B4の崎山です。夏季に発表を行った論文について簡単に記述させていただきます。
1.序論
1-1.研究の背景
吉祥寺駅北口には複数の商店街が存在している。その商店街の内、サンロード商店街とダイヤ街の2つの商店街にはアーケードが架かっており、このエリア一帯を領域づける役割を果たしている。
古くからの店がまだ多く存在する商店街を衰退化させることなく成長させてきたアーケードは、今や全国的に数少ないものとなっており、サンロードとダイヤ街は活性化しているアーケード商店街としては貴重な存在である。また、アーケードの有用性が疑われる中で、この2つのアーケードは吉祥寺駅北口の重要なシンボルとなっており、無くてはならない存在として認識されている。そして開閉式天井が用いられているところから、単に屋根や天井としての役割をアーケードに見出している訳では無いことがわかる。アーケードによる都市空間の室内化は、閉じたものから開いたものへと変化している。
1-2.研究の目的
サンロード商店街とダイヤ街商店街のアーケードを分析し、2つのアーケードの形成過程を明らかにする。
またその結果から、現代に求められるアーケードの特徴を明らかにする。
2.調査概要
2-1.研究の対象・方法
サンロード商店街とダイヤ街の2つの商店街を対象としアーケード設置当初から現在までの変遷を追う。
調査方法としては、商店街組合へのヒアリング調査と資料調達、武蔵野市からの資料調達を行う。
2-2.調査項目
(ⅰ)サンロード商店街 (ⅱ)ダイヤ街商店街
・商店街の概要 ・商店街の概要
・商店街の歴史 ・商店街の歴史
・過去のアーケード ・過去のアーケード
・現在のアーケード ・現在のアーケード
3.サンロード商店街の形成過程
3-1.サンロード商店街の概要
サンロード商店街とは、吉祥寺駅北口ロータリーから五日市街道へ至る約300mの商店街である。吉祥寺のメインストリートとしての機能を持つ。
3-2.サンロード商店街の歴史
(ⅰ)吉祥寺北口商店街の誕生
1958年6月に吉祥寺駅前通商店会が発足し、サンロード商店街の前身である「吉祥寺駅北口商店街」が誕生した。
(ⅱ)初代アーケードの完成
1968年にアーケード研究委員会が発足し、1971年11月に初代アーケード完成と共に「サンロード商店街」と名を改める。
(ⅲ)新アーケードの完成
初代アーケード建設時からの念願であった「本町新道上に屋根を架ける事」を第一目標に新アーケードの架け替えが2004年に行われた。
3-3.サンロード商店街のアーケード
3-3-1.過去のアーケード
初代アーケードは1971年11月に完成した。
その後、1975年5月に本町新道歩道上に天蓋が付設され(第二期工事)、1988年5月にアーケード全面改装工事完成(第三期工事)、1992年3月にアーケード両入り口にカマボコ天井の照明工事が着手された(第四期工事)。
3-3-2.現在のアーケード
アーケードの天蓋にはテフロン膜を採用。昼は自然光を柔らかく透してアーケード内部を明るくすることができる。このテフロン膜を張ったパイプフレームのユニットが「フラップ」で、電動により開閉する。晴れの日には開いて、日光や風を直接取り入れることができる。
さらにアーケードを演出空間として創りあげる装置としての機能を持っており、屋根の天幕を映像スクリーンにするなどの特徴あるアーケードになっている。
4.ダイヤ街商店街の形成過程
4-1.ダイヤ街商店街の概要
ダイヤ街商店街とは、吉祥寺駅北口にT字状に存在し、East zone・West zone・South zone・Domeの4領域から成る商店街である。
4-2.ダイヤ街商店街の歴史
(ⅰ)ダイヤ街の誕生
1953年に吉祥寺地区最初のアーケード商店街として袋小路状の商店街が現在のSouth zoneで誕生した。
(ⅱ)ダイヤ街の拡大
1961年に、当時は「仲町通り」と呼ばれていた現在のEast zone / West zoneとダイヤ街(現South zone)が統合される。それを機に、ダイヤ街を「ダイヤ街ローズナード」、仲町通りを「ダイヤ街チェリーナード」とした。
(ⅲ)東急百貨店の開店
1974年にダイヤ街チェリーナードは「ダイヤ街・東急チェリーナード」と名を改め、アーケードが完成する。
(ⅳ)現在のダイヤ街の誕生
2009年のアーケード架け替え工事で、ローズナードとチェリーナードは「ダイヤ街」と名前を統一し、今のダイヤ街が誕生した。そしてローズナードをSouth Zone、チェリーナードをEast Zone・West Zone、East ZoneとSouth Zoneの間をDomeと4つにゾーニングをした。
4-3.ダイヤ街商店街のアーケード
4-3-1.過去のアーケード
1974年に完成した旧東急チェリーナードのアーケードは開閉式で、青空を臨むことができた。
また、旧東急チェリーナードの一部のアーケードが分断されている箇所(現在のDome)があったため、来訪者にとって雨天の日などは不便であった。
4-3-2.現在のアーケード
天井には光触媒のポリカーボネート樹脂板を使用しているため、晴天時には青空が見える。水が表面で水滴とはならずそのまま流れ落ちる自己洗浄機能によって、雨水などが流れることにより表面が洗浄される。
照明にLEDを導入し、使用電力は全体で1時間あたり1.6625Kwと省エネにも役立っている。
5.分析
5-1.過去と現在のアーケードの比較
5-1-1.サンロードにおける比較
初代は雨風を防ぐための屋根として架けられたアーケードであったが、架け替え時に求められたアーケードは参加型祝祭空間を作り出すためのアーケードであり、開閉型フラップの導入で閉め切っていた屋根を天候によって開閉することが可能な点や、天井をスクリーンとして利用出来る点など、旧アーケードとの違いが著しく、目標や目的が変化していることがわかる。
5-1-2.ダイヤ街における比較
アーケードを開閉式アーケードとすることによって、日光を取り入れるようになった点や、天井高が高くすることによって閉鎖的な空間から開放的な空間へと変化した点、また照明にLEDを導入した点などから、明るさを取り入れることに重点を置くようになったことがわかる。
6.結論
6-1.総括
(ⅰ)途切れていた部分を無くし、アーケードを一つに統一している点。(ⅱ)開閉式アーケードを用いている点。(ⅲ)照明にLEDを利用している点。(ⅳ)天井にポリカーボネート板を利用している点。
と、4つの共通項が双方のアーケードから得られた。
6-2.展望
現代において求められるアーケードとは、単に都市の室内化を図るだけでなく、都市の中庭のような、新たなインフラとして機能し得るものであるといえる。
アーケードは、人間の新たな生活基盤を作り出すことのできる有用な装置であるといえるだろう。