You are here: Home // NEWS // 秋葉原電気街の看板形式とテナント調査による街路特性に関する研究

秋葉原電気街の看板形式とテナント調査による街路特性に関する研究

B4後藤です。2020年春学期に取り組んだ研究内容について発表いたします。

序論 研究の背景・目的・位置付け

1-1研究の背景

建築は看板を付属することでも収入を得ている。現代の東京の都市では、取り付けられている建物と関係の無い企業や商品の広告までもが屋上や壁面に掲げられ、都市は広告イメージで溢れている。こうして建築の壁面や屋上は広告を掲げるための第2の土地として莫大な収入源となっている。これらは法規上の許可を得た上で一定期間屋外に設置する屋外広告物として扱われているが、一方では一時的に屋外に設置された法規上グレーな広告物も存在し、大量にその姿を街路に現している。これまで都市の研究において、主に壁面広告物が都市景観を形作るものとして焦点を当てられてきたが、法による拘束を受けない広告物や街路に設置されたオブジェクトによる自然発生的な都市景観の形成にも焦点を向ける必要がある。

秋葉原は他の都市と比較してみても屋外広告物の一種である壁面広告物の掲出割合が特に高い傾向にあると調査されている。一方で電気街は資本力に乏しく、入れ替わりの激しいオタク1)系店舗が高い密度で犇めき合う、他の都市とは一線を画した商業地域であり、独特な性質を持つユーザー層によってその形を変えながらも今日まで賑わい続けてきた特殊な場所であるとして様々な研究の対象となってきた。ここでは壁面の広告物のみにとどまらず、様々な広告形態のものが街路に滲み出している。業種ごとの特性の違いに伴い、路地・店舗ごとに看板形式の違いがおのずと生まれている。

商業的価値の低い立地に好んで進出する傾向のある特殊な店舗が多く見られるこの場所を調査することによって、看板・広告物・オブジェクトが作り出す街路景観と都市の空間特性の関係性を見いだすことができるのではないだろうか。

1-2研究の目的

本研究では、都市における屋外広告物(以下、固定式屋外設置看板と呼ぶ。)、屋外広告物として規制されていない広告物(以下、可動式設置看板・広告物と呼ぶ。)、また人々の行動に影響を与え得る街路上の様々なオブジェクト(以下)、街路に設置されたオブジェクトと呼ぶ。)の掲出形態と特性を把握する。秋葉原電気街と呼ばれる地域に焦点を当て、具体的に以下の点について明らかにする。

1)対象地域の建物用途・テナントの業種(3章)

2)街路ごとに見た固定式看板と可動式看板・広告物の集積(4章)

3)街路に設置されたオブジェクトの抽出(4章)

4)卸売、小売業・飲食業・サービス業の看板・広告物掲出実態(5章)

1-3研究の位置付け

本研究に関する既往研究は、秋葉原の都市の変容に関するものと、都市の建築のファサードを覆う広告看板に関するものと街路構造とサインの分布特性に関する研究の3つに大きく分けられる。

本研究は、それぞれの分野に対する位置付けとして、秋葉原電気街に着目した建物用途・テナント調査を踏まえ、その自然発生的な都市変容独自の街路景観の形成について、看板・広告物・サインの調査から分析・考察するという研究である。テナントごとの入居階・面する街路の偏りが、看板・広告物設置形式の偏りへと繋がり、街路ごとの特色となって行き交う人々の体験を作り出しているという仮説のもと、研究を行う。

第2章 研究方法

2-1研究概要

対象地域を街路ごとにナンバリングし、各街路に面する建物用途・入居テナントと、それらが掲げる看板・広告物の形態、掲出場所に加え、街路に設置されたオブジェクトを調査し、データ化する。その結果が街路ごとに面する店舗の種類の偏りや道路幅員などの空間構造との関係性を持つか否かを、データを用い考察する。調査はテナント調査とサインの設置形態に関する調査の2段階で行う。

2-2 調査対象地域

対象とする東京都千代田区外神田1丁目、3丁目は無数の店舗が犇めき合う高密集商業地域であり、都市広告物の活用が極めて盛んであると考えられる。この地域は中央通りに面しており、表通りにおいても裏通りにおいてもオタク系店舗の集積が顕著に見られる場所でありながら、住居・小学校・公園なども有する場所である。調査対象地域は全41街区に分けられ、街路は48にナンバリングした。

