修士2年の小田です。
2018年度修士論文の概要を掲載します。
「現代日本のアトリエ系設計組織を対象とした建築設計プロセスの記述・分析」
序
0-1.研究の背景
建築設計のプロセスは他者がうかがい知ることのできないものであり、我々が目にできるものは最終的なアウトプットとしての建築物が全てである。設計者によってその設計プロセスが千差万別であることは当然のこととして了解されているが、客観的に把握したり、その差異を誰もが使える方法論として共有することは大変難しい。しかし、これまで属人的な秘技のようなものとして扱われてきた建築の設計プロセスを理論化しようとする試みがなかったわけではない。1960年代、高度経済成長を背景に生活に対する価値観の多様化,建築の機能の複雑化,大規模化,設計対象の拡大が促進し、一方では工期の短縮,生産の合理化が求められるようになったことで、設計プロセスを客観的に体系化することを目的とした研究が始まった。また、「世界デザイン会議(1960)」,「設計方法に関する国際会議(1962)」,「設計方法小委員会の設置(1963)」等の設計方法に対する動向をきっかけに、建築家が自らの創作論を自省的に語る動きが現れ始めた。しかしその後、アレグザンダーが「形の合成に関するノート」で示したような「客観的でシステマティックな方法」から「人間のあいまいな認知能力や感情にもとづくパターンランゲージを用いた方法」へと方向転換したことからもわかるように、設計プロセス論の限界が露わになり、これらの試みは下火となっていった。注1)その後も、戦後の建築家たちが様々なメディアを通じて創作論を展開してきたが、それらは建築家の思想や哲学を説明するものに留まり、設計の現場での具体的なスタディの方法,意思決定の中味については、依然として闇の中に置かれ、設計者の個人的な体験や経験によってもたらされる謎めいたノウハウとして留め置かれた。しかし、2000年代に入ると、「GA JAPAN PLOTシリーズ」に代表されるように様々なメディアを通じて、少しずつ建築家の設計プロセスを開陳する動きが出てきたことは特筆すべきである。また、現在では、ワークショップなどが増え始め、設計方法の共有化が再び求められるようになっている。例えば、藤村龍至は設計プロセスが孕む暗黙的な知を誰にでも理解・応用可能な形式的な知へと転換できる方法として「超線形設計プロセス論」を唱えている。
0-2.研究の目的
本研究では建築の設計プロセスを意思決定の伴ったシークエンシャルな連なりであると捉える。つまり設計プロセスをプログラミングのアナロジーであるとして観察する立場をとる。そのことで、様々な設計プロセスを統一的な情報として観察することを可能にし、差異や類似を検討する手立てになるのではないかと考えた。現代日本における代表的なアトリエ系設計組織の設計プロセスを対象とし、本研究の目的を次の3点とする。
①複数の建築家の設計プロセスを同じ土俵の上に並べ、それらを相互に比較できるような思考の枠組みをつくること。
②比較分析を通じて、現代日本における代表的な設計組織の設計プロセスの差異と類似を論じること。
③誰もが設計において共有し、利用可能な形式的な知を得ること。
0-3.研究の位置づけ
設計のプロセス論に関する研究には豊富な蓄積がある。個人の創作論に焦点を当てた研究では、山下らがミース・ファン・デル・ローエを対象にスケッチや図面を分析し、それに伴う思考過程を明らかにした研究1)がある。設計のプロセスを記号過程とみなし分析した研究では、門内らのC.S.パースのアブダクション理論を軸とした、建築設計におけるアイデアの生成過程を考察した研究2)などがある。設計プロセス内に生じる部分的な事象に着目した研究では、加藤らの模型製作における意思決定プロセスに着目し、建築の学生を対象とした実験を通してプロセスの発送段階における形の構成や機能の発想,解釈に伴う意思決定プロセスの役割を示した研究3)がある。藤村は「超線形設計プロセスは、既存の設計行為を形式的な知に転換することにより、機械言語への翻訳=プログラミングがしやすくなるため、コンピュータ・アルゴリズムが全体を統合する設計の方法論として進化するための基礎的な準備である」4)と述べている。ここから設計プロセスの共有化は、情報化と緊密に結びついていることが理解できる。しかし藤村の主張は「超線形設計プロセス論」のルール上で成立するものであるため、他の設計組織の設計プロセスに適用し、形式的な知に転換することには限界があるだろう。
