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銭湯再生におけるコンバージョン手法に関する研究ー銭湯要素の扱いに着目してー

B4の柚木です。春学期に行った小論文を掲載させていただきます。

序章 研究の概要

0-1 研究の背景、目的

 近年建築業界では再生建築が注目されている。その中でもコンバージョン手法は既存の用途から用途変更をして新たな機能を持つ建築に再生させる手法であり、多くの再生事例が存在する。また近年の再生では日本特有の建築である銭湯が対象となることが増えており、建築雑誌やインターネットの記事に取り上げられることが増えてきている。銭湯は古くから日本人にお湯を提供し、地域の交流の場として栄えた地域施設だが、時代の流れにより衰退の一途をどっている。しかしそのような状況においても再生し新たな施設へと転用した事例が存在する。

 本研究では既存要素に着目してコンバージョン手法を分析するため、既存用途により建築的特徴の強い銭湯をケースタディとして、銭湯の要素が再生後にどのように扱われていくのかを分析し、コンバージョン再生における既存建築の要素の扱い、銭湯の再生においてどのようなプロセスで再生するのかを明確にする。また既存要素に着目して研究を行うことで、今後の銭湯のような既存建築の特徴が強い建築のコンバージョン再生の再生手法の知見を得ることを目的とする。

0-2 研究の位置づけ

 これまでの研究においてはコンバージョン再生に着目した研究は多数存在する。またその分析方法としても平断面を軸とするものから空間構成要素に着目したものまで多数ある。しかし既存の機能を構成する要素に着目した研究はなされていないので、コンバージョン研究における新たな視点を提案する研究になると考える。また銭湯を対象としたコンバージョン研究はなされていないので、この分野における先行研究になると考えられる。

0-3 研究の方法

 本研究では再生した銭湯の再生前後の内観、外観写真を用いて分析する。またその分析においては銭湯の建築的特徴を表す要素を抽出し、各要素が再生の前後でどのように扱われているかを分析する。また設計者、銭湯や転用後施設のオーナーの言説からどのような意思決定を経て要素の維持、撤去が決まったのかを分析する。

第一章 研究の対象とその概要

1-1 銭湯の概要

 銭湯はお湯を貸してお金を受け取る公衆浴場である。温泉施設のような天然のお湯を使うのではなくて、人工的に水を温めてお湯を提供する。温泉は温泉法という法律のもとに環境省の管轄である一方で、銭湯に特化した法律はなく公衆浴場法のもとに厚生労働省の管轄にある温浴施設である。

1-2 銭湯の歴史と変遷

 銭湯の歴史は日本に仏教が渡ってきた時代にまで遡る。仏教では沐浴の考えがありお寺内にお風呂を備えていて、そのお風呂を庶民に布教目的で貸し出したのが銭湯の始まりと言われている。その後平安や鎌倉時代になると裕福な家庭の家にお風呂ができて、そこに庶民が集まり交流の場となっていった。その後も銭湯は発展していき、江戸時代には銭湯全盛期と呼ばれるほど人気があった。しかしこの頃までの銭湯では現在のように男女別風呂の考えはなく混浴方式が一般的であり、現在の銭湯とは少し違った。しかし明治、大正時代になるにつれ衛生面などが見直され、現代の形の銭湯へと変わっていった。

1-3 研究対象の銭湯

本研究では下記表1の 6 事例を対象に選定し分析する。

1-4 対象とする銭湯要素

1-4-1 語彙の定義

 本研究においては銭湯要素について分析し研究を行う。銭湯要素という語彙は銭湯建築において、利用者が銭湯らしさを感じる部分を指す言葉として定義する。またこの語彙は建築規模の大きい空間や外形などから家具などの小さい規模の部分までの様々な要素までを含む幅の広い意味の言葉として定義する。
 また本研究では銭湯要素を包括的、個別的の 2 つのスケールに分けて分析をする。包括的スケールとは複数の銭湯要素から構成された大きな規模の銭湯要素のことを指す。一方で個別的スケールは小さい規模の要素であり、その他の銭湯要素を含まない単一の銭湯要素の事を指す。

