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ドローイングから読み解くザハ・ハディドの建築思考
B4小田です。春学期に取り組んだ研究の内容を投稿致します。 序章 1-1研究の背景 2016年3月31日、1人の建築家ザハ・ハディドがこの世を去った。新国立競技場問題によって日本中にその名広げることとなったはザハは、1983年香港ビクトリアピークのコンペティション優勝を機に現代まで、独自の表現力で人々を魅了し続けた建築家の1人である。中でもザハの描くドローイングは、「構造的配慮を欠いた」、「重力を無視した」といった言葉で解説される、断片化された形態が浮遊したような独特なものであった。ロシア・アヴァンギャルド時代、カジミール・マレーヴィチによって提唱されたシュプレマティズムにも影響を強く受けたとされるザハのドローイングには、どのような建築的思考が描かれているのか。 図1−1 ザハ・ハディド 図1−2 東京新国立競技場コンペ案/2012 1-2研究の目的 研究の目的は以下の2...
Glenn Murcuttの建築から読み取るサスティナブルデザイン ―自然をコントロールする環境装置―
B4の田中です。春学期研究発表の内容を投稿します。 キーワード:自然、環境装置、引用 第1章 序論 1.1.研究の背景 グレン・マーカットという建築家がいる。彼はプリツカー賞をはじめ、国内外の数々の受賞歴をもつ、現代建築界を代表する巨匠のひとりであり、現在もオーストラリアを中心に活動を行っている1969年に個人事務所を設立して以来、所員や秘書を置かず、コンピュータなどにも頼らず、設計に関わる行為を全て独力でこなすという姿勢を貫いており、個人住宅を中心に、プロジェクトを含めると500件近くもの設計を手掛けている。 その作品はオーストラリアの風土を見つめ続けた、サスティナビリティに富んだ住宅群に代表される。エアコンなどの設備機器に頼ることなく自然の通風をもたらすプランニングや換気口の配し方、光と影・風・害虫をうまくコントロールする精確な可動式ルーバーと網戸とガラス戸の3層の開口、水不足解消のた...
木造住宅密集地における住民参加型住宅の設計手法に関する研究 -東京都中央区月島地区の建て替えをケーススタディとして-
修士二年の小林です。前期までの修士研究の成果を報告致します。 論文編 序章 0-1.研究の背景 日本における戦後の風景は、高度経済成長期や都市化・工業化・グローバル化に伴う生活様式の変化によって更新され続けてきた。欧米諸国の都市の風景変化は既存の保存修復を行い、それらを維持しつつ更新を行ってきたのに対して、日本の都市は既存の町並みをあまり考慮せずに更新してきているように思える。例えば、マンションのような高密集合住宅は土地の効率や資産価値が重視され、既成市街地において住宅の形態変化・街の構造の変化・生活環境の破壊などの問題が生じるケースが多々ある。(図1) また、2004年に公布された景観法によって各地で景観形成の取り組みが進んでいったが、歴史都市を中心とする、地域のランドマークとなりうるような特徴的な景観の保全が主流となってしまっている。(図2) 0-2.研究の目的 都心部...
集合住宅におけるSIの調査・研究 -日本とオランダの事例において-
B4久木元です。春学期研究発表の内容を投稿します。 キーワード:サポート スケルトン インフィル オープンビルディング 第1章 序論 1-1 研究の背景 現在、日本では建築がスクラップアンドビルドによる消費型からストック型への転換が求められており、特に集合住宅においては長寿命化を求められている。ヨーロッパでは、1960年代からオープンビルディングの提唱によってオランダ等で居住者参加型、長寿命化に向けられた集合住宅が進められている。日本ではSI住宅が住宅の長寿命化に対して考えられているものであり、常に変わりうる時の流れやライフスタイルに対応できる手法である。現代の縮小社会に応答できうる建築だと思われる。その原点であり、事例も多く残すオランダの集合住宅も対象に含むことでより深い知識を得られると感じた。 1-2 研究の目的 本研究ではオランダで提唱されたオープンビルディングに基づく集合住宅と日...
フランク・ロイド・ライトの有機的建築における空間の分節と結合に関する研究
B4の吉村です。遅くなりましたが春学期の研究内容を投稿させていただきます。 序.はじめに 近年の住宅における単位空間の分節・結合方法とは視覚的にも物理的にも幾多にものぼり、様々な住宅の形を生み出す要因になっている。常に新しい形での、「住まい方」や「使い方」を求められる「住宅」において、空間同士の分節・結合の方法に関してどのような提案ができるのかを考えてみる。このことに際し、今日までの「住宅」における、単位空間の配置から空間の分節・結合方法についてどのような空間構成の変遷が見られてきたのかを解明すべきであると考える。その住宅設計の手法においてフランク・ロイド・ライトの住宅建築に焦点をあて、実際の空間の分節と結合手法の変遷とライトが提言する「有機的建築」との結びつきの考察を本研究の目的とする。 1.研究の対象 ライトの表現してきたプレイリーハウスという住宅は「有機的建築」と...
