B4菊池です。
以下、前期研究発表会時における前期小論文の成果です。
1 序論
1.1 研究の背景
1.1.1 公共団地の現在
日本の公共団地は、1955年以降住宅公団の設立以来、大量の住宅ストックを確保するために、合理性による画一化とともに建設された集合住宅である。現在では建築物の老朽化に加え、少子高齢化に伴う住民の高齢化、団地内での新規入居者の減少による代謝不良、空室率の増加など、団地の建築物と周辺環境の形骸化が問題となっている。
1.1.2 コンピューテーショナルデザインの現在
近年のコンピュータ技術やデジタルファブリケーション技術の発展により、建築の分野においてもより複雑なシミュレーションや形態の生成が可能となっている。また、コンピュータツール(CAD)としてだけではなく、建築や都市の問題を解決するプログラミングとしての論証を用いたアルゴリズミック・デザインの理論の有用性とその活用が進んで来ている。
1.2 研究の目的
「現在の公共団地の諸問題に対し設計者が建築的解決を試みる際、コンピューテーショナルデザインという手法が、設計過程においてより効率的かつ多面的に諸問題を解決しうること」を示すことが本論の目的である。
1.3 研究の手法
現在の公共団地の諸問題に対し、実際に敷地を想定したケーススタディを通し建築的解決を展開、その過程にアルゴリズミック・デザインを用いることとした。その設計過程における、形態の生成から発展過程までを記録、記述していく。具体的に実施コンペに乗っ取ったケーススタディとし、アルゴリズミックデザインに対しては3Dモデリングソフトの「Rhinoceros」とそのプラグインソフト「Grasshopper」を用いて設計を進めることとする。
2 公共団地について(仮)
3 アルゴリズミックデザインについて(仮)
4 設計提案
4.1 設計条件
4.1.1 設計要項
建築設計に取り組むにあたって、住空間ecoデザインコンペティション2012(※)の要項に従う。これは2.4m立法の空間に収まる、実施を前提とした建築空間を構成する形式であり、「サステイナブルな空間」と「近隣住民のコミュニケーション空間」というキーワードを主軸として提案するものである。計画のみならずサイズ、構造などの実際的な条件を同時的にアルゴリズミックデザインで扱うという前提を課すことを意図して設定した。
4.1.2 対象敷地・現状
敷地対象を神奈川県川崎市西三田団地に設定した。「団地の建築物と周辺環境の形骸化」に注目、共用エントランス部分に焦点を当て、設計提案を行う。この西三田団地周辺は、公園や街路など豊かな自然環境を周辺に有する反面、共用部における駐輪場の整備不良などが見られ、上記の問題を引き起こしている。
4.2 空間の生成
公共団地の周辺環境を取り込み、かつ近隣住民とのコミュニティの活性化を促す空間生成を行う。駐輪場の用途に沿った曲面が連続し、3次元曲面を生成する形態とその内部での曲面の変化によって空間変化を目指す。
4.3 構造の生成
素材を木合板とし、それが連続する、ルーバー状の、極力構築の容易な構造躯体を生成することを目指す。
5 スタディプロセス
5.1 空間生成のスタディプロセス(図1)
(図1 基本形態生成とそのアルゴリズム)
3Dモデリングソフト「Rhinoceros」とそのプラグインソフト「Grasshopper」を用いて、目的とする空間生成のスタディを行い、解決までのプロセスを記述してゆく。
5.2 構造生成のスタディプロセス(図2)
(図2 構造生成とそのアルゴリズム)
目的とする空間を実現させるための実施を目的とした構造躯体を生成するまでのプロセスを記述してゆく。
6 結論
6.1 総括
アルゴリズミックデザインによって理論的なプロセスの構築が可能で、設計者の思考パターンを合理性を持ってコンピュータの手法に投影すること可能である。ケーススタディより公共団地の諸問題に対し設計者が建築的解決を試みる際、効率的かつ多面的に諸問題を解決し形態を得る手法として有用であることが示された。
6.2 展望
現在の公共団地の現状を調査・分析し、その情報を投影することで、より有効に解決へのプロセスを踏むことが出来るのではないか。
(※ecoデザインコンペティション出展作品ボード)
前期研究発表会を通じての今後の課題として、対象となる西三田団地の現状の把握、それを投影したアルゴリズミック・デザインを用いることによるデザイプロセスのさらなる展開とその記述に取り組んでゆきます。
以上です。