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サステナブル建築の外皮の設計手法―デザインと技術の総合性に着目して―

0-1 背景と目的
 本研究では、建物の外皮部分を研究対象とし、設計者による言説と物理的な構成の両側面を検討することで、サステナブル建築の外皮に求められる性能とその設計手法の関係性、そして環境時代に適応した建築デザインの在り方を明らかにすることを目的とする。
0-2 対象事例と研究方法
 本研究では、「新建築」「近代建築」「a+u」等の建築雑誌に取り上げられた国内外のサステナブル建築を研究対象とする(戸建住宅を除く)。そのうち、対象建築をサステナブルなものにしている手法・技術が外皮部分に顕著に表れているものを分析対象とし、2000年1月から2009年12月までの10年間に竣工された計85作品(国内:60作品、海外25作品)について、解説文から外皮の形状や設計の意図を、断面詳細図を中心とした図面(補助的に写真)から断面構成を抽出する。

 

1-2 サステナブル建築と外皮デザインの変遷
 サステナビリティに関する認識については、1970年代からの30年余りでおおよその枠組みが成立したといえる。
その源流をたどるとバックミンスター・フラー、そして日本のサステナブル建築の先駆けとなった吉村順三に行き着く.フラーの思想は1980年代以降になるとハイテック建築へと継承され、さらにその展開型であるエコテック建築やサステナブル建築へと受け継がれていった。吉村順三のNCRビルディング(1962)は、ダブルスキンを日本で初めて採用した建建築物である。建物の運用エネルギーを低減しつつ、外壁の熱負荷を抑え、室内環境の快適性を向上させることのできる手法の実現をきっかけに、建物の外皮は動物の皮膚のような役割を担うようになった。その後、高性能ガラスの開発によるガラス壁の流行や、エアーフロー・ウィンドウの普及、シェイディング等、さまざまな環境調整手法を組み合わせることによって、境界面に付随し、かつ建物内外の環境の制御あるいはデザインに寄与する手法が積極的に採用されるようになった。

 

2. 外皮の設計意図と形態
2-1 言説による分析
 外皮の設計意図が明確に読み取れる箇所を抽出、そのキーワードを【意匠的意図】に着目したものか、建築を実体化する際の諸問題を改善するための【技術的意図】に着目したものかに分類した。その関連性や差異により、12のの主題にまとめることができた。

                         

 

2-2 外皮の設計意図と主題の分類
 意匠・技術の両側面にまたがる以下の3つの観点をサステナブル建築の外皮における設計意図として捉えることができる。
1)環境との同調・共生
 周辺環境の状況や要素を設計対象として積極的に捉え、外皮を媒介として建物を同調・融和させたもの。
2)サステナビリティの具現化
 外皮における手法や要素を手段として、サステナビリティに取り組む姿勢を具現化・象徴化したもの。
3)外皮の社会性・経済性
 環境要素ではなく、建物固有あるいは生産体系固有の方法論によって外皮が設計されたもの。
3. 外皮の断面構成
3-1 外皮の分析方法
 サステナブル建築の外皮デザインの特性と対応する部位での実現手法の関係を検討するため、外皮の断面構成を断面詳細図を中心とした図面と、補助的に写真を用いて、以下の3点を分類した。

(1)レイヤー構成
 内部と外部の境界面(0レイヤー)を基準とし、それより外側の部位(外レイヤー)、内側の部位(内レイヤー)という3つのレイヤーの層構成として捉え、そこに見られる設計意図の付与に着目した。(例)0:合わせガラス、外:付加ありのD2タイプ
2)構成要素
 (例)外:ルーバー、緑化、庇、ブラインド、etc
3)主素材
 (例)ガラス、コンクリート、アルミニウム、etc

 

3-2 断面構成の分析
 対象事例の断面構成を分類した結果、以下のレイヤーパターンに分けをし、具体例をあげながら国内外の断面構成について分析をした(図5および図6)。

複数のレイヤーの外皮では、より外側の層が特化される。よって、外皮を構成するレイヤーに設計意図が集中するか否かは、それぞれの相対的な前後関係に依存しているといえる。主素材の組合せにも特徴が見られる。

 

 

 

 

 

 

4. 総合的な考察
4-1 外皮の設計意図と断面構成の関係
 テーマごとにレイヤー構成や主素材、実現手法の分析を行い、特に関連の深いものや統合性の有無を考察した。それぞれの意味内容をより具体的な外皮での実現手法や特徴に分類することで、サステナブル建築の外皮を7つのパターンに分類することができた。(図7)

4-2 現代サステナブル建築と外皮
 外皮の外レイヤーはより特化される傾向にあり、その構成要素はデザインと技術の両側面から多義的に意味づけられる。外レイヤーに構成要素を設ける場合は、単一の部位を多義的に位置づける傾向にある。デザインか技術かのどちらか一方の視点のみでは構想しがたい、という設計者の立場が、建築の外観表現に大きく関わり、かつ内部と外部の境界を形成するといった建築の最も根源的な機能の1つである外皮設計において、如実に表れるということを示していると言える。
5. 総括と展望
 本研究で見られたサステナブル建築の外皮の設計手法は、分析対象の資料範囲ではあるが、内部と外部の境界面を形成するといった建築の最も根源的な機能の1つにおける、設計者の意匠と技術に関する思考と環境時代に対する認識の一端を明らかにするものと言えるだろう。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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