進んでいないという現状があります。繊維製品の再生用途が広がらないことがリサイクルが進まない主な要因として挙げられ、繊維製品が私たちの生活用品として身近な存在であること、海上輸送においても長距離輸送が可能(利用可能な古着は発展途上国へ送られています)等、今回の提案に適した資源であると考えます。
では、その繊維製品をどのようにリサイクルするのか。今回は、綿に95%含まれるセルロースを、微生物や酵素を使ってバイオエタノールを生み出し、繊維リサイクルに活用するケミカルリサイクル技術を利用した工場を計画したいと思います。ブラジルや米国などでは既に、代替エネルギーとして大量生産に乗り出しており、次世代エネルギーとして注目されています。
前回のゼミで.静脈物流におけるものの流れを構築することが先決ということで、大まかな流れを示します。
まず、繊維製品の回収先は主に1:一般家庭(不要になった古着を地区ごと、あるいは団体が所定の場所で回収)、2:工場(不要となった作業服などのまとまった量が回収可能)、3:アパレル系の会社(デッドストックとなった衣料品、繊維が回収可能)の三つに分けられます。
次に、集めた資源をどのように運ぶか。都心ではトラック、地方ではコンテナによる海上輸送を行いたいと思います。そして、工場に集まった資源をバイオエタノールに転換します。
生成された燃料を使用して工場を稼動するエネルギーにあてたり、輸送(車に関しては部品の交換などの必要がなくバイオエタノールがそのまま使える商品が開発されているようです)を行ったり、ガソリン(ではないけれど)スタンドの機能を設けてもいいかも・・・
と夢は膨らみますが工場に関しては普段、体験することのない空間なだけに未知の部分が多いので、もっと内部空間に関して踏み込んだ調査が必要です。その後、必要なヴォリュームの把握を行った上で水上ターミナル、ゆりかもめ駅との接続、文化施設等、人の流れをからめながらスタディをしたいと考えています。