2-3テナント調査

対象地域の街路に面する建物のテナントを平面的・立体的に調査。秋葉原電気街のテナントに関する既往研究に倣い図面に表現する。

2-4サインの設置形態に関する調査

街路の性格づけを決定する要因であるとも考えられる、街路から認識できるサインを分類し、設置場所や広告内容の調査をし、建物用途・テナントとの結びつきを考察する。

調査対象物の分類は表2.4、図2.4に表す。

※設置の時間的安定性について(常設か仮設か)

設置・撤去の際に費用と手間のかかる、固定式の掲出形態をとるものを時間的安定性の高いものとした。(通常、設置に至って法規上の許可申請が必要。)それらを固定式屋外設置看板と称し、5つに分類した。また、店舗の開店・閉店ごとに設置と撤去を行う必要のあるものや、専門の業者や申請を通さずに容易に設置・撤去することのできるものを時間的安定性の低いものとし、それらを可動式設置看板・広告物と称し、5つに分類した。そして、各街路にて認識された看板や広告物以外のオブジェクトを街路に設置されたオブジェクトと称し、4つに分類した。

第3章 対象地域の建物用途・テナントの業種

本章では、2-3で述べた分類方式に従って行った調査の結果を、図面上に可視化し、秋葉原電気街の建物用途・テナントの分布形態の理解することによって都市構造を把握する。

3-1卸売・小売業店舗の平面・立体分布

比較的大きい店舗を構えている家電量販店は中央通り沿いに多く見受けられ、同一の建物に立体的に展開しているものが多い。商業価値の高い好立地に進出しやすい業種であることが見て取れる。

電子機器専門店は小規模な店舗が多く、低層階に多く位置していること、特に街路36,39のあたりに多く展開していることが分かった。

電子機器以外のオタク系商品の殆どを占める趣味の雑貨を販売する店舗は大小様々な規模のものがあり、その需要の幅広さとオタク文化の奥深さを現しているように感じた。資本力のある店舗・ない店舗の双方を持つのはこの業種ならではのことであると考えられる。アクセシビリティを重要としない小規模店舗が卸売・小売業の中で一番多い。

3-2飲食店の平面・立体分布

一般飲食店は低層階に殆どが路面店であり、メイド喫茶などは小規模のものが大量に商業ポテンシャルの低い場所に位置していた。比較的常時人通り・賑わいのある、街路14,26,31,39あたりではメイドが大量に列を成し、各々の店舗へ通行者を呼び込もうと客引きを行なっていた。客引きで多く客を獲得している様子だったため、店舗が視認性の低い場所に位置していたとしても看板の必要性は高くないと考えられる。インターネットカフェは大通りに面している店舗で上層階に位置しているものが見受けられた。

3-3-1 サービス業店舗の平面・立体分布

サービス業店舗の抽出では娯楽系のサービス業店舗が大小規模を問わず大通り沿いに多く展開していることが目立っている。また、風俗店は店舗面積の小さいものが表通り沿い、裏通り沿いを問わず上層階に多く位置していた。階を跨いで展開している風俗店は一つも見受けられなかった為、風俗店自体が全体的に小規模資本による経営であると考えられる。

3-3-2 娯楽部門サービス業店舗の細分類

娯楽部門サービス業店舗の抽出では、ゲームセンター、アミューズメント系の大規模な店舗が一箇所に固まっていることが目立った。2020年3月に、コロナ騒動による不景気で秋葉原に5店舗展開していたゲームセンターが倒産・閉店したこともあり、今後のゲームセンター・アミューズメント系店舗による更なる都市の変容が想定できる。カードゲームをする集会所が都市のいたるところに点在していることは、趣味によって人々が繋がる秋葉原ならではの光景であると感じた。

第4章 固定式設置看板と可動式看板・広告物の設置場所

4-1全階のサインの街路ごとの集積度

本章では、2-4で述べた分類方式に従って行った調査の結果を、図面上に可視化し、看板・広告物の設置形態が各街路特性の差別化にどう影響しているのかを探る。ここでは、各街路における固定式設置看板(青)、可動式設置看板・広告物(赤)、街路に設置されたオブジェクトの数(緑)を各々街路長で除した値を集積度①、面する店舗数で除した値を集積度②と定義し、その集積度を濃淡で色分けした街路図を表す。(図4.1)

