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木造住宅密集地における住民参加型住宅の設計手法に関する研究 -東京都中央区月島地区の建て替えをケーススタディとして-

修士二年の小林です。前期までの修士研究の成果を報告致します。

 

論文編

序章

0-1.研究の背景

日本における戦後の風景は、高度経済成長期や都市化・工業化・グローバル化に伴う生活様式の変化によって更新され続けてきた。欧米諸国の都市の風景変化は既存の保存修復を行い、それらを維持しつつ更新を行ってきたのに対して、日本の都市は既存の町並みをあまり考慮せずに更新してきているように思える。例えば、マンションのような高密集合住宅は土地の効率や資産価値が重視され、既成市街地において住宅の形態変化・街の構造の変化・生活環境の破壊などの問題が生じるケースが多々ある。(図1)

また、2004年に公布された景観法によって各地で景観形成の取り組みが進んでいったが、歴史都市を中心とする、地域のランドマークとなりうるような特徴的な景観の保全が主流となってしまっている。(図2)

図1、2

0-2.研究の目的

都心部には都心部の、郊外には郊外の特有の街並みが存在しており、後世に継承すべき空間像がそれぞれに存在すると考える。

本研究では近い将来に都市更新が行われる可能性が非常に高い木造住宅密集地に着目し、残すべき空間像を明確にし、現代建築に置き換えて都市空間を継承するやり方を提示することを目的とする。

0-3.研究方法と対象

論文編では住民参加型住宅(コーポラティブハウス)の事例を国内外問わず、写真、図面を収集し、計画主体や運営方法といった特徴をまとめ、設計手法や空間構成の分析を行う。

設計編では東京都中央区月島地区の木造住宅密集地をケーススタディとして、論文編で得られた知見を元に住民参加型住宅の設計提案を行う。

第1章 コーポラティブハウスの可能性

1-1.コーポラティブハウスとは

コーポラティブハウスとは設計・開発者側が上に立って生活者側に住居を提供するトップダウン方式ではなくて、その住宅に住みたいという入居者側から生活したい環境を提案していくボトムアップ方式で住居空間を作り上げていくことである。竣工までに年月がかかりやすいというデメリットはあるが、その分希望して入ってくる入居者との討論会が設けられるため、地域コミュニティが出来やすいというメリットも存在する。売り手と買い手、作り手と使い手の考えの差をなくすことによって、住まい手が本当に望んでいる空間を提供できる。

1-2.コーポラティブハウスの事例

現在調査中。

1-3.21世紀のコーポラティブハウス

トップダウン式の再開発ではなくボトムアップ式の都市更新のやり方が期待できるだろう。今日のコーポラティブハウスはその時代のニーズやライフスタイルによって変化をしている。戸建て住宅が集まって一つの街が形成されていく戸建てコーポラティブやそれらがある街と街が繋がっていくといった多様な変化に富んだ住居形態には、今後様々な可能性を示唆しているだろう。

第2章 選定敷地の情報

2-1.東京都中央区について

東京都中央区は東京都の特別区部ほぼ中心に位置する面積10.094㎢、人口130,483人の区である。(2013年6月1日現在)

また、特徴として昼夜間人口の差が大きいことも挙げられる。2005年では夜間人口が98,220人に対し、昼間人口が647,733人と比率が6.595倍もあったが、近年の臨海部における高層マンションの建設で夜間人口が増え、昼間人口も減少傾向にある。また区内に計画されている2020年の東京オリンピックの選手村は会期後に住宅に転用される予定であったりと今後も夜間人口は増えていくと予想される。(図3)

図3

2-2.月島地区について

2-2-1.月島地区の変遷

明治25年(1892年)に月島の埋め立て地が誕生した。1923年の関東大震災の復興再開発、戦後の個別更新、高度経済成長期の工業用地の大規模用途転換、昭和50年代後半の再開発計画で地下鉄有楽町線が月島まで延伸し、2000年頃から総合設計制度を活用した超高層マンションが立ち並ぶ町並みに変化しつつある。

月島地区の町割りは横120m、縦60mごとの格子状の街路によって造成されている。江戸期の造成方法をモチーフにしているが、路地幅は江戸時代が三尺幅(約1m)であったのに対し、月島は倍の2mに広がり、長屋の横幅は18m、奥行きは7mと江戸時代よりも落ち着いた居住空間となっている。(図4)

図4、5

2-2-2.月島地区の問題点

月島地区は路地が広がる木造密集住宅地であること、建物の老朽化と住人の高齢化、さらに旧耐震制度時に建てられた木造住宅が多く存在していることなどの問題を数多く抱えている。(表1)

表1

また、中央区は月島地区に関して、まちづくりガイドを提唱し、個別更新というかたちで都市更新を構想している。現状では、個別更新が起こりにくいので区はゼネコンやディベロッパーを介して再開発案として総合設計制度を用いた高層マンションの計画を多く提示している。

東京都は東京都震災対策条例に基づいて、昭和50年から概ね5年ごとに地震に関する地域危険度を提示している。地域危険度とは、全ての地域(町丁目)ごとに同じ強さの揺れが生じたと仮定し、建物倒壊、火災、総合の3つの危険度を東京都内の5,133の町丁目ごとに測定をしたもので、それぞれの危険度ごとに高い順位を付け、あらかじめ定められた分布により、5段階にランクを分けたものである。平成25年9月に第7回目の調査結果が公表され、中央区において、本研究で対象とする月島三丁目が区内の最高ランクである4をつけられた(図6)。以上のことから、月島の木造住宅密集地は早急に建て替えといった都市更新が行われるべき土地であることは明らかである。

図6

2-3.月島の路地空間の特徴

月島に数多く存在する路地空間は、後世に残すべき月島らしさの特徴の一つであろう(図7)。幅員1.8〜2.7mで構成された路地空間は私道ではあるが、この街区に住んでいる人々にとっては、いわば「共用」空間である。その空間に「専有」空間である住宅からベランダや庇、プランターといった生活物が飛び出すことによって、ただの路地空間が豊かな下町情緒が溢れているコミュニティ空間を形成しているのだ。(図8)

図7、8

 

設計編

第3章 設計概要

3-1.計画地

対象を中央区月島三丁目28〜30番地に存在する木造住宅とする。敷地の情報として、敷地面積が780㎡である。地域区分としては商業地域と第二種住居地域の2つがまたがっており、商業地域は建蔽率80%、容積率500%、防火地域かつ第三種中高層階住居専用地区に設定されている。また、第二種住居地域は建蔽率80%、容積率400%、防火地域かつ第二種中高層階住居専用地区に設定されている。

別紙図

結章

平面的に広がる月島特有の路地空間を断面的にも広がる可能性を提示していく。また、住民のライフスタイルによって求めている住まいの空間を決めていくコーポラティブ的な住居を提案し、地区内でのコミュニティを促進させていき、既存の街並みを継承しつつ都市更新をしていく手法の一例を提示する。

 

夏合宿の発表にて、自身の研究に関する問題提起からそれに対する解放のプロセスが未だはっきりとしておらず、研究の骨子がまとまっていないとの指摘をされたので、来月の全体の中間発表に向けて早急に骨子を固めたい。

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