本研究はコンピュータープログラミングの記述法であるフローチャートを参照し、設計行為に適応可能な独自の記述法を考案することで、設計組織ごとの設計プロセスを記述する(情報化する)ものである。
0-4.論の構成
1.ではこれまで述べられてきた建築設計プロセスに関する理論の整理を行う。2.では本論で採用するフローチャートの可能性と限界を学生の設計行為の観察を通し洗い出す。3.では2.で明らかになったフローチャートの限界部分を補完し、独自のルールを設定した上で、各設計組織の設計プロセスの記述を試みる。4.では記述した複数の設計プロセスをモデル化する作業を行う。5.では設計組織ごとに記述化、分析を通し得られた知見を統合的に考察する。
1.建築設計プロセス論の整理
ここでは0-1.で述べた設計プロセス論の変遷の中で、代表的な論考についての整理を行い、本研究の位置付けをより明確化する。
1-1.設計プロセスに関する研究の始まり
設計プロセス論が盛んに議論された1960年代において、特に重要な論考として菊竹清訓の「代謝建築論-か・かた・かたち」,磯崎新の「プロセスプランニング論」,クリストファー・アレグザンダーの「形の合成に関するノート」などがある。これらはそれぞれ、設計方法を形式化させようとする試みの先駆けであった。しかし1970年代に入ると、これら設計プロセスに関する研究には限界が訪れたことを、難波和彦はアレグザンダーの態度変更を例に示し、これらの研究は最終的にシステム化できない方法の領域を浮かび上がらせたと評価した。その後も様々な創作論が展開されてきたが、それらは建築家の思想や哲学を説明し、自らの作品の妥当性を裏打ちするものとして使われてきたという側面は否めない。
1-2.建築メディアを通した設計プロセスの共有化
2000年代に入ると、「GA JAPAN」や「JA」などのメディアを通じて、著名建築家の設計プロセスを開陳する動きが出てくる。これは、以前までの建築家の思想や哲学を説明するような創作論とは異なり、設計の現場での具体的なスタディの方法,意思決定の中味などを明かした、新たな動向であると言えるであろう。
1-3.現代の設計プロセス論
藤村は「超線形設計プロセス論」を実践し、設計プロセスを集団で共有することで、いくつかのプロジェクトを実現している建築家の1人である。このように現在ではワークショップなどを通じ住民参加型で行われる設計の増加も背景に、設計プロセスを共有化する試みが再び始まっている。
建築家の設計プロセスに関する情報にある程度アクセスできるようになった今日、それらを同じ土俵に並べる為の記述を試みること、そしてそれらを比較分析した上で、共有可能な形式的な知を得ることが、設計プロセスの研究における本研究の立ち位置である。
2.フローチャートについて
ここでは、今回設計プロセスを記述する際に採用するコンピュータープログラミングの記述法(フローチャート)について確認し、建築設計プロセスの記述への適応可能性について検討する。
2-1.フローチャートの概要
フローチャート(流れ図)とは、コンピューターに何らかの処理を指令する場合に、その処理の「手順」を記号や文字を用いて視覚的に表現し理解を容易にするものである。フローチャートの作成にあたっては一定の約束にもとづいたフローチャート記号を使用する。フローチャート記号はJIS (日本工業規格X 0121-1986 )で定められており、問題の処理手順はフローチャート記号をいずれか組合わせることによって記述することができる。25種類の定められた記号の中で、一般的なフローチャートで使用される最も基本的な記号には「処理」「判断」「流れ線」「端子」などがある。
