1.問題定義
私はこの卒業設計で、多国籍な街へ開かれた混住型集合住宅の設計を行いました。その設計に至ったのは私が2つのことに問題意識を感じているからです。
1つは、近年外国人人口が増加していますが、彼らのコミュニティ形成の環境は未熟であることです。同じ文化の人、同じ国の人で集まりやすく、他国の人や日本人との間に壁が生まれているように感じます。
2つめは、これからの集合住宅に在り方についてです。近年、核家族の形成によりできた家族単位を重んじる住居からシェアハウスのような第3者との交流を誘発する住居ができました、しかしそれらもコミュニティは住居内に収められ外に対しては閉じられています。私は集合住宅が街に対しても開かれたコミュニティを持つ必要があると考えます。
以上の問題から、外国人の方が様々な国の人とも関われ、広く交流を持てるようなまちづくりのきっかけとして外部に開かれた集合住宅を提案します。
2.敷地
敷地は日本有数のエスニックタウンである新大久保を設定しています。独特の町並みを持ち、様々な国の人が生活をし、日本人も多く訪れる海外と日本が交流を持つ街です。この街に多国籍な交流を持つことと街へ開くことのヒントがあると考えました。
新大久保は、商業と住戸が身近であること、小さなボリュームの集合で路地がたくさん生まれること、街へはみ出すお店やベンチのように機能が外部にはみ出していることが特徴であると考え、私はこれらを設計に落とし込みました。
3.設計
新大久保の周りのボリュームに合わせ、圧迫感のないよう、小さなボリュームの集合した形態を作りました。また、多孔質であるため、多くの小さな外部空間や路地が生まれます。外部空間や路地はテラスであったり動線であったり様々な用途を持ちます。
敷地は通り沿いに商店が並んでいるため、建物内に留まらせるのではなく建物と敷地外を循環できるように動線を考え、1F部分は分棟な形態となりました。
それらの分棟は全てにコアはないため、2F以上はコアのある棟へ動線を伸ばしながら徐々に全てが繋がるように設計を行いました。
また、採光、通風、建蔽率を考慮し、光のボイドを挿入しました。光のボイドは階ごとに徐々に形を変え、テラスを形成したり、テラスの屋根を形成します。
4.まとめ
街へ対して共有スペースを開き、生活の一部を住民や外部の人と共有することによって、同じ国や文化の中でまとまることなく、様々な人と関わるきっかけを作ることができ、新しいコミュニティ形成を誘発できる空間ができるのだと思います。