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渋谷迷宮空間ー残余空間に生まれる都市の魅力ー
01.背景 現在渋谷で計画されている渋谷駅の大規模な再開発。その計画は公開されている情報を見る限り、他の都市においても成り立つ普遍的なモノに感じられる。駅を中心として放射状に展開する渋谷において、この計画によって渋谷の魅力が失われていくのではないだろうか。渋谷は、社会による統制に捕らわれること無く、個による自由が至る所に見受けられる魅力を持つ。 02.都市分析 商業都市として渋谷は下図に示すように、駅を中心に大通りが放射状に展開し、そのアンカーとなる位置に大型施設が繋がる。また、渋谷全体を機能で分けると山手線を軸として東西に分断され、西は商業、左はオフィスが多くを占めている。渋谷は谷底の街として、駅を中心に大資本の対立によって形成され、構成する通りは駅を中心として放射状に広がる大通り、それを円弧状に繋ぐ通り、全体を張り巡る迷路状の小路の3つに分けられる。 03.計画...
東京山手における住宅地の商業化過程と住居系建築物へのテナント進出の様態に関する研究 -中目黒・代官山・原宿をケーススタディとして-
序 0-1.研究の背景と目的 都市の変容を捉える上で大規模な再開発の影響だけでなく、その周囲の小さな変化にも注目する必要があると考える。 東京山手にはかつては木造の戸建住宅やアパートが建ち並んでいた閑静な住宅地であったが、バブル崩壊(1990年)以降に商業化が進行し、住と商が混在した状態となっているエリアが存在する(図1)。それらのエリアは大規模な再開発ではなく、住宅が商業ビルに建て変わる建物そのものの更新や住居系建築物に商業用途が進出することで住商混在の街へと変容している。特に商業用途が進出する住居系建築物においては用途とハードウェアのミスマッチングが起きている(図2)。しかし、これまでの研究では用途ごとの分布様態以上に踏み込んだ研究が成されておらず、住居系建築物がどのようにして商業用途を受容しているのか、また従前の閑静な住宅地がいかにして住商混在の街へと変容したのかについては詳細に述べ...
都市の中のスキマ -人々の拠り所となる公共的滞留空間-
■都市への「スキマ」を考える -滞留空間の創出- 現在、都心に近い都市の多くが、インフラ沿いに建物が高密度で建てられ街が形成されている。周辺に公園などの場は少なく、閉ざされているために滞留することのできる空間が少ない。滞留空間の消失は人々の交流の機会を減らすことに繋がると考えている。この提案では街の中心部に、商店街と駅、公共的な場の統合により滞留空間を生み出す。 様々な場所が集積する都市において、場所と場所の間に存在しうる都市の「スキマ」は、滞留空間がなくなりつつある都市空間において人々の拠り所となる場所になる力を持った場ではないだろうか。このような場は公共性を持った場とも言うことができるのではないかと考えている。 ■下高井戸という街への「スキマ」 -公共的な場としての商店街の再構築- 今回の敷地となる下高井戸という街も、建物が密集した都市といえる場所である。下高井戸商店街は東京都世田谷...
賃貸型集合住宅のリノベーションにおける外部空間の設計手法に関する研究
0.序 0-1.研究の背景・目的 賃貸型集合住宅のリノベーションが注目されて久しい。こうした集合住宅の多くは、供給することに主眼が置かれた団地型住宅や工業化住宅であり、現代の多様化した生活に対応できず荒廃し、近年では様々な手法を用いてリノベーションされている。集合住宅のリノベーションは公的集合住宅での蓄積が多く、約30年の間で間取りの変更といった再生からエレベーターや階段といった共用部を含めた建築全体の再生へと手法が進歩している。このように手法が進歩する中、近年ではウッドデッキの付加や、広場の形成といった外部空間を設計対象にしたリノベーションが、住環境全体の再生を図り、地域コミュニティとしての役割や都市景観向上に寄与している。 こうした外部空間への手法は、リノベーションにおいて可能性を感じさせるが、その手法がどういった意図や効果を持つのか、リノベーションの評価として不明瞭である。そこで、本...
都心型裏庭コミュニティ
1.問題意識 1−1湾岸の現状 湾岸に人々は非日常な空間を求めてやってくる。その際 ではそこに居住する人々の日常が存在している。点的な 開発が進み、点的な暮らしが民間中心の宅地開発により 強いられている。針をさしたようにマンションが乱立す ることで、地域としての関係性の希薄さが大きな問題と してある。 1−2非日常と日常の関わりかた 湾岸では非日常を提供する場として、大型商業施設がつ くられている。内部空間に非日常的なものを集約させて いるのだ。同じく、日常であるタワーマンションにも現 在、ある程度の生活に必要な空間は内包されつつある。 せっかく、周辺環境や周辺施設は整備され、巨大な面と して利用できるポテンシャルを持っていながら利用でき ていない。そんなバーチャル的に集約された非日常空間 と日常空間の2つで成立している街は、点としての暮ら しをさらに助長させ全体として無菌な街をつくりあ...