フローチャートはあくまでコンピュータープログラミングのプロセスを記述するために用いる手法である。このフローチャートをそのまま、建築の設計プロセスの記述に適応できるのかどうかを検証するために、ケーススタディとして、学生を対象とした設計プロセスの観察を行い、実際にフローチャートを適応させた場合に生じる、記述の可能部分と不可能部分を洗い出す実験を行った。
2-2.フローチャートの可能性と限界
本学建築学科2年生を対象とした「建築設計3」の設計課題を観察する。授業は週に一度、指導教員1名が学生17名に対し1名ずつエスキースを行う形式で進められる。筆者は指導教員から了解を得た上でエスキースにオブザーバーとして同席し、プロセスが読み取れる情報を収集し、データシートにまとめた。2度のエスキースと中間発表,最終発表を通じてプロセスを読み取り、フローチャートでの記述を試みた。そこで生じた問題点を以下に示す(図1)。
①プロセスの階層性:全被験者に共通して、建築設計には全体から部分の検討に至るように、思考する対象に様々な階層が存在することが観察できた。今回の実験における階層は、建築形態,平面プラン,構造,外装などである。これらは一連の流れ図では記述できないが、相互に関係性を強く持っているため、設計プロセスの記述には不可欠な事象である。
②外部リソース:被験者Lの設計プロセスを例に見てみよう。第2週から第3週までの過程でグリーンビルディングの事例を参照し、案のコンセプトであった張り出したテラス面に植栽を配置し、「緑で囲む」という新たなコンセプトを創出させている。このプロセスの中で「緑で囲む」というコンセプトは自身の思考に由来したものではなく、グリーンビルディングという事例によって生まれたものと考えられる。このように建築設計のプロセスには外部からのリソースをもとに、プロセスが発展する場合があり、既成のフローチャートでは記述できない重要な事象である。
③部分的なDNAの継承:次に被験者Pの設計プロセスの例を見てみよう。第1週ではRC造のヴォリュームを敷地に対し角度をつけて振った案であったが、第2週では第1週のヴォリューム部分を木質ハイブリット集成材で構成、角度のズレよって生まれたネガ部分をSRC造で構成する案に変更されている。この案は当初の西日を避けるという目的とは異なるものであると捉えられるが、当初の角度を振るというアイデアが、次案にも継承されていることが読み取れる。このように案の持っていたDNAが次の案に引き継がれている場合があり、既成のフローチャートでは記述できない重要な事象である。
④不連続な案の発生:被験者Iの設計プロセスを例に見る。第1週では「コミュニケーション・ヴォイド」をコンセプトに、中央に全フロアを貫通する吹き抜けをもつオフィスをスタディしていたが、第2週になると突如その案をキャンセルし、全く別の案へと移行している。この事象は順序立てて進むプロセスとは区別して記述する必要性がある。
以上の4点が設計演習の観察により得られた既成のフローチャートでは記述不可能な部分である。ここにプログラミングと建築設計プロセスとの差異を確認することができた。
図1 既成のフローチャートを建築設計プロセスに適用した場合に生じる記述不可能部分
3.設計プロセスの記述と分析
ここでは、2-2.で示したフローチャートでは記述不可能な部分を踏まえフローチャートを改善し、建築設計プロセスの記述に適した記述法を考察する。この記述法を用いて実際に設計プロセスの記述を行い、各プロセスの分析を行う。
3-1.「PLOTシリーズ」のメディアとしての特性
近年、建築家の設計プロセスを開陳する動きがいくつかの建築メディアにみられる。その中で今回設計プロセスの読み取りを行う対象として、「GA JAPAN PLOTシリーズ」を採用した。このシリーズはPLOT01(2001年刊行)から始まり、GA JAPAN 72号(2005年刊行)からは連載も始まっている。150号(2018年1月刊行)まででおよそ43設計組織,通算143プロジェクトを対談形式で掲載している。アトリエ系設計組織の設計プロセスを追う上で貴重な情報源であると考えられる。しかし一方で、「PLOTシリーズ」のもつ特性は留意しておくべきであろう。①設計プロセスをメディアに露出する際、設計者あるいは編集者による何らかの意図が介在している可能性がある。②設計組織やプロジェクトによって、掲載されているプロセスの情報に解像度の違いがみられる。以上2点の、情報の客観性の問題は考慮した上で、得られた情報と向き合うことが必要である。
