修士2年の野田です。研究の途中経過を報告します。
序章
0-1. 研究の背景
ステージ・デザインの歴史は、様々なエンターテインメントとともにその空間が創り出されてきた。
現代を代表するステージ・デザインの一つに、大規模なスタジアムコンサートが挙げられる。スタジアムでのコンサートが事業として生まれたのが、1965年のニューヨーク、シェア・スタジアムで行われたビートルズのコンサート。スタジアムでコンサートをすることのメリットは、一度に何万人のも観客とともに、音楽やパフォーマンスを共有することが出来るということ。人々の音楽の楽しみ方が多様化したことで、音だけでなく、視覚にも訴えるような演出が必要となった。
大規模なスタジアムにおけるステージ・デザインの先駆者である、マーク・フィッシャー(1947-2013)は、英国を代表する舞台美術家・建築家。ザ・ローリングストーンズ、ピンク・フロイド、U2、AC/DC、マドンナ、レディー・ガガなど数多くの大物アーティストのステージ・デザインを手がけた。フィッシャーは、AAスクール時代、ピーター・クックのもとで学び,1971年に学校を卒業。1973年から1977年まで、AAスクールの時間講師にであった。1984年には、ジョナサン・パークと「フィッシャー・パーク」というチームを結成し、1994年に解散。その後、フィシャーは自信の会社「Stufish」を設立した。
0-2. 研究の目的
①フィッシャーが手掛けたステージ・デザインを、舞台装置の仕掛けや演出、パフォーマーの行動に注目することで、“もの”としてのステージと、“できごと”としてのパフォーマー・観客との関係を分析する。
②フィッシャーの作品におけるステージ・デザインの変遷を分析する。
③フィッシャーがどのような影響を受け、また現代の舞台美術家たちにどのような影響を与えているのか、そしてフィッシャーがステージ・デザインの歴史のなかで、どのような位置づけにあるのかを考察する。
0-3. 研究の位置付け
ステージ・デザインの歴史の中で、コンサートホールや能舞台などにおける研究の蓄積は豊富です。
今日、大規模なスタジアムを舞台としたコンサートが盛んになりましたが、いまだそれらのステージ・デザインの研究は十分ではないです。ポップ・カルチャーにおけるスタジアムコンサートのステージ・デザインを設計論・計画論的に分析するものと位置づける。
0-4. 研究の対象と方法
フィッシャーの作品集、事務所のホームページに掲載されている作品を対象とする。また、これらに加え、アーキグラム、コンサートホール、舞台美術などの文献を参照し、分析図を作成する。
第1章 フィッシャーのステージ・デザイン誕生の背景
1-1. フィッシャーのステージ・デザインの構成要素
フィッシャーのステージ・デザインは、メインステージ、キャットウォーク、センターステージ、可動式の舞台装置、固定式の舞台装置、ビデオスクリーンなどで構成されている。
第2章 ステージ・デザインにおける“もの”
2-1. はじめに
この章では、ステージ・デザインにおける“もの”である、ステージ構成とステージ・セットについて分析を行う。
2-2. ステージ構成の変遷
フィッシャーのステージ・デザインを時系列に見ていくと、彼の作品のステージ構成は、いくつかのタイプに分けることができるとわかる。
2-2-1. Ⅰ期エンドステージ型
フィッシャーのステージ・デザインを時系列に見ていくと、彼の作品のステージ構成は、いくつかのタイプに分けることができるとわかります。
2-2-2. Ⅱ期ウイングステージ型
メインステージの両端に羽根のようにステージが取り付けられる。
2-2-3. Ⅲ期キャットウォークステージ型
メインステージの中央にキャットウォークが付け足される。
2-2-4. Ⅳ期センターステージ型
メインステージが会場の中央に配置され、観客がステージを取り囲む形。
2-3. ステージセットの変遷
ここでは、ステージ・セットについて、ステージ構成の変遷と照らしながら考察を進めます。
2-4. 小活
第3章 ステージ・デザインにおける“できごと”
この章では、ステージ・デザインにおける“できごと”である、パフォーマンスや舞台演出の分析を行う。
第4章 “もの” と“できごと”の関係
この章では、第2章・第3章を比較し、“もの” と“できごと”との関係を考察する。
結章 結論と展望
5-1 予想される結論
・フィッシャーの作品における“もの”としてのステージは、後期に行くにつれて、観客に取り込まれていくような構成になっている。
・フィッシャーは、舞台装置を使い様々な演出を行っている。特に、可動式の舞台装置は、場面転換の役割をしていると考えられ、公演中に幾つもの“できごと”を作り出す。