B4櫻井です。2022年6月13日に実施しました新建築2022年3月号の現代建築レビューを投稿いたします。
山崎:3月号で気になった建築は何ですか。
末吉:私は泉大津市立図書館シープラが気になりました。まちづくりの中心としてフィールドワークを行い、地域の方々と交流を深めながら緻密な設計がされていると思いました。また家具デザイナーとともに家具によって人に場所でもあり本の場所でもある、という人と物を有機的に深く繋げる家具というのも面白いと思いました。
金川:リノベーションでワンフロアの図書館ですが、周辺の地域性に合わせて曲線のシークエンスが続くように設計されているのが興味深かったです。床や天井のレベル差によっても物語性を感じる建築だと思いました。
髙田:この建築もそうですが、最近は設計プロセスに建築家以外が関与しているものが増えていると思います。これからも増えていくと思いますし着目すべきだと思います。
岡田:私はニセコ蒸溜所が気になりました。建物の配置が風向きや雪の衝突分布などのシミュレーションを使って決定されていて、ニセコの地域特性から建築を考えていっているのがいいなと思いました。軒下が柱によって緩く仕切られている空間になっていて、その先の眺めを四季によっても楽しめると思いました。
山崎:私は藤田美術館が気になりました。周辺に対して閉じていた改修前とは対称的に、改修後には公園にも接続した開いた美術館になっています。入りにくいという美術館のイメージが壊され、芸術の活性化に繋がるのではないかと思いました。美術館内部には改修前からの美術館らしい要素が残されていて、外観とは異なる印象で面白いと思いました。
石井:ガラスの透明性を用いることによって、誘引効果が発揮されているのが良いと思いました。建物自体は近代っぽさを感じますが、茶室や木との相性も不思議と良く感じました。
山崎:藤田美術館は従来の美術館とは違い開いた美術館ですが、開いた美術館に対してはどう思いますか? 金川:美術品を日差しから守るという美術館の機能からいえばガラスなどによって開かれた美術館はあまり好ましくないと思いました。暗く閉じられた展示室でスポットライトによって美術品に注目を当て映えさせるというのが美術館に求められているものではないかと思います。
末吉:エントランスの作られ方によって地域に開くかどうかが決まるのではないかと思います。今回の事例もそうですが、エントランスは開かれていても、展示室は開かれていない事例が多いと感じます。
櫻井:私はWOTAオフィスプロジェクトが気になりました。銀行→店舗→テナントビルと二回用途変更がなされている建物で、今回の改装で内装はほぼ躯体だけになっています。用途に合わせて改装されてきた内装が、最終的に躯体だけになっているのが内装に対しての皮肉のようにも感じられて面白いと思いました。
居城:私は西治プロジェクトが気になりました。元々の住宅の瓦屋根を、外壁に用いることによって瓦の良さを継承している所が良いと思いました。下がコンクリートで上が木造という構造になっていて隙間を生み、住宅とギャラリーの中間も表現していて面白いと思いました。
宮川:私は特注瓦外装が特に気になりました。瓦を上下反転させてルーバーにしているところが面白いと思いました。しかし特注瓦のように既製品でないものを使ってディテールにこだわると費用がかさんでしまうのではないかと気になりました。
金川:私は銅板のねじれによって光を設計しているシグナル・ボックスを想起しました。住宅のスケールに変わった名建築のようで面白いと思いました。
髙田:私は天神中央公園ハレノガーデンが気になりました。これは歴史的建造物を引き立てるようにランドスケープを考慮しながら設計されたもので、建築を活かすために新しく建築を作るという、改修やまちづくりの再編
などとは異なった歴史的建造物に対する新しいアプローチの「建築のための建築」という作り方が面白いと思いました。
末吉:私は実際に訪れたことがありますが、一般的な休憩場所として使われており、建物を引き立てているという印象はあまり感じることはできませんでした。
山崎:他に気になった建築はありますか?
金川:私は、石垣市役所の外観と内観のギャップについて気になりました。2022年1月号に掲載されていた那覇文化芸術劇場なはーとに比べて外観にのみ沖縄の集落形式を反映していて、内部空間に沖縄らしさが感じられないと思いました。
総括
今回は何かを反映させるような引き立て役の建築が多かったように感じました。地域性を建築に反映させることによって、地域に開いたり活かしたりすることができると思いました。