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築土構木ー環境装置としての首都高再生ー

B4の川上です。卒業設計の梗概を掲載致します。

 

1.背景

1-1 土木バッシング

 近年の土木は人や自然に負荷を与える罪深き存在として批判の対象になっており、建築と区別し軽視され、地形をキャンセルする経済の道具として利用されている。

1-2 矛盾を抱える近代土木

 批判の対象である一方で、土木は常に人々の生活に必要不可欠であるという事実が存在する。

①都市のあらゆるインフラを支えている。

②土木の語源に築土構木という中国の言葉がある。それは、本来土木が自然と共生する人々の生活を守る利他的行為であるということを示しており、現在区別される建築と土木を包括していたと考えられる。

1-3 土木に罪はあるか

 経済に従順に対応している土木そのものには罪はないのではないか。建築を通して近代土木と人々の関係性を再構築し土木の矛盾をほどくことを考える。

2.敷地

2-1 日本橋

 今回敷地とするのは、日本橋である。かつて川沿いに市場や店舗が集まる河岸を形成し、日本の物流・経済の中心として繁栄した。今もなお、首都高周辺はほとんどがオフィスビルまたは商業施設で、歴史ある企業や財閥が数多く構えている。近年はますます再開発が進み、コレド室町の開店など盛り上がりを見せている一方で川沿いの活気は乏しい。

2-2 日本橋首都高速道路

 1964年の東京五輪の交通整備事業に伴い、用地買収が不要な日本橋川の上に首都高速道路が架けられ,以来批判の対象となっている。そして昨年秋、老朽化に伴い地下化と完全撤去が決まった。かつて日本橋の景観を損ねた近代の土木の撤去により江戸の日本橋を復元しようという意図で計画が進んでいる。

 しかし、歴史を積み重ねながら都市更新を行う東京において、江戸を絶対的として近代の土木を壊し、昔の風景を再現する近代殺しに疑問を感じる。また、周辺を観察してみると、首都高が既に周辺を決定づける重要なコンテクストとして働いていることが確認できたことから、首都高の完全撤去をするべきではないと感じた。

3.提案

 地下化が決定し、街の中で役割が消えて異物化した首都高を完全撤去せずに日本橋に消化させていくことを試みる。既存の首都高を断片化していき、それぞれが川沿いの要素と呼応し面や階段が発生していくことで、巨大な土木構築物に人が入り込む隙が与えられていく。

 こうして細分化された土木が人々の身体へ働きかけ、それぞれが空間を解釈する。風が吹き抜ける箱桁の中で休憩したり、暗くて低い高架下で映画をみたり、多様なアクティビティを誘発するセレンディピティに富んだ都市の草原となる。またそれらは以前のインフラとしての記憶を宿しており災害時には防災拠点となる。イベントスペースであった場所はコンテナを置く場所になり、ビルのベランダであった広場は一時避難所になるなど、重要なインフラへと変化する。

4.結果

 ここでの旧首都高は日本橋において人々が自由に考えふるまうことを許容する都市空間であると同時に、人々を守る支えとしての構造体でもある。土木とも建築とも区別ができない。

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