B4の飯田です。
前期は、間伐材を用いたシェルターをケーススタディとして、デジタルファブリケーションを用いた設計手法の研究をし、その成果物を「住空間ecoデザインコンペティション」に提出するということを行いました。
以下まとめです。
1 序
1.1 研究背景
近年のコンピューター技術の発展により今まで実現不可能とされてきた複雑な形態が生成されるようになった。また、レーザーカッターやCNCマシン、3Dプリンタを利用してデジタルデータを木材、アクリルなどから切り出し成形する技術(デジタルファブリケーション)が身近になったことにより、簡単に3次元のデータとして出力することが可能となった。これまでコンピューター上で生成された形態の多くはCGどまりであったが、デジタルファブリケーションの技術により、構想から物質化までの一連のプロセスを統合的に扱うことが可能となった。
1.2 研究目的
本研究では、コンピューテショナルデザインを用いた設計手法が有用であることを明示すべく、実施を前提として木材を用いた3次元曲面のシェルターを設計することとした。木材では実現しがたい3次元曲面をデジタルファブリケーションの力で実現可能とすることにより有用性を示すとともに新しい空間を造り出すことを目的とする。
2 デジタルファブリケーションについて
2.1 デジタルファブリケーションと建築
デジタルファブリケーションとはレーザーカッターやCNCマシン、3Dプリンタなどの、コンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、3DCGなどのデジタルデータを木材、アクリルなどの様々な素材から切り出し、成形する技術である。 欧米などではこの技術がすでに普及していて、現在日本でも徐々に浸透してきている。
また、デジタルファブリケーションを一般市民に提供する団体、FabLab(ファブラボ)の出現により、誰でも自由にものづくりができる環境が整いつつある。 FabLabは市民に広く普及させているという点で、社会的な衝撃をもたらしたといえるが、デジタルファブリケーションの本質はその技術的な部分が大きい。 デジタルファブリケーションの技術的な衝撃は、デザインと施行の間にあった垣根が取り払われ、それらの一連のプロセスを統合的に扱うことが可能となったことといえる。 これらは、これからのデザインに大きな影響を与えることとなるであろう。
2.2 デジタルファブリケーションを用いた木材建築の事例リスト
作品名、建築家
ICD/ITKE Research Pavilion 2010、Achim Menges,Jan Knippers
Metropol Parasol、Jurgen Mayer H.
Digital Teahouse1,2,3、GSAPP+UTDA
3 設計提案
3.1 三次曲面の生成
曲面を考えるにあたり、身体のふるまいを誘発するような、身体の延長上にあるようなものを目指した。 これらは寝そべる、登る、座る、かがむなどの様々な行為を誘発し、様々なスケールで展開される。
3.2 ワッフル構造の生成
Rhinocerosのplug-inソフト(Grasshopper)を用いてモデリングされた曲面をX軸、Y軸に分解する(ワッフル構造)。これにより3次元曲面を直線材で構成可能となる。Grasshopper上で数値を調節し、シミュレーションを行い、最適な部材の本数、太さ、長さを導きだす。
ワッフル構造は光、風を通し、外部のような内部空間をつくりだす。また、植物が浸食する余地をつくる。
4 スタディプロセス
4.1 3次曲面の生成
4.2 ワッフル構造の生成
5 結論・展望
3DソフトRhinocerosとデジタルファブリケーションの技術を用いることによって、木材で3次曲面の立体を生成することが可能となった。 今まで、デザインと施行の間には何らかの壁のようなものがあったが、デジタルファブリケーションの出現によってその二つが一連の流れで扱うことができるようになった。 これによりデザインの幅が広がり、またデザイナーと施工者の間に新たな関係が生まれるのではないか。
今回はスタディをすべてPC上で行い、最終形態を最後に模型化した。 しかし、PCの画面上にある空間と実際に模型で現れてくる空間では認識のレベルで若干の差異があり、スタディの段階ごとに模型をつくるべきだったと思う。 PCでモデリング→模型化という段階を何回も経るスタディを行うべきだった。
今回の設計では、パラメータが部材の量、大きさだけであったが、これに重力などの変数を与えるとどのように変化するか、またスケールが大きくなった時にどこまで対応できるか、などが今後の展望として上げられる。
コンペ提出案
模型写真