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商業施設に付設した屋外空間のサードプレイス的利用に関する研究

B4の近藤です。2020年度春学期に取り組んだ研究内容について発表いたします。

1.序章

 家庭(第1の場)でも職場(第2の場)でもない第3のとびきり居心地の良い場所として、 サードプレイス1)という言葉がある。日本ではサードプレイスを持たず、家庭と職場の2地点滞在型の人が多い中、今後サードプレイスの需要が高まると考えられる。

 また、ここ最近では多くの商業施設に付設した屋外空間設計がされており、家庭でも職場でもない都市の公共空間としてサードプレイスの役割を担うようになるのではないか。

 本研究は現在のサードプレイス空間の定義を再考するほか、利用者の行動実態を把握し、どのような空間づくりがなされているか明らかにすることを目的とする。

2.サードプレイスについて

 日本では大きく交流型・マイプレイス型の2種類に分かれ、交流型に関しては社交的交流型、目的交流型に分けられるとあるが、調査をしてマイプレイス型にも2種類あるのではないかと感じた。
⑴グループマイプレイス型(新型):知人と個人的な時間を過ごす
⑵ひとりマイプレイス型(従来型):一人で読書やPC作業などを行う
以上の二つである。

 実際ひとり空間2)と呼ばれる漫画喫茶やカプセルホテルなど日本特有の商業空間は多くある。しかし、交流型とマイプレイス型のある種中間のような「グループマイプレイス型」を許容する空間はあまりない。そこで最近多くみられる商業施設に付設した屋外空間が、都市の新しい公共施設としてグループマイプレイス型利用も可能にした空間となると考えた。

3.対象・方法

 屋上空間は昔、遊園地などの「子どものための」場所だったのに対し、現代は「大人のための」憩いの空間になっていると認識されている。今回は、現代の「都市の公共空間」として商業施設に付設する屋外空間の中から新しいサードプレイス空間となりうる2つの事例に絞って現地調査を行う。1つ目は地続きの新しい公園のような屋外空間として設計がされたユニクロパーク、2つ目は建物に巻き付くように屋外空間が配置された渋谷パルコとした。

 2つの事例に対して平日休日それぞれ現地調査を行う。日が出ている10時~18時の間、1時間ごとの人を観測していく。これらの内容に関する人数をそれぞれExcel表に示しグラフを作成するほか、作成した簡易平面図に人物のプロットを行い空間利用も分析していく。

4.分析
4-1.ユニクロパーク分析

 平日休日どちらもメインターゲットの子連れ家族以外の利用はそもそも割合が少ないのだが、規則性は見られずになんとなく立ち寄る利用がほとんどだった。
 空間の設えとして、子供が遊ぶための遊具空間と休憩スペースの設計がそれぞれされているのに対して、親が子供を見守れる位置の休憩スペースがない。結果、休憩スペースの利用者は少なく、建物の小さな影に身を寄せたり、地面にしゃがみこんだりする親が多くみられた。

4-2.渋谷パルコ分析

 平日も休日も昼頃の時間帯で徐々に利用者が増え、更に夕方で増えるというように、細かい時間は異なるが、利用者の増加形態が同じだった。昼頃は影になっている南の空間に人が多いが、夕方になると夕日を眺める為に北側に人が増えるという点も同じであった。
 空間の設えとしては、床と階段とベンチの部分が同じ木デッキの素材で設計されているため、階段にベンチのように腰掛ける利用者が多くみられた。また、ベンチは連続した長いデザインであったため、ひとり・グループが混在して利用されており、さらに、背もたれがなく向きを変えられることから比較的近距離で他人同士が利用していた。

5.結章
5-1.結論

 2事例の分析の比較より、メインターゲットは周辺環境(立地、商業施設自体の用途)が大きく影響するが、同時に空間の設えも重要になってくることがわかった。特に空間の設えはその場でのアクティビティや利用者を想定しての設計が重要である。また、屋外空間は外部天候に左右されるため、四季で使われ方が変化すると考えられるが、特に夏の利用を促すならば建築的操作が必要となる。
 一方、利用者層が異なると利用時間にも違いが現れる。しかし、日差しや景色など方角が重要となることは共通している。

5-2.考察

 商業施設に付設した屋外空間のサードプレイス的利用の現状として、交流型のサードプレイスにはなりにくいが、グループ・ひとりマイプレイス型をどちらも許容するサードプレイス空間だと言える。ただし、雨や日差しなど天候への配慮がまだ足りないように感じ、改善していく余地はある。
 また展望として、今回はアウトレット・都心部という住宅街ではなくわざわざ訪れる立地の調査だったため、商業施設利用者の利用が主だった。一方同じような空間づくりが住宅近くの建物などで用いられれば、より日常的なサードプレイス空間となり、施設ではなく屋外空間そのものを目的とする利用者が増えるのではないかと考えられる。

参考事例
1)レイ・オルデンバーグ:サードプレイス コミュニティの核になる「とびきり居場所の良い場所」,みすず書房,2013年
2)南後由和:ひとり空間の都市論,ちくま新書,2018年

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