1-4-2 対象とする銭湯要素

 銭湯を構成する要素は多数存在する。そしてその中には浴室や脱衣所などの建築的な規模の要素である包括的要素とそれら包括的要素を構成する浴槽や番台などの個別的要素があると考えた。そのため本研究では包括的、個別的スケールの 2 つのスケールの要素を抽出して分析を行う。
 包括的スケールは銭湯要素を建築空間の規模における銭湯の要素を抽出したものであり、内部空間においては浴室、脱衣所という要素を抽出した。また歴史のある銭湯ではその外観が特徴的な建物が多いので、外形という要素を抽出した。
 個別的スケールでは包括的スケールを構成する要素を中心に抽出した。浴室空間においては浴槽、高い天井、表面の装飾タイルを抽出した。また浴室、脱衣所から男女間の仕切り壁という要素を抽出した。また外形においては銭湯の外観的特徴である唐破風屋根などの屋根を、銭湯の名前がある看板を抽出した。また個別的スケールとして番台という銭湯特有の家具的要素を抽出した。各スケールにおいて抽出した要素を下図にまとめる。

第二章 包括的スケールについて

2-1 各要素に行われた操作、転用後の扱いについて

 各要素の再生前後でどのような操作、扱いに変化するかを次表にまとめる。

2-2 分析結果

 各要素で様々な操作がされていることがわかる。浴室と外形では既存維持している事例が多いことがわかるが、脱衣所では撤去または一部減築されていることが多いのがわかる。しかし比較的維持されている浴室と外形では維持されている理由が異なることがわかった。浴室では大空間を再解釈して転用後に活用している事例が多いが、外形に関しては維持、撤去の判断を地元住民との関わりという点から判断をしていることがわかった。一方で脱衣所は転用後に飲食スペースとして活用されている事例も多いが、2 つの区切られた空間では転用後のフレキシビリティが低いので一部減築や撤去される事例が多いと考えられる。

第三章 個別的スケールについて

3-1 各要素に行われた操作、転用後の扱いについて

 各要素の再生前後でどのような操作、扱いに変化するかを次表にまとめる。なお個別的スケールでは要素の再解釈が行われている事例が多いので、()内に再解釈を行っている事例数を記載する。

3-2 分析結果

 各要素に対する操作、転用後の扱いを分析して浴槽、高い天井、表面装飾、屋根の要素では多くの事例で既存維持され、仕切り壁、、番台では維持、撤去が同数または撤去が多いことがわかった。また浴槽と高い天井では維持される際に要素の再解釈がされて、転用後に新たな使い方で活用されている事例が多いことがわかった。一方で同じく維持されている屋根、表面装飾では前述の 2 要素とは異なり、再解釈はされていないことがわかった。比較的撤去される事例が多い男女風呂間の仕切り壁と番台はどちらも構造的に意味はなく、転用後のフレキシビリティを損なうことがあるので、撤去する判断がされる場合が多いと考えられる。また看板に関しては維持、撤去されている事例関係なく、かつての銭湯の外観を損ねないような配置が計画されていることがわかった。

終章 結論

4-1 総括

 本研究により建築的、身体的要素が転用後どのような扱われ方をするのかを明確にし、どの要素が転用後も活用されやすいのか、また再解釈されやすいのかを明確にすることができた。また本研究により維持、撤去がどのような判断で行われるかが明確になった。またその判断としてその他のコンバージョン手法と同様に既存要素が転用後の機能に適用できるかが重要ではあるが、銭湯のように本来の建築要素の特徴が強い場合では各要素を再解釈して本来とは異なる使い方を提案し、転用後の機能に適用させていくことが重要であるとわかった。

4-2 今後の展望

 本研究では銭湯要素の一部を抽出して分析を行ったので、今後は本研究で扱っていない要素も含めて既存要素の扱われ方を分析していく。また本研究では既存要素を研究するために建築的特徴の強い銭湯を対象として分析したので、今後の研究においては銭湯以外の用途建築を対象として分析を進めていき、既存要素に視点を当てたコンバージョン研究を一般化していく。

参考文献

今井健太郎:銭湯空間 角川書店 2020 年
塩谷歩波 :銭湯図解 中央公論新社 2019年

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