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Louis I Kahnのアンビルド作品における光の設計手法の研究 -3Dモデルによる光の復元-

修士2年の新谷です。前期の修士論文の成果を投稿します。

 

1.序論

1−1.研究の背景と目的

ルイス・I・カーンがどのような意図を持って自己の建築を設計しているかは、過去から今日に至るまで様々な研究がなされてきた。その多くは既存の建築からカーンの建築を分析しているものである。カーンの光の設計に関する既往の研究としては、河野ら1)や柳田ら2)による研究があるが、いずれも既存の建築を分析しているものである。カーンが設計した60年代中旬の建築は、光の採光方法を複数採用している物が多く、魅力的な空間を持っている物が多い。しかし、それらの多くは実現すること無く終わっている。そのため、既存のカーンの建築のみの研究ではカーンの設計の本質に近づくことができないと思われる。カーンのアンビルド作品の分析・3D化をすることで、よりカーンの設計意図を深く読み取ることができるのではないだろうか。

本論の目的は、資料・文献に基づき、設計のプロセスやカーンの思考を明らかにすることである。また、3Dにより可能な限り忠実に空間を再現し、光の現象を確認することによってカーンの光の設計意図を明らかにする事である。

2.単体の開口部及びその変遷

2−1.カーンの開口部のカテゴリー

カーンの作品を制作順に並べると、彼の採光法の発展と変遷を見ることができる。初期のカーンは、窓を普通の壁にあけられた単純な開口として扱っていた。そのため、壁面の全体を窓とした作品が多く、この傾向は建物用途に依らず、これといって特徴の見られないものが多々あった。しかしその後、カーンの採光は様々な形を経て発展していく。

採光分類

2−2.形状

カーンと他の近代建築を牽引していた建築家の最大の相違点は、カーンの遊びの要素ではないだろうか。とくに開口部において特徴的であったのが、円・三角形・正方形・正多角形などの幾何学形態の使用である。平面などには1951年のイェール大学アートギャラリーを始めとして様々な作品に用いられていたが、開口として初めて意識的に用いられたのは、ロバート・フライシャー邸(1959)における半円形の鍵穴窓で有ると思われる。これ以降、幾何学形態の使用はカーンの作品の至る所でみかけられ、そのダイナミックな使用はカーンの特徴となった。

ユダヤ・コミュニティ・センター(1954)ではあまり効果的に活用されていなかったスリットは、空間のなかにおいて光と影のコントラストをより深める物としてその後、様々な採光方式と組み合わせて効果的に用いられるようになった。

2−3.位置

フィラデルフィア精神医学病院(1944)以降、さまざまなハイサイドライト使用・発展がみられる。このハイサイドライトの活用は、その後のカーンの間接光の作り方に大きく影響を与え、光の照明装置の発明や光の塔などの採光法に大きく発展していった。

1950年のローマでの滞在中のパンテオンの空間体験を景気に、トップライトをユダヤ・コミュニティ・センター(1954)以降用いるようになる。1966年以降、計画対象が全体に大規模になり、意匠上トップライトの扱いが目立ってゆく。

カーンは初期の作品において、スリット窓やハイサイドライトをそれぞれ個々の開口として扱っていたが、トリビューン・レビュー新聞社ビル(1958)から、鍵穴窓というカーン独自の開口形式を用いるようになった。

2−4.窓のつくりこみ

カーンの初期から中期にかけて長い間使われていたのは、ブリーズ・ソレイユ(水平にのびる日よけ)である。これは初めてカーンが直接光をどのように遮るかを考え始めた採光法であり、様々なブリーズ・ソレイユを用いて設計していた。カーンの後期における作品では強い日差しの地域での設計をする機会が多かったこともあり、その後様々な光の制御を行うこととなる。光を遮るという点でこのブリーズ・ソレイユよりも構成によるダブルスキンや、光の塔などに傾倒してゆく。

ブリーズ・ソレイユと同じくカーンの作品の初期に見られる採光形式として、スライディングパネルがあげられる。カーンはフィラデルフィア精神医学病院の設計において、「様々な機能を素早く受け入れて、様相を変化させる部屋は、心理学的な利点を持っている。」と述べている。

その後、窓の装置化はキンベル美術館などに使われるリフレクターに発展してゆく。カーンのそれまでの作品では、屋根の形状やハイサイドライトを組み合わせて間接光をつくり出していた。しかし、キンベル美術館やウォルスフォン機械・輸送技術研究センターでは、「自然光の照明装置」を使うことで自然の光をより望み通りに制御する採光方法を採用した。

3.全体の構成に影響される採光とその変遷

カーンの平面構成は1960年頃から、大きな空間を取り囲む回廊、また、部屋群が取り囲むフォームから生み出された二重壁と太陽の塔という採光形式を生み出し、後期における様々な作品で使われている。

4.予想される結論・展望

3Dモデルで再現することにより、採光方法別•時間や季節ごとの光の移り変わりを観察することができる。そして、カーンの作り出す空間がどのように光の重層をつくり出すかを確認し、その上で設計意図•方法の再解釈を行うことができると思われる。

また、この分析方法によって、カーンのアンビルドに限らず他のアンビルド作品の復元研究にも適応できる可能性があると思われる。

 

前期では、主にどの作品を扱うかを決める為の分類作業を行ってきました。今後、これらをさらにブラッシュアップしつつ、作品を掘り下げていければと思います。

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