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現代建築の残余空間とラインの関係性に関する研究 ーSANAAの作品を軸としてー
B4の大滝です。春期の研究内容を発表させていただきます。 序章 0-1. 研究の背景と目的 0-1-1. ポシェの変遷 建築におけるポシェとは、建築の残余空間のことを指す。この概念の歴史は非常に長く、本来は建築の構造を受け持つ部分、空間を図として見たときの地にあたる部分を指すが、現代における使われ方は変化しているように思われる。近代以降、ポシェという概念は構造的に必要とされる厚みから解き放たれ、自由さを獲得した。建築のポシェは量塊から面へと圧縮され、かつて物質的に充填されていた残余空間は様々な要素を獲得し、変化してきている。現代的なポシェは残余空間が空洞化することで、図と地の関係こそ保たれているが双方空間になっているものなど多様な変化を見せている。 このようなポシェの変化は『「ポシェ」から「余白」へ 都市居住とアーバニズムの諸相を追って』(著 小沢明)にも記述されている。この本では、従来の...
建築空間における柱の機能と意味 篠原一男の住宅作品を対象として
B4の五味です。春期の研究内容を発表させていただきます。 キーワード:篠原一男 柱 機能 意味 序章 1-1研究の動機と背景 近年の建築技術の発展に伴い、建築の空間や部材の表現は飛躍的に増加している。柱を例とすると、本来は構造材として用いられていたが、今日では装飾としてや構造材とは感じさせない表現など多岐にわたる。戦後以降の住宅作品において、柱を空間の要として設計を行った建築家として篠原一男が挙げられる。篠原の建築は4つの様式に分類され、それに伴って柱の形状が変化することが知られている。篠原は生前に多くの空間言説を発表し、様式の既往研究も広く行われている。一方で柱の形状や配置による「間」の作り方や、柱に込められた意味の研究は行われていない。篠原の柱を研究することは、現代の多様化する柱空間を改めて考察する上で大きな意味を持つと考えられる。 1-2研究の目的 本研究では前述した4つの様式に...
工場併用住宅が持つ空間特性に関する研究 – 東京都大田区大森南地区を対象として-
M2の池上です。修士論文について、研究の途中経過を報告致します。 私は工場併用住宅がもつ、異種用途の混合が生み出す形態について関心を持ちました。決して相性の良くない工場と住宅の用途が一つの建築の中で実際にどのように構築されているのかを明らかにすることを研究テーマとしています。 ■研究の背景 東京都大田区は現在でも数多くの町工場が存在する「中小零細企業の町」である。その中でも特徴的なのは職住一体化が成された工場併用住宅(図1)であり、この場所において数多く見ることができる建築用途である。工場併用住宅はその特殊性のため容易な住替えは難しく、上層の生活空間の拡充のために建物を増改築する工夫を見ることができる。それらは細かく見ていくと同じ用途構成でも様々な形態や配置の差を見て取ることができ、この場所特有の街並み形成に寄与していると思われる。 工場併用住宅ついて踏み込まれた研究はされていない他、立面...
建築形態に対するパラメトリックデザイン手法の限界と展望 -habitat67をケーススタディとして-
学部4年の相川です。2016年度、春学期の研究結果を掲載します。 私はCPU技術の発展を背景に近年発展しているアルゴリズミックデザインを題材とした研究を行いました。以下研究概要を掲載致します。 0.序章——————————————————————————————- 0-1.研究の動機と背景 近年のcpu技術の発展は著しく各分野に多大な影響をもたらしている。実際の設計業務にいち早く取り入れられた技術として建築物のデータベースを施工から建築...
教会から住宅へのコンバージョン手法に関する研究 —イギリスの事例に着目した分析—
修士2年の山本です。前期の修士論文の成果を投稿します。 私はイギリスにおいて教会を住宅にコンバージョンする例が増加しつつあることに関心をもちました。その上で教会らしさをどう克服・活用し住宅へコンバージョンしているのかを明らかにすることを主題としております。 図1 教会から住宅へのコンバージョンの例 —————————————————————————————̵...
東京の高密度居住地に関する研究-フットプリントと分布による分析-
B4浜本です。春期研究発表の内容を投稿致します。 1.序章 1-1.研究の背景・目的 世界中には様々な高密度都市が存在している。都市において人間は一つの要素であり、大なり小なり都市の固有性を生み出す存在である。そこで人がより高密度で居住する空間は、よりその性質が色濃く表れ、その都市の形態や空間構成に強い影響を与えているものだと考えた。また、都市圏における人口の集中は続くものだと考えられ、その中で今後来たるべき社会状況を考慮し、コンパクトシティを考える必要があるのではないか。これらの背景を踏まえ、東京における高密度居住を数値により類型し、現況を記述し、その方法論を定位することを本研究の目的とする。 1-2.研究の対象 総務省統計局が提供する平成22年度国勢調査―世界測地系250mメッシュデータから求められた東京における人口の集中している場所、具体的には500人/ha以上の人口密度を有する地域...