建築の表層から読み取るリノベーション様態の研究-「中道通り」をケーススタディとして
B4の加島です。遅くなりましたが、春季研究発表の内容を投稿致します。 キーワード 表装 リノベーション テナント進出 中道通り テナント分析 商業エリア 0. 序章 0-1 研究の背景と目的 裏原宿や吉祥寺の中道通り周辺の住居エリアから商業エリアへと発達したエリアには一般的な商業エリアにみられる特徴とは異なる特徴が見受けられる。一般的に見受けられる商業エリアは販売を目的とするにふさわしい空間構成で形成された建物を配置し、その中にテナントを配置していくのが主流である。だが最初にあげたようなエリアではこのような現象は主流ではなく、元々居住を目的とした建築物をリノベーションしてその中に商業テナントを配置するものが多く見受けられる。裏原宿では半数近く、吉祥寺の中道通り周辺のエリアでは半数以上の割合でこの現象が見受けられる。またリノベーションの手法、度合い、リノベーション後の動線形態も建物の立地や形...
自然素材の扱いからみるミース・ファン・デル・ローエ
B4の木村です。春季研究発表の内容を投稿致します。 1.序章 1-1 研究の背景と目的 ミース・ファン・デル・ローエは近代建築の巨匠である。「Less is more (より少ないことは、より豊かなこと)」で有名であり、洗練された材料による空間構成を得意とした。材料には主に鉄やガラスなどの工業製品を選定しているが、一方で自然素材の扱いにも光るものがある。しかし、自然素材に着目した研究は不十分であるため本研究は自然素材の扱いからミースの設計意図を導出するものと位置付ける。 1-2 研究方法 本研究では「バルセロナ・パビリオン」、「トゥーゲントハット邸」、「ファンズワース邸」の3作品を研究対象とする。この3作品は八束はじめの「ミースという神話」にて「神の家」と呼称されている。人間が住むための「人の家」ではなく、魅せるための美学としての建築だとしてこの名がつけられた。従って、この3作品はミースの...
森の墓地の設計案におけるシークエンスの変遷過程に関する研究
B4の渡邊です。春期研究発表の内容を投稿致します。 1.序章 1-1 研究の背景 1914年、南ストックホルム墓地のコンペティションにエリック・グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツが勝利し、森の墓地の設計が2人に依頼された。この墓地はコンペから完成まで25年の長い月日を費やしており、その間にコンペ案からの変更点が多く見られる。 1-2 研究の目的 森の墓地のコンペ案から実施案までの空間構成の変遷を分析し、さらにシークエンスの変化を汲み取り、アスプルンドの案変更の意図、アスプルンドの目指したランドスケープを明らかにする。 1-3 研究の位置づけ 残されたスケッチや図面等から、火葬場や礼拝堂、アプローチの構成の変遷やそのアスプルンドの意図について検討している研究は見受けられるが、シークエンス構成の変遷に関する研究は不十分である。本研究では、3Dモデルを作成することで、シークエンス...
フェルディナン・バック著「魅惑の庭」のスケッチから読み取る庭の構想に関する研究
1.序章 建築家ルイス・バラガンの作品を見ると、特徴的な庭を含んだ建築が多く見られる。その庭は木、花、水など様々な自然の要素や、壁の色、それらの配置のされ方などあらゆる点が考えつくされており、バラガンの庭への強いこだわりが感じられる。バラガンはなぜここまで庭にこだわったのだろうか。バラガンは自身の庭の作品に画家であり造園家であるフェルディナン・バックのスケッチからの影響を強く受けていると言われており、これが庭へのこだわりが生まれたきっかけではないかと考えられる。そこで本研究ではバック著の「魅惑の庭」に掲載される全36枚のスケッチを深く分析することにより、バック独自の庭の構想を読み取ることを目的とする。 2. フェルディナン・バック(1859-1952)とは 作家、風刺漫画化、アーティスト、社会批評家、造園家など多くの分野に着手している。地中海様式の庭のスケッチも多数作成しており、その庭の構...
建築のポシェを利用した採光手法に関する研究 −スティーヴン・ホールの作品をケーススタディとして−
B4の野田です。春季研究発表の内容を投稿致します。 第1章 序論 1.1研究の背景と目的 ポシェ(残余部分)とは、平面や断面において、空間を「地」と考えたときに「図」にあたる部分、すなわち壁・柱・梁およびそれに準ずる空間のことである。構造上の必要性ではなく、外観と内観機能の相互の要請によって発生するポシェは、近代建築ではあまり見られない。ここで、ポシェを積極的に取り入れている建築家スティーヴン・ホールに注目する。スティーヴン・ホール(1947-)は、光の空間を巧みに演出する建築家であり、光による空間体験に重点を置いた作品が多数ある。その中には、ポシェを採光手法として取り入れた作品が含まれており、スティーヴン・ホールがなぜ無駄とも言える部分=ポシェをあえて使用したのかは疑問である。 本研究では、建築のポシェを採光手法として扱ったスティーヴン・ホールの意図を明らかにすることを目的...