1.背景 御柱の街 諏訪
長野県中部・諏訪地域には御柱(おんばしら)と呼ばれる独自の文化がある。御柱とは神社の四隅に立てられたモミの巨木のことで、ご神木としての役割を持っている。御柱は6年に1度開催される御柱祭という祭りを経てご神木となり、御柱は古いものから新しいものへ更新される。御柱祭とは御柱となる樹齢150年以上のモミの木を八ヶ岳山麓から切り出し、人力で神社の境内に運ぶ諏訪大社の神事である。御柱は諏訪大社をはじめ、諏訪地域の神社や街中の小さな祠に至るまで様々な場所に見られる。
2.問題提起
御柱は御柱祭が開催されるたびに古い御柱が発生している。現在、諏訪大社の古い御柱はお守り・輪切りのオブジェクト・広場のモニュメントに加工されている。しかし諏訪地域全体で見れば御柱の有効利用はまだ進んでいない。役目を終えた御柱の新しい利用法があるのではないかと考える。
3.提案
上記の問題より御柱の新しい利用サイクルを提案する。諏訪大社の役目を終えた御柱を建築として利用し、地域に還元する。御柱を用いた建築は御柱祭が開催される毎に形状を変更して建て替えられる。建築が更新された後は、家具の造作、チップ化を経て次世代の御柱を育成する森に還元される。
4.設計
4-1 敷地
設計敷地は御柱祭のコース沿いに4か所を設定し、展望台・文化館・木材加工所・道の駅を設計する。
4-2 設計手法
諏訪大社の御柱16本を用いて設計する。4か所の建築に御柱をそれぞれ4本ずつ用い構造材として用いる。この建築の構造材はすべて御柱から切り出される。
4-3 建築
木落坂展望台:御柱祭の最大の見せ場「木落し」の敷地で、祭りの躍動感が建築のねじれに表現されている。
御柱文化館:諏訪大社の入り口付近に位置し、御柱の文化を伝える文化館と観光案内所として機能する。
木材加工所:御柱祭のコース沿いの中でも山間部に位置し、地域の林業振興と木材加工の技術を継承する場となる。
道の駅:中山道の宿場や温泉街として栄える下諏訪町の中心に位置し、地元の商業の振興を図る。
ご神木としての役目を終えた御柱が地域のポテンシャルを取り込みながら、新たな共存のあり方を提案する。