木造密集市街地におけるCLTを用いた段階的都市更新に関する研究 –東京都世田谷区三軒茶屋二丁目を対象とした建て替えをケーススタディとして–
M2 佐藤滉哉です。修士設計について、ゼミ合宿までの途中経過を報告させて頂きます。 私の研究の大きなテーマは、「木造密集市街地における新たな都市更新手法」と、「木質構造部材CLTの有用性」についてです。この2つのテーマが私の研究のメインのテーマとなります。 動機としては、 1つ目のテーマに関して、都心周辺部に存在する木造密集市街地(下図上)は、老朽化や土地の有効活用を目的として大規模な再開発による都市更新が計画される。しかし、大規模な再開発故に、街並みを残したい住民からの反対や複雑な土地所有の問題もあり、進行し難く、従来のスクラップアンドビルドとは異なるアプローチが求められていると考え、設定しました。 2つ目のテーマに関して、建築は設計段階においてほぼ恒久的なスパンを想定して計画される。一方で時間が経つにつれて都市や建築に求められる要素は変化していく。その都度壊しては作り上げ...
ドローイングから読み解くザハ・ハディドの建築思考
B4小田です。春学期に取り組んだ研究の内容を投稿致します。 序章 1-1研究の背景 2016年3月31日、1人の建築家ザハ・ハディドがこの世を去った。新国立競技場問題によって日本中にその名広げることとなったはザハは、1983年香港ビクトリアピークのコンペティション優勝を機に現代まで、独自の表現力で人々を魅了し続けた建築家の1人である。中でもザハの描くドローイングは、「構造的配慮を欠いた」、「重力を無視した」といった言葉で解説される、断片化された形態が浮遊したような独特なものであった。ロシア・アヴァンギャルド時代、カジミール・マレーヴィチによって提唱されたシュプレマティズムにも影響を強く受けたとされるザハのドローイングには、どのような建築的思考が描かれているのか。 図1−1 ザハ・ハディド 図1−2 東京新国立競技場コンペ案/2012 1-2研究の目的 研究の目的は以下の2...
Glenn Murcuttの建築から読み取るサスティナブルデザイン ―自然をコントロールする環境装置―
B4の田中です。春学期研究発表の内容を投稿します。 キーワード:自然、環境装置、引用 第1章 序論 1.1.研究の背景 グレン・マーカットという建築家がいる。彼はプリツカー賞をはじめ、国内外の数々の受賞歴をもつ、現代建築界を代表する巨匠のひとりであり、現在もオーストラリアを中心に活動を行っている1969年に個人事務所を設立して以来、所員や秘書を置かず、コンピュータなどにも頼らず、設計に関わる行為を全て独力でこなすという姿勢を貫いており、個人住宅を中心に、プロジェクトを含めると500件近くもの設計を手掛けている。 その作品はオーストラリアの風土を見つめ続けた、サスティナビリティに富んだ住宅群に代表される。エアコンなどの設備機器に頼ることなく自然の通風をもたらすプランニングや換気口の配し方、光と影・風・害虫をうまくコントロールする精確な可動式ルーバーと網戸とガラス戸の3層の開口、水不足解消のた...
木造住宅密集地における住民参加型住宅の設計手法に関する研究 -東京都中央区月島地区の建て替えをケーススタディとして-
修士二年の小林です。前期までの修士研究の成果を報告致します。 論文編 序章 0-1.研究の背景 日本における戦後の風景は、高度経済成長期や都市化・工業化・グローバル化に伴う生活様式の変化によって更新され続けてきた。欧米諸国の都市の風景変化は既存の保存修復を行い、それらを維持しつつ更新を行ってきたのに対して、日本の都市は既存の町並みをあまり考慮せずに更新してきているように思える。例えば、マンションのような高密集合住宅は土地の効率や資産価値が重視され、既成市街地において住宅の形態変化・街の構造の変化・生活環境の破壊などの問題が生じるケースが多々ある。(図1) また、2004年に公布された景観法によって各地で景観形成の取り組みが進んでいったが、歴史都市を中心とする、地域のランドマークとなりうるような特徴的な景観の保全が主流となってしまっている。(図2) 0-2.研究の目的 都心部...