1.背景
現在一世帯あたりの人員は減少傾向にあり、世帯人員が一人の世帯が約4 割を占めている。かつて社会- 家族- 個人であった社会構造は社会- 個人へと変化した。その中で今まで家族というコミュニティで補っていた暮らしの中の相互扶助は家族の欠落により困難となった。また核家族を閉じ込めていた住宅は今度は個人を閉じ込めるようになったために、孤独死等の問題が生じている。つまり、家族を前提とした社会と家族がいない現実との間にずれが生じている。そこで家族に代わる個人の集まりによるコミュニティの編成が提言された。
2.設計主旨
シェアハウスやコレクティブハウスとは違う、ありのままの心地よい人間関係を築けるような個人が集まる集合住宅を目指し設計に取り組んだ。具体的にはコモンスペースとは強制的に関わる関係でないことや、物理的距離の近さではなく社会的距離の近さゆえ集まることなど本来の人間関係の築き方を取り入れた。これらを達成するために、
①社会-個室-コモンスペースという領域順序
②個室を「個室化した車」と置き換える
といった手法を用いることにした。
3.設計物
車を多く入れるための大きな体積、スロープ、車路が必要であり、飲食店やトイレ、シャワー等も必要である。そこでこれらの要素をすべて持ち合わせる球技専用スタジアムといった要素と合わせることにより、複数用途を持たせると同時にそれぞれの要素を外部化した。