川越のミチシルベ ー地元還元型の新しい観光案内所ー
01.敷地背景 敷地は埼玉県川越市。年間600万人を超える観光客が訪れる観光都市である。江戸時代には親藩・譜代の川越藩の城下町として栄えた都市で、「小江戸」(こえど)の別名を持つ。城跡・神社・寺院・旧跡・歴史的建造物が多く、文化財の数では関東地方で神奈川県鎌倉市、栃木県日光市に次ぐ。歴史まちづくり法により、国から「歴史都市」に認定されている。これは埼玉県内唯一の認定である。戦災や震災を免れたため歴史的な街並が残っており、海外の旅行ガイドブックに紹介されることも多く、最近では外国人旅行者が多い。 2008年に東京メトロ副都心線、2013年に東急東横線がそれぞれ開通され交通インフラが発達したことによって池袋・新宿・渋谷といった都内からのアクセスが非常に便利になり、観光地としてはもちろん住居地としての魅力があり、今後観光客・住民が共に増えていくだろう。 02.川越のシンボルと祭り...
境界のかたち -麻布米軍ヘリ基地地下返還計画-
01.背景・目的 戦後70年を迎える今年、戦争体験者の高齢化により失われてはならない記憶が失われようとしている。このような世代の転換期において、私たちのような戦争を知らない世代が戦争について考え、記憶を継承することが求められる。 本設計では、私たちが戦争を自らの問題としてとらえ、考えを巡らせるため、米軍基地の地下に平和祈念館を提案する。 02.敷地 敷地は、六本木の麻布米軍ヘリ基地とする。日本の旧陸軍兵舎からは始まり、現在は米軍基地として軍用地の歴史を辿ってきた。基地返還の過程で、現在アメリカが使用している基地はハーディーバラックス、不法占拠地、代替返還予定地の3つの領域が存在する。ハーディーバラックスは正規の米軍基地であり、新聞社やヘリポートなどの重要機関から成る。不法占拠地は、六本木トンネル開通の工事のために一時的に日本の土地と貸与したものであるが、工事終了後も返還されずに不法占拠さ...
スイスの現代住宅におけるエコロジーと表層に関する研究
序 0-1 研究の背景と目的 近年、世界的に地球環境と人間社会との共生の在り方が問い直されるようになった。特に環境保全において建築の分野でも、各地域における固有の風土の特性を活かし、適応していくような環境形成の在り方が求められている。スイスはサステイナブル建築の分野で様々な先進的な取り組みを行っており、特に住宅の表層に関して、スイス固有の環境や地域性とサステイナブルな技術が色濃く反映されている。現在、スイスの現代住宅が雑誌等各メディアにおいて、周辺環境の対応などといったデザイン的な側面と技術的な側面に関して、それぞれを取り上げ、論じられているものはあるが、デザイン面と技術面を統合した観点から建築を評価しているものは見られない。建築のデザインと技術を接続して先端的な建築を評価することは、今後サステイナブル建築の新たな価値を確立するにあたって重要である。スイスの建築の表層は、厳しい気候とエネル...
豊洲新市場計画 -間伐小径材を用いたサステナブルな卸売市場の設計-
研究の目的と背景 背景 築地市場が豊洲へ移転することが決定した。その背景には施設の老朽化、スペースの不足などがある。こうした中で、築地市場は仲卸市場に天井をはることで2階を物置として利用したり、一時的に屋外に商品を放置したりとした建物を拡張するための対応がなされてきた。社会背景の変化などから市場のあり方が変化する中で、市場が移転しても将来的に必要規模が変化し、同様の問題が生じることが考えられる。こうした変化に対応するため、解体や増減築を考慮した設計をすることが望ましいが、現状の豊洲新市場の計画ではこうした変化に対応した計画となっていない。 一方、近年木造建築への注目が高まっている。木は「環境に優しい資源」であり、加工が容易なため建物を解体した後に利用の間口が広いなどの様々な利点がある。現在計画中の豊洲新市場の課題を解決する手段として木を使い、解体や増減築が可能な豊洲新市場の計画が可能ではな...
ルイス・バラガンの建築作品における空間の奥行についての研究 ‐絵画的空間構成法をシークエンスの前後関係から読み解く‐
修士二年の矢田です。前期までの修士論文の成果を掲載します。 1 序論 1-1 背景 ルイス・バラガン(Luis Barragan 1902-1988)はメキシコを代表する建築家の一人であり、光、素材、スケールなどにおいて独特な手法を確立した。彼に関する研究では、バラガンの建築空間内の色彩構成を動線と共に記述した小林らによるものや、内部構成を公私空間の連結や配置によって記述した上野ら、空間のシーンにおける壁や天井、開口の面積割合を動線と共に記述し、公私室空間の階層性を提示した井上らの研究がみられる。 本研究室においてはバラガンの建築を絵画的空間の集合体として解釈し、その手法をシーンの中で抽出した木村によるものがある。本研究では木村氏の継続研究という位置づけの論文である。 1-2 先行研究 明治大学大河内学研究室卒業の木村宜子氏の論文の中では、バラガンが建築を作る際の方法や影響を受けた人物につ...