序.はじめに
近年の住宅における単位空間の分節・結合方法とは視覚的にも物理的にも幾多にものぼり、様々な住宅の形を生み出す要因になっている。常に新しい形での、「住まい方」や「使い方」を求められる「住宅」において、空間同士の分節・結合の方法に関してどのような提案ができるのかを考えてみる。このことに際し、今日までの「住宅」における、単位空間の配置から空間の分節・結合方法についてどのような空間構成の変遷が見られてきたのかを解明すべきであると考える。その住宅設計の手法においてフランク・ロイド・ライトの住宅建築に焦点をあて、実際の空間の分節と結合手法の変遷とライトが提言する「有機的建築」との結びつきの考察を本研究の目的とする。
1.研究の対象
ライトの表現してきたプレイリーハウスという住宅は「有機的建築」と称される建築群の始まりとされるもので、豊かな自然における多様と統一を自然に倣う形で表されてものである。大地を抱擁し、自然を覆う低く大きな屋根と大きな空間が特徴的な家であり、その特徴として「相似な平面構成」が挙げられる。そこで、これらのプレイリーハウスの同一性と差異を示すことにより、ライトの提言してきた「有機的建築」を構成する、空間の分節・結合手法を解明するものとする。本研究で取り上げる住宅作品はライト設計のプレイリーハウスにおける6つの提言(1:部屋,2:開口,3:装飾,4:設備,5:絵画,6:造り付け家具)として挙げられる6つの住宅に絞るものとする。
2.研究の方法
2-1.平面・断面における空間配列のダイアグラム化
各住宅作品の具体的な分節・結合の手法の分類のために、まず、単位空間の配列を可視化する。その際にライトの「有機的建築」にとって重要な外部空間との結びつきまでダイアグラムに含めるものとする。ダイアグラムはダイアグラムA,B,Cの3種類を用いるものとする。
ダイアグラムAは外部空間、半外部空間、内部空間のつながり方を表すもので、ライトが半外部空間を通じてどのように住宅と敷地を繋いだのかを明確にするためのものとする。ダイグラムB,Cは平面・断面的にみた空間配列のダイアグラムであり、2-2以降で述べる具体的な空間の分節・結合手法の分類の際に使用するものとすると同時に、ライトがどのような空間を敷地(自然)に対して繋げようとしていたのかを明確にするものとする。
2-2.分節と結合の手段の分類
2-1で可視化された空間同士の接続部分について1つ1つ空間の分節・結合の手法を分析する。ここで分節とはもとは1つだったものをなんらかの手法で2つに分けたものを、結合とはもとは別々の2つ以上だったものをなんらかの手法で1つにつなげたものを指すものと定義する。分節・結合の分類の中で判定が不可能になることもありあるが、この定義のもとに各空間の接続部分の分析を6つの住宅の全ての接続部分で行い、実際の手法をダイグラムで可視化、各住宅で用いられている、分節・結合の手段を表にまとめる。
結.まとめと展望
以上の分析と分類を行うことにより、ライトの提言している「有機的建築」の変遷を単位空間の配置や空間の分節と結合の具体的手法の側面より読み取れることが予測される。実際の手法により、ライト自身がどのような空間体験を打ち出そうとしていたのかを考察することも可能だと考えられる。本研究より、これからの住宅建築における新しい住まい方の提案の足がかりがつかめることを期待する。
以上になります。今後は「分節と結合」の考え方を明確にし、ライトの各住宅についての分析を進めていきます