可動式設置看板・広告物は固定式設置看板と比較して幅員の狭い街路にも高密度に集積していることや、固定式設置看板が幅員の大きな街路沿いに多く集積していることがわかる。また街路に設置されたオブジェクトは大通り沿いに多く見受けられる。これは街路に設置されたガチャガチャなどの数が圧倒的に大通り沿いに多かったことが影響している。

図4.1 上段:集積度① 下段:集積度②

(左から、固定式設置看板、可動式設置看板・広告物、街路に設置されたオブジェクト)

4-2-1固定式設置看板の街路ごとの集積(階別)

幅員の小さな街路では固定式設置看板の設置が低層階に集中しており、高層階の設置が顕著に見られるのは幅員の大きな街路であるということがわかる。特に壁面看板や屋上取付看板・屋上広告塔などの固定式設置看板は遠方からの視認性が高い為このような結果になったと考えられる。

4-2-2可動式設置看板・広告物の街路ごとの集積(階別)

可動式設置看板・広告物は、幅員の大きさによらず、大通り沿いか裏通り沿いかに関係なく街路にその姿を現していると考えられる。固定式設置看板よりも設置が容易且つ低コストであるため上層階の店舗では窓貼付広告物などが多く設置されていた。幅の狭い街路においては4階以上の高さの壁面設置の広告物の視認性は極めて低くなる為、幅員の狭い街路に面する店舗は上層階に位置する店舗の看板が路面に設置されていることが多い。

第5章 街路に設置されたオブジェクトの抽出

電気街の大小様々な店舗群は街路に様々な看板や広告物を掲出し、街路に賑わいを見せているが、街路を行き交う人々の体験を形作っているのはそれらの存在だけではない。秋葉原電気街独特であるとも言える電子部品専門店の商品が街路に広く陳列されている光景や、ガチャガチャやUFOキャッチャーが街路に大量に設置されている光景は、街路特性を語る上で欠かすことのできない要因である。これらの街路に設置されたオブジェクトを、集積度とは別に、地図上に設置位置のプロットを行うことにより、街路特性の把握を試みる。ここから、路面に商品を陳列している店舗は街路の幅員や表通りか裏通りかに関係せずに分布していることがわかった。また路面に商品を陳列している店舗は殆どが電子機器専門店で、街路は商品を物色するユーザーで溢れていた。また、観光客にも人気のあるガチャガチャは、大通りに近い場所に多く設置されていた。店舗専用販売機は路面店の一般飲食店のものがほとんどであった。

第6章 卸売、小売業・飲食業・サービス業のサイン掲出実態

6-1卸売・小売業のサイン掲出形態

卸売・小売業に分類される各店舗の掲出するサインを類型化し、掲出形式による3種類と、さらに細かく分類した14種類(a~h)の細分類ごとにその割合を表した。卸売・小売業ではそのいずれの部門においても可動式設置看板・広告物の割合が多いということがわかった。また、電子機器・メディア・金券・宝くじ販売専門店(Ab,Ae,Ah)は他と比べて極めて固定式屋外設置看板の割合が少なく、壁面ポスターや壁面貼付け広告物などの壁面広告物の割合が極めて高いことから、看板の視認性よりも可変性の高い情報を通りすがる利用者に向けて発信することを重要視していると考えられる。また、利用者に観光客や家族連れも多く含まれる家電量販店の店舗前にはガチャガチャが設置してある割合が多く、大通り沿いに多く位置するこれらの店舗の外観とともに秋葉原らしい景観を形作る一端を担っていると感じた。

6-2飲食業のサイン掲出形態

一般飲食店とコンセプトカフェ・メイド喫茶などのその他飲食店とでは固定式屋外設置看板と可動式設置看板・広告物の割合に大きな差は見られなかったが、サインを14に分類した割合を見てみるとその他飲食店の窓貼付広告物の割合が多いことがわかる。これは、一般飲食店が視認性の高い立地であるのに対してその他飲食店は雑居ビルの上層階に多く位置していることが起因した結果であると考えられる。

6-3-1サービス業のサイン掲出形態

サービス業のサイン掲出割合の比較では、風俗店の固定式屋外看板の割合が極端に少ないことが目立っていた。

6-3-2サービス業娯楽部門のサイン掲出形態

第7章 結語

7-1研究の総括

現地調査と、その結果の地図へのプロットを通して個々の建物用途・テナントの業種と、都市としての業種の混在の現状を可視化し、各業種の立地、店舗数を抽出することができ、建物用途・テナント理解という側面から平面的且つ立体的に街路特性について考察することができた。