3-2.独自に考案したフローチャート
新たな記述ルールを以下のように設定した(図2)。
(a)縦軸を時間
(b)横軸を案の系統
別の案に移行した場合は次の処理を右横にズラして記述。案がそのまま発展する場合は、真下に次の処理を記述。
(c)複数の案が同時に生成された場合は複数の処理を並べて前処理の下に記述。
(d)「プロセスの階層性」の記述は主軸のプロセスに対し、影響を及ぼす別階層のプロセスを記述。階層ごとに点線で囲う。
(e)ある段階における処理とそこで行われた部分的な思考のまとまりを一点鎖線で結ぶ。
(f)「外部リソース」の記述はフロー図内に注記し、参照先の処理へ実線で結ぶ。
(g)「案の部分的なDNAの継承」の記述は点線で処理同士を繋ぐ。
(h)「不連続な案の発生」は流れを示す実線上に角の丸い正方形記号を重ねて置く。
(i)案がキャンセルされた場合は初期に戻りリスタートではなく、1つ前の処理につなげる。
3-3.各設計プロセスの分析
前項に示したルールを用いて設計プロセスの記述を行う。対象とする作品を表1に示す。
3-3-1.「下関市川棚温泉交流センター(P1)」
設計は隈研吾建築都市設計事務所。山口県下関市の川棚温泉街の活性化を目的とした観光交流施設である。図3(P1)から読み取れる特徴として以下の4点が挙げられる。①ヴォリュームスタディ後、設計条件に合わせ、同所の過去の作品を参照した案を始めに試している。②ひとつの案に固執せずに、客観的に案の見通しが悪い場合は直ちに案をキャンセルしている。③案の方向性が決まると、その他の案の可能性を試す労力はあまり掛けず、その方向性を発展させている。④組織の意思決定権をもつ隈研吾の目に触れる前にキャンセルされた案が存在する。
3-3-2.「十和田市市民交流プラザ(P3)」
設計は隈研吾建築都市設計事務所。青森県十和田市の中心にある市民のための交流施設。図3(P3)から読み取れる特徴として以下の2点が挙げられる。①初期条件に対し、複数の系統の案を作成。その中から1つの案を選択肢し、案を発展させている。②プロポーザル選定後、平面のスタディはプロポーザル案をわずかに変更する程度に終わり、そこに架かる屋根のスタディに労力が割かれている。
3-3-3.「多摩美術大学図書館(P4)」
設計は伊東豊雄建築設計事務所。多摩美術大学八王子キャンパスの新しい図書館である。図3(P4)から読み取れる特徴として以下の2点が挙げられる。①1度キャンセルされた案が再浮上する事象がみられる。②構造家の助言によってプロセスに変化が生じている。
3-3-4.「木島平村役場・村民館(P8)」
設計はCAt。長野県下高井郡木島平村に計画される予定であった村役場・村民会館の提案。図3(P8)から読み取れる特徴として以下の2点が挙げられる。①ヴォリュームスタディを発展させていき、配置が決まった後に複数の形態のスタディを行っている。②設計者の極めて感覚的な判断で案をキャンセルする場合が存在する。
3-3-5.「グレース・ファームズ・プロジェクト(P11)」
設計はSANAA。アメリカのコネチカット州に建てられた礼拝の場所と地域の人々のための公共空間の複合施設。図3(P11)から読み取れる特徴として以下の3点が挙げられる。①初期段階から大きく2つのテーマ(集約と分散)を設定し、スタディを進めている。②並行に発展している案はプロセス内で常に干渉し合っている。③クライアントの要求に合わせた意思決定が存在している。
4.モデル化と比較分析
4-1.プロセスのモデル化
3.で記述した15作品の設計プロセスを見ていくと、設計プロセスには5つのパターンが存在することがわかった(図4 )。
