You are here: Home // サステナブル・デザイン // サステナブル集合住宅の風環境計画に関する研究

サステナブル集合住宅の風環境計画に関する研究

B4の丸山です。前期の研究ではサステナブル集合住宅の風環境計画に関する研究を行いました。研究テーマが定まるまでに時間がかかってしまい一時はどうなることかと思いましたが、一応形になって本当によかったです。大河内先生をはじめ、先輩方ご指導ありがとうございました。以下に論文の一部の要約を載せさせていただきます。


1.序論

1.1研究の目的と背景

 サステナブル建築とは、建築物のライフサイクルを通して省エネルギーや省資源などのエコロジカルな視点と、人間の生活の質の向上という両者を満たすことができる建築物をいう。今日の日本では3月11日に起きた東日本大震災や福島原発事故による原子力エネルギーの是非論争などからエネルギーの使用について強い関心が持たれ、建築がライフサイクルを通じて影響を及ぼす環境負荷に対して配慮することは必要不可欠なことだと考えられる。また、その為には建築内で消費するエネルギーを最小限に抑え、自然エネルギーを抑制・制御(コントロール)・利用することは非常に有用なことであり、それらをもたらす形態を持った建築を生成することは地球環境に貢献する新たな設計手法を生み出す可能性を持つと考えられる。本研究では、集合住宅というプログラムに着目してそのような自然エネルギーを有効利用したサステナブル建築の中でも主に風エネルギーを有効利用した建築の形態について調査・分析し、その手法や技術に関して考察したい。

1.2研究の対象

 風エネルギーを建築的工夫によってパッシブ利用をしている建築に着目し、その建築的形態を調査する。



 対象を収集する参考として、新建築、日経アーキテクチュアなど建築系雑誌を主として参照した。また、その建築的工夫の主となる部分によって、対象とする建築を以下の2つの項目に分類し考察することとする。対象の目録を以下に示す。

A 外部の風環境に配慮した建築

No.

建築名称

2-1

エコビレッジ松戸

2-2

沖縄県営平良団地低層棟

2-3

中新田町営並柳住宅(HOPE計画)

2-4

にじのもりハウス

2-5

美祢・来福台県営住宅

2-6

スペースブロックハノイモデル

B 内部の風環境に配慮した建築

No.

建築名称

3-1

伊豆・脱化学物質コミュニティー

3-2

fw bldg.

3-3

風の社



2.外部の風環境に配慮した建築

 調査をもとに建築の外部空間の風環境に配慮する上で重要だと思われる要素を調査をもとに比較検討しながら分析する。

2.1 配置計画

 

 外部空間の風環境に関して考えたとき、季節ごとの風向きを考えて配置計画を工夫することは非常に有効である。エコビレッジ松戸(2-1)や沖縄県営平良団地低層棟(2-2)では、配置に関しては季節ごとの風向きを考え、夏は住戸全体に風通しが良いように計画し、また建物の影や樹木のなどを利用して風を冷やすような仕組みをつくること、また冬は冷たい風が直接住棟に当たらないように向きを計画したりすることが有効であるようである。ただし、これは建築面積に対して敷地面積に余裕があるときに有効な手段であるように推察される。

(左図)エコビレッジ松戸構成概略図/(右図)沖縄県営平良団地低層棟構成概略図


    

2.2 空隙をつくる


 2.1で取り上げた建築のように敷地面積に余裕のある場合や周囲が極端に建物に囲まれていたり特殊な敷地条件でない場合は配置計画が有効であるが、その他の場合は単純な配置の工夫だけではすべての住戸に風通しのいい環境を提供できない場合がある。その場合、にじのもりハウス(2-4)の風道やスペースブロックハノイモデル(2-6)のように空隙をちりばめることで風の通り道を確保してあげることが有効である。また、中新田町営並柳住宅(HOPE計画)(2-3)においても路地空間を住戸と住戸の間につくりだすことによって風の通り道を確保している例である。

(左図)スペースブロックハノイもモデル平面図/(右図)にじのもりハウスの風道


  

2.3 植栽を計画する


 風環境を計画する上で植栽を利用することも多い。エコビレッジ松戸(2-1)では夏の季節風の風上に植栽を計画することで夏は風が植栽の中を通って冷やされてから住戸に届くように計画されている。また、中新田町営並柳住宅(HOPE計画)(2-3)では植栽を敷地特有の地吹雪を防ぐために屋九根という防風林して計画している。このように、建築の形態のみならず植栽を合わせて計画することは良好な風環境を計画する上で有効な手段であると考えられる。

(左図)エコビレッジ松戸の植栽計画/(右図)中新田町営並柳住宅(HOPE計画)の植栽計画

  



3.内部の風環境に配慮した建築

 調査をもとに建築の内部空間の風環境に配慮する上で重要だと思われる要素を調査をもとに比較検討しながら分析する。

3.1 開口計画

 内部空間の風環境を決定付けるのは主に開口の位置関係である。伊豆・脱化学物質コミュニティー(3-1)や風の社(3-3)では風を取り入れる開口からそれを逃がす開口までの風の流れを意識して計画している。また伊豆・脱化学物質コミュニティー(3-1)では特に、化学物質の発生危険度別にゾーンをわけ、他のゾーンにその風が循環しないようにそのゾーン内での風の流れを工夫しているところが興味深い。

(左図)伊豆・脱化学物質コミュニティーの開口計画/(右図)風の社の風の流れ概念図


3.2 開口の位置

 また、開口の位置を壁のどの位置に取り付けるかもまた、換気の面において重要な点である。伊豆・脱化学物質コミュニティー(3-1)ではトイレなどにおいを発生する室における開口を低い位置に取り付けることで効果的に換気を向上させる工夫をしている。また、fw bldg.(3-2)では採光のための開口とは区別して通風・換気のためにスリット状の引き違いの開口をとることによって効果的に自然通風・換気・排煙などを行っている。


4.結論

4.1 総括

 自然エネルギーである風エネルギーを有効利用したサステナブル集合住宅の事例は現時点では多くないように感じた。また、その多くが建築を取り巻く外部空間の風環境に配慮したものであり、建築内部の風環境に対する提案に関してはあまり積極的な提案が少なく、またイメージの域を超えていないように感じた。それは、風というものが目視できるものではなく、季節や日によっても多様に変化し得るものであることが原因としてあげられるのではないかと思う。しかし、近年のコンピューター技術の発展からCFD解析などによってその目視できない風というものをシュミレーションという形で把握することが可能となった。これは非常に革新的な進歩であると感じる。私たちは敷地特性というとその敷地周辺の街並や用途など目に見えるものだけを論じてしまいがちであるが、今後はそのような目には見えない、しかし人がその建築内で活動する上で非常に身近な要素である風環境による敷地の特性などを積極的に考えていくことが必要であると感じたと同時に、それが新たな設計手法を生み出すことに繋がっていくのではないかと感じた。

 


以上です。後期もご指導よろしくお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Copyright © 2021 OKOLAB.net. All rights reserved.