固定式屋外設置看板は、その設置階が高くなるにつれて大通り沿いの集積率が高くなり、可動式設置看板・広告物は路面店であろうと上層階であろうと大通りか裏通りかに関係しない集積率を表した。いずれも街路に面する建物の用途や入居するテナントの業種の性質がこの結果に影響するため、3章の結果とサインを多く掲げる3種類の業種のサイン掲出実態を比較した6章の結果を参照して考察する必要がある。これらを比較すると、階をまたいで営業している大型の店舗の固定式屋外設置看板が多いことや、固定式屋外設置看板を設置していない高層階に位置する店舗は路面に可動式設置看板・広告物を掲出しているだけの店舗が多いため高層階での可動式設置看板・広告物の集積率が低くなっていることがわかる。

街路に商品を陳列している店舗は電子機器専門店がほとんどであり、その光景の分布は街路の表通り裏通り、幅員の大きさに関わらず展開していたことや各所に設置されていた自動販売機が、大通り沿いには数が少なかったことを明らかにし、道ゆく人のアクテビティに直接影響を与える街路に設置されたオブジェクトの位置関係を把握することができた。オープンスペースに人溜まりはできず、幅員の大きさに関係なく街路に陳列された商品を物色する人々が密集する。

路面に商品を陳列することで歩行者を取り込んでいる路面店の中には看板を設置していない店舗が確認できたこと、上層階に位置するコアなオタク系店舗にも街路から確認できる看板がないものは多く見受けられたことから、他地域の店舗で見られるような、店舗のブランドイメージに重要性は無く、消費者(一部のターゲット)が必要とする商品にのみ重要性があるという考えや、店舗の情報を暗黙知として持っていることを前提に来店する消費者のみをターゲットにしている店舗が多いことが証明できた。

7-2本研究で得られた知見と課題

本研究では、主として建物用途・テナント業種の位置関係とそれらの看板・広告物・街路オブジェクトの結びつきに関する調査・分析に留まり、テナントごとの敷地面積の比較分析や看板自体の具体的な形状、広告内容の細かな分類をも対象にした分析は今後の課題として残されている。しかし秋葉原電気街において街路から認識できる大量のサインと密集商業地域の現状の建物用途・テナント情報の結びつけにおいては知見を得ており、自然発生的な街路景観とその地域性を模索する上で示唆に富むと考えられる。

参考文献

・山田周平:秋葉原地域における空間利用とその変容に関する研究,明治大学2010年度修士論文

・笈川竜:GISを用いた秋葉原地域におけるテナントの立地特性と変容に関する研究,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp629-630,2013,8

・長谷川貴哉:秋葉原地域におけるオタク系店舗の分布様態とその進出,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp337-338,2016,8

・森川嘉一郎:趣都の誕生 萌える都市アキハバラ,幻冬舎 2003

・槇究:複数の看板を挿入した街並み画像の印象評価 -看板の色変更に関する研究(その2)- ,日本建築学会環境系論文集,695,pp.55-62,2014.1

・山本琢人、嘉名光市、佐久間康富:低層部が形成する街路景観の印象評価に関する研究 -大阪御堂筋の沿道建築物を対象にして-,日本建築学会計画系論文集,709,pp.661-668,2015.3

・若山磁、高瀬啓文、浦木拓也、夏目欣昇:街路景観を構成する色彩・材料・部位のメッシュアナリシス,日本建築学会計画系論文集,615,pp.121-127,2007.5

・片渕和啓:渋谷に見る建築群のファサードに関する研究

・井上信次郎:広告看板と建築の関係に関する研究 -ファサードにおける開口、壁面、看板の割合分析を通じた商業建築のあり方- ,日本建築学会大会学術講演梗概集,2001.9

・加藤暸:繁華街の街路景観における屋外広告物に準ずる広告物の掲出実態と空間特性 -銀座繁華街のファサードに表出する広告物の現況調査から- ,日本建築学会計画系論文集 第81巻 第730号,2741-2751,2016年12月

・菊田遥子:街路構造とサインの分布特性に関する研究 -新宿7丁目を対象として-早稲田大学創造理工学部社会環境工学科 景観・デザイン研究室2012年度卒業論文

Copyright © 2020 OKOLAB.net. All rights reserved.