①段階的発案・選択型:はじめに設計案をひとつ作成し、その案がキャンセルされると次の新たな案を作成するという段階的なプロセスをたどるもの。
②段階的発案・再帰型:発案の流れは①に類似するも、後に1度キャンセルされた系統の案も含め再検討するプロセスをたどるもの。
③同時発案・並行型:初期段階で同時多発的に案を生み出し、それらの案をキャンセルすることなくプロセスの終盤まで並行して発展させていくプロセスをたどるもの。
④同時発案・選択型:発案の流れは③に類似するも、それらの中から適切な系統の案を選択し、発展させていくプロセスをたどるもの。
⑤少数発案・線型:単一または少数の案を分岐なく発展させていくプロセスをたどるもの。
4-2.モデルからの考察
これまで作品毎に分析・モデル化を行なったが、これらの結果をもとに設計組織毎に設計プロセスの傾向はみられるのだろうか。4-1.で得られた5つのパターンモデルと、5つの設計組織との対応関係を検討したものが図5である。PLOTの言説や、アンケートなどをもとに調査した各設計組織の組織体制も含め、組織の特徴とパターンモデルとの関係性を次に示す。
隈研吾建築都市設計事務所:④同時発案・選択型のプロセスがみられる。組織の意思決定権を隈研吾自身が強く持っているという組織体制から、多数の案の中から1つの案を選びとり発展するプロセスが生まれている。
伊東豊雄建築設計事務所:②段階的発案・再帰型の傾向が強い。計画変更など特殊な背景が要因だが、キャンセルされた案にも視野を広げながらプロセスを進めていることが特徴としてみられる。
CAt:⑤少数発案・線型の傾向が強い。他の組織と比較しても別系統の案のスタディが圧倒的に少なく、ヴォリュームスタディからそれ自体を発展させていくプロセスが1つの特徴としてみられる。
SANAA:③同時発案・並行型の傾向が強い。あえて意図を込めない案を初期に大量に発案し、それらをキャンセルせずに並行して発展させるプロセスは、SANAA独自の特徴であり、偶発的に生まれる案への価値を認めていることの現れである。
日建設計:日建設計の設計プロセスには、組織としての傾向のようなものを読み取ることはできなかった。これは日建設計の組織体制として、プロジェクトごとにプロセスを進める主体が統一されていないことや、スタディ方法等が各々に任せられていることが要因の1つであると考えられる。
今回採用したアトリエ系設計組織は、ある程度の規模を持った組織を対象とした。その中に日建設計を加えた意図としては、もはやアトリエ事務所とはいえ、一定の規模を超えると、設計プロセスにおいて大手組織設計事務所と大きな違いはないのではないかという仮説があったからである。しかし実際に設計プロセスや組織体制をみてみると、プロセスの主導権や意思決定権が、集権されているか,分権されているかが、差として現れたのではないだろうか。
以上の結果から、設計プロセスのパターンは、設計者の特徴や組織体制に左右されていることがわかった。
5.結論と展望
5-1.結論
本研究では、コンピュータープログラミングの記述法(フローチャート)を参照し、新たな記述法を考案した。この手続きから、人間の創造行為や思考は、迷いやひらめき,他のリソースの参照など、単純な線型のフローでは表しきれない、複雑な回路であることを示すことができた。また、独自に考案したフローチャートは、設計の手順を知識として蓄積可能にするツールとしての可能性を多少なりとも示すことができたと考えている。
また建築設計プロセスをモデル化した。このモデルは設計者毎、プロジェクト毎の思考パターンであり、教育の現場,実務の現場において共有可能な、有意義な知見として示すことができた。
5-2.課題と展望
本研究ではGA JAPANのPLOTシリーズを対象に設計プロセスの読み取りを行なったが、実際に設計現場に足を運び調査を行うことで、より正確な設計プロセスの読み取りが可能となったと考えている。本研究が今日の建築設計プロセスの情報化への取り組みを促す一助になれば幸いである。