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アーキファニチャを用いた新たな団地再生手法の研究

修士2年の建入です。修士研究の途中経過を投稿いたします。

1.研究の背景・問題意識

近年の住宅は、在宅ワークやSOHO型住宅、多拠点居住など、ライフスタイルの変化に合わせて、住空間も多様に変化しています。

その中で団地は、大量供給のために標準化された設計により、同型のプランの集積によって構成されており、多様性があるとは言えず、高度経済成長の負の遺産として空き家が増加しています。

一方で、広い隣棟間隔や周辺施設の豊かさなどから団地を再評価しようという流れがあり多くあるストックを解消しようと、独立行政法人都市再生機構(以下UR)は様々な取り組みを行なっています。

団地の周囲に菜園を計画するものや、高齢者のためにEVを設置するなどバリアフリー化するなど様々な事例がありますが、ここでは室内空間の改修に着目します。

■室内空間の改修について

団地再生における室内空間の改修として用いられている手法は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、「インフィル改修型」です。これは、間仕切り壁や、内装、設備などの団地のインフィル部分を改修する一般的な手法です。

2つ目はMUJIxUR団地リノベーションプロジェクトに見られる「インフィル改修+置家具型」です。これは上記の「インフィル改修型」に加えて、コラボ企業の置き家具を付加した手法として位置つけられます。

■問題点

「インフィル改修+置家具型」の問題点としては、以下の4点があげられます。

  1. 建築と家具を分離させた考え方であり、固定物(建築)・可動物(家具)の線引きによって、居住者が選択できる範囲空間の自由度が決まっている。
  2. MUJI家具は付いてくるものではなく、居住者が購入しなければならない。
  3. 団地のスケールと、工業化されたメーカーの家具では、寸法的な齟齬がある。
  4. 3DK→1LDK等に改修している例が多いが、以前として固定的な間取りのままである。

2.研究の目的

以上の問題点を解決することができ、かつそれらが発展していくような新たな改修手法として、アーキファニチャを用いた新たな団地再生手法を確立することを、本研究の目的として定めました。

アーキファニチャとは一般的に、

建築でも家具でもないもの、または、建築でもあり家具でもあるものをアーキファニチャーという。

新建築2006年5月号 月評

と言われ、半動産的性質を持つ工作物という認識があります。

このアーキファニチャ(以下AF)を団地再生に用いると起こる効果としては、大きく分けて以下の4つがあると考えました。

1.「資材の共有・シェアリングエコノミー」                                        AFは、団地が所有し、居住者にリースするものとします。居住者の家具購入の費用は少なく、居住者同士の資材の共有により、シェアリングエコノミーが生まれます。

2.改修デザインの民主化                                         AFの作り方がオープンソース化されることにより、団地スケルトンの範囲内であれば居住者が自由に間取りをデザインできます。

3.団地にフィットする寸法計画                                      AFは、団地の寸法体系に合わせて設計されます。そのため、既製品の家具とは違い団地にフィットした寸法で、寸法の齟齬は起きません。

4.住空間の拡張・多様化                                         間取りがなくなり、AFの組み合わせ次第で「部屋」にも「オフィス」にも「食堂」にもなり、これまで画一的であった団地の住空間が、多様化していくことが期待できます。

以下、分析編と設計編にわけ、論文を進めていきます。

3.分析編 目的と対象・方法

■分析編の目的は、以下の3点とします。

  1. 団地のスケルトン(51C型など)を分類分けをし、団地特有の寸法体系や構法的な知見を得る。
  2. MUJIxUR団地リノベーションプロジェクトに代表される「インフィル改修+置家具型」の特徴と問題点を明らかにする。
  3. 問題点を踏まえ、アーキファニチャを団地リノベーションへ適用する方法の検討を行う。

■分析の方法は、以下3点とします。

  1. MUJIxUR団地リノベーションPJTを改修前・改修後・家具付加後の3つの図面を比較手法やそれに伴う効果を分析
  2. アーキファニチャをリノベーション手法としてどのように扱うのか、手法の検討
  3. 公団の標準設計に関する文献を探り、寸法体系に関する情報の収集

4.分析

改修前、改修後、家具付加後の3つに図面を分け分析を行いました。

また、分析の中で、建築と家具が分離していることの問題点と特徴を洗い出すこと、団地のスケルトンや構法的な知見を得ることを主な目的として、現在分析を進めています。

5.設計編

設計編では、分析編で得た団地の寸法体系に関する知見を生かしたAFのモジュラーコーデネーションの設計を行います。

また、AFをオープンソース化するシステムの構築を、IKEA plannerなど参考に行なっていく予定です。

(IKEA PLANNER HPより)

6.予想される結論

以上の研究により、予想される結論は以下の通りです。

  1. AFのオープンソース化により、スケルトンの範囲内であれば居住者が自由に間取りを作ることができる。(改修デザインの民主化)
  2. 間取りという概念がなくなり、AFの組み合わせ次第で部屋にもオフィスにも食堂にも(住空間の拡張/多様化)
  3. 団地全体がAFを所有し、居住者にリース、住民間のAF資材の共有(シェアリングエコノミー)

これらにより、これまでの団地再生における問題点を解決する新たな改修手法「アーキファニチャ型」を確立します。

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