大河内研究室B4の林颯生です。前期研究の内容について投稿します。
1.序論
研究の背景と目的
新宿区は外国人登録者が最も多い街である。その中でも様々な人々が居住している新大久保はマルチエスニックタウンと呼ばれている。横浜市にある中華街に代表される様に単一の異文化がある地域で発展することは珍しいことではない。しかし新大久保の様に多国籍の文化が同一敷地内で発展しているケースは珍しいことと言える。実際に新大久保の中では、異なる文化や宗教を持つテナントが隣接して展開していること、一つのビルの同一階または上下階混在していることなど、他では見ることのない空間利用の例が見られる。これらの要因からアジア圏特有の、道に様々な看板がせり出す雑多な表情が構成されている。それはある種、街の魅力であるといえる。しかしこのような様相は、一般にカオス的状況として理解が踏み入らない状態で止まっている。
新大久保地域では一見無秩序な構成を取っている様に見られるが、国籍ごとの住み分けが曖昧ゆえに近隣関係の考慮なしに構成されているとは考えにくい。本研究は、店舗立体的混在度を国籍・業種別に調査を行い、過去の研究と比較し2012年の新大久保周辺の現状把握と変容を見る。その上で秩序を見出すことを目的とする。
2.研究方法
2-1. 調査対象
調査対象範囲は、外国籍を背景とした商業施設の立地が目立つJR山手線新大久保駅中心とし、北を大久保通り南を職安通り、東を明治通り西を中央線、それぞれ境界とする。さらに職安通りの南側に接道している所も+αで加える。住居表示としては、新宿区大久保1丁目、2丁目、百人町1丁目、2丁目である。
2-2. 調査方法
大久保地域の多国籍混在度の調査として、本論では目視による観察を行う。対象地域内の商業地域を全数調査、外観目視により日本以外の国籍を背景とする店舗と空き家をあらかじめ用意した調査シートに記入していく。流れとしては以下の通りである。
❶対象地域でフィールドワークを行い、各階ごとの用途を調査、記録しデータシートを作成する。
❷その結果を国籍ごと、業種ごとにそれぞれ色分けし地図上に可視化する。
❸作成した地図を観察し、そこから法則性や傾向を見出す。
調査用のデータシートの内容としては、
①建物ID
②国籍
③業種の三つである。
①に関しては2011年度に行われた前研究のものを踏襲し作成。さらに、国内地図メーカー「ゼンリン」の最新地図を参考に2012年版に改修したものとする。
②と③に関しては表に出ている看板、店舗が取り扱っている商品、さらには内装の使用言語から判断するものとする。
3.調査結果の可視化
3-1. 作図
習得したデータをもとに大久保地域の最新の国籍別・業種別に色分けし分布図を作成する。一つのビルの同一階に二つの異なる国籍や業種が存在するときその建物を分布図上ではテナントの数に応じて分割して表記する。そのため分布図の床面積は正確なものではないこととする。
3-2. 階層ごとに見た構成比と平面的分布
作図した分布図をもとに階層ごとに見た構成比と平面的分布状況を作成する。平面的分布図はレイヤー化し立体的に見るための準備とする。
4.考察
4-1. 業種別に見た分布パターン
3章で作成した分布図を使用し、対象敷地全体での業種別パターンを読む。大久保通り近辺、コリアンタウンでは飲食店が集中して配置されていることが予想される。また女性向けコスメ商品が街頭販売されていることが特徴でもある。
4-2. 国籍別に見た分布パターン
3章で作成した分布図を使用し、対象敷地全体での国籍別パターンを読む。大久保通りに接道している部分、イケメン通りから大使館付近では韓国系店舗が占める。また空き地、駐車場での出店系店舗に変化が見られる。
4-3. 分布パターンの立体的変容
韓国系テナントの勢力拡大に伴い、接道している1F、B1よりz軸での変容が見られる。
4-4. 全体の傾向
建物の建て替えは多くはないがテナントの入れ替わりの頻度は高いので、刻々と街の様相は変化している。特に近年の大久保地域は第二次韓流ブームの影響により変容が著しい。
5.結論
5-1. 総括
3章、4章から言えること総括する。料理やK-pop等の文化が定着しつつある日本の中の、この多文化都市でどのように変容が起きているのか。
5-2. 展望
商品が路地空間に置かれていたり、店舗外に客引き用に多くの店員が出ていることが特徴的である。多文化でない都市でも似たような都市の構成は竹下通りなどでも見られる。それらの例とも細かな比較研究を行えれば更なるカオス的状況の理解になり、新大久保の特殊性がさらに浮き彫りになるのではないかと思う。