B4柳井です。2021年春学期に取り組んだ研究内容について発表いたします。
1研究の背景と目的
都市の表と裏は何から生まれてくるのであろうか。人間が創り出す空間である以上そこに差異が生まれてくると思う。通常、都市における表と裏はいかなるものであろうか。例えば、銀座のように整然と計画された繁華街では幅員の大きな幹線道路に面して隙間なく街区の壁面線がそろっており、こうした都市では「表」に「裏」が表出することはまずない。そこで、渋谷の都市に着目してみると表と裏が分かりにくく、表にいたのにいつのまにか裏にいたという現象、それに加え、唐突に裏が表出した部分が発見される。人が溢れている表の空間からすぐに人の少ない裏の空間にいけるのは非常に魅力的だ。渋谷の表と裏の関係は実在するが、そこにモザイク状の抽象性がある。そのモザイク状の抽象性を暴く武器として配管を用いる。
本研究では仮に配管を都市の「裏」を示す目印として扱ってみる。渋谷の都市を配管というミクロな視点で見ていくことで最終的にマクロな都市構造を記述することが目的である。
2研究対象と研究方法
本研究で対象とするのは、銀座駅周辺と渋谷道玄坂エリアの250m角とする。配管が表出している場所、しまわれている場所、配管の目視で確認できる範囲を対象地域の渋谷駅周辺と銀座駅周辺にマッピングし、比較する。次に渋谷駅周辺の道路をナンバリングし、それぞれの道路別に配管の表出度(裏面率=配管の出ている面÷道路の面×100)をだし、比較する。最後にその道路別で幅員と裏面率の関係を明らかにする。
図2-1銀座駅周辺の調査対象地域
図2-2渋谷道玄坂エリアの調査対象地域
3配管のマッピング
対象地域の銀座駅周辺と渋谷道玄坂エリアの配管マッピング図を図3-1、図3-2に示す。配管が道路に表出している建物の面を着彩したものが図3-3、図3-4である。ここで、道路に表出している配管を表化配管とする。
図3-1銀座駅周辺の配管
図3-2渋谷道玄坂エリアの配管
配管の面の表出
図3-3銀座駅周辺の表化配管
図3-4渋谷道玄坂エリアの表化配管
図3-3、図3-4表化配管の多さは一目瞭然であり、銀座駅周辺より渋谷駅周辺の方が圧倒的に多い。このことから渋谷駅周辺は配管の表出が多く、本来裏の要素の配管がここまで出ていることは特殊的であると言える。
4銀座駅周辺、渋谷道玄坂エリアの道路別にみた裏面率
銀座駅周辺の特徴として、道路に表出する配管はほぼない。その代わりに街区の内側に配管が集結されており、その空間は人が通れる空間となっている場所が多々ある。
図4-1銀座駅周辺の道路別にみた裏面率
表4-2.銀座駅周辺の各道路の幅員と裏面率
渋谷道玄坂エリアでは道路数が多く、裏面率が大きい道路が表4-4から読み取れる。
図4-3 渋谷駅道玄坂エリアの道路別にみた裏面率
表4-4.渋谷道玄坂エリア各道路の幅員と裏面率
5道路の幅員と裏面率
図5-1道路の幅員と裏面率の関係図
表5-2.幅員と裏面率の関係図
幅員の狭い道路は裏面率が大きくなっているが、注目する場所は他にあり、裏面率が0の道路が30本中5本という少なさであることと、幅員が6m以上の配管が存在する道路は計9本あるということである。
考察
渋谷道玄坂エリアの都市構造としてメイン通りに対しては配管の露出は多々見られるが、やはりしまうという傾向が見られる。特に大通りに接続する道路は裏面率の数値が大きくなっていることが挙げられる。建物用途からの分析でも複合施設が大通りに多く立ち並ぶ。その複合施設の配管が大通り(主に車通行が存在する場所)に接続する道路に現れていることが分かる。配管を軽視している点と商業的観点からの考えが大きくメイン通りに配管を出さないということだけに注意がいかなかったのではなかろうか。
図5-3建物用途と裏面率
6.総括と展望
本研究では渋谷駅周辺の配管について調査検討した。得られた主な結果を以下にまとめる。
・渋谷道玄坂エリアでは配管が道路に表出され、本来裏である要素が反転していることが分かる。また、銀座駅周辺と比較することでそのことが明確化された。
裏面率が小さいところでも図6のように配管が多くみられるという道が多くみられる。今回の研究では平面的にしか研究できていないが、立体的に配管認識量などを研究したいと思う。
図6渋谷道玄坂エリアの調査対象地域のaの道
参考文献
1)加藤慎也、中島伸:渋谷桜丘町のファサードと道路の関係
2)小林茂雄:都市の街路に描かれる落書きの分布と特徴:渋谷駅周辺の建物シャッターに対する落書き被害から
3)柳澤明日香、高見沢実、野原卓、和多治、青木伊知郎:原宿・表参道における表裏性と街の魅力に関する考察
4)進藤遼太郎、南泰裕:東京の商業空間における表裏性に関する研究:代官山・原宿・秋葉原を通して
5)槇文彦:記憶の形象:都市と建築との間で
6)門脇耕三:都市文化の現在地-都市における新しい「ウラ」の誕生10+1website
7)山内章大、両角光男、位寄和久、本間里見:通り空間における歩行者の裏通りへの侵入と注目要素の関係分析:都市空間における来訪者の回遊行動と空間認知に関する研究
8)槇文彦:見えがくれする都市:江戸から東京へ