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Louis I Kahnのアンビルド作品における光の設計手法の研究 -3Dモデルによる光の復元-

修士2年の新谷です。

前回の投稿から、夏合宿までの成果を投稿します。

 

前回、カーンの開口部のカテゴリーに関して述べた。カーンの作品(アンビルドを含む)の中でも採光が特徴的であるものを表にしてまとめた。

カーン光の年表0811

この表から、カーンのアンビルドにおいて重要な物(カーンの採光において節目となったものや建てられた物に影響を与えたもの)であると思われる作品を選定し、今後の研究対象とすることにした。

1.合衆国領事館および公邸

この作品は、ガラス面の手前に自立する日よけの壁と、日よけの屋根が複合して使用されている。アンゴラでの強い日差しを遮るために、当時カーンはこの日よけ屋根が最高の解決方法だとしていたが、この後強い日差しで設計する機会が多くあったが、この日よけ屋根が再び用いられることはなかった。初期のカーンに多用されていた直接日差しを遮る光の制御方法と、二重壁が組み合わせて使用されていることから、この作品はカーンにとって初期と後期の間をつなぐ転機となった作品であると思われる。

2.ソーク生物学研究所 集会棟

ソーク生物学研究所の集会棟にも、同時期に設計された合衆国領事館および公邸と同様に二重壁が採用されている。こちらには、デイ・ルームの納められた独立した全体ガラスの立体に、殻のように周囲を壁が覆っており、合衆国領事館よりも効果的に使用されるようになっている。ここで使用されている鍵穴窓は美しい影模様を内側に映し出す。このソーク生物学研究所と合衆国領事館は、その後設計されるインド経営大学やダッカの国会議事堂に大きく影響を及ぼす物であることがわかる。

3.ミクヴェ・イスラエル•シナゴーグ

光の棟が最初に用いられたのはブリンモア女子大寄宿舎であるが、ほぼ同時に光の塔を採用したのがミカヴェ・イスラエル•シナゴーグであり、光の塔がより密度の高いエスキースによってつくられた作品である。10回の設計変更が行われ、初期から光の塔が採用されてからは光の塔の案は突き通されたことから、カーンの強い意思が感じられる。中央の大空間に光の塔から光を入れる構成は、後のフーバ・シナゴーグでより発展させている。

3.フーバ・シナゴーグ

カーンの晩年に設計した作品であり、それゆえそれまでカーンが用いた様々な光の操作が見られる。また、巨大な屋根に開けられた丸い開口は、それまでのカーンの設計した作品には見られない物であり、カーンの新しい可能性を示唆するものであると思われる。この作品は何度かの設計案を変更しているが、大きな計画部分でのコンセプトは変わっていないが、それぞれの案で個性的なデザインを行っている。それゆえ、アンビルド作品では最もカーンの傑作になる可能性の高い作品であったことが伺える。また、丸い開口の他にも、二重壁・スリット・トップライトが同じ空間に光がそそがれるように使用されており、大空間にこれらの光の効果が重なっている。

 

今後、これらの作品の3D化を行い、光の現象を確認しつつ他の作品との関係性を考